10-3
美少女を隣に侍らせた状態で学食に到着。
案の定、周囲の注目を集めてしまい今度は自分のほうがいたたまれない気持ちになる。
我慢して列へ並び、ご飯少なめの牛すじ定食を頼む。
金髪のお嬢様は鮭のクリームパスタとサラダをご注文されたご様子、あらお洒落。
トレーを持ち、お気に入りの席へお姫様をご招待....したかったがなんと先客がいて、これには私もびっくり仰天。
いつもは誰も座らないというのになぜあそこをピンポイントで、残念だが右側ではなく正面の窓際席に座ろう。
「愛星さん、よかったらパスタと牛すじを少し交換しない?」
田町さんからご要望をいただいたので、牛すじを渡して代わりにパスタをお皿にもらう。
よーし、それでは手を合わせていただきます。
「愛星さんは手を合わせながらいただきますを言う派なんだ、珍しい。私は声に出すのは恥ずかしいから、手を合わせるだけだけど」
そう言われ、過去の記憶を探ると小学校はともかく中学校のときは両方している人はあまり見なかったような。
やだ、私ったら高校生なのに子供すぎ?
「礼儀正しいというか、品があってお嬢様ぽい感じがするわ。いいと思う」
くっ...お嬢様みたいな人にお嬢様とか品があるとかそういうことを言われるとは!
もう少し、砕けた感じのほうがいいのかもしれないけど自分には少しばかり難しい。
礼儀とかもそうだけど、昔から変なこだわりがあったなあ。
例えばお箸を置く向きが持ち手が右側じゃないとダメだとか、使うタオルの順番は古いものから使うとか、玄関にある靴がきっちり揃ってないと気持ち悪いとか、潔癖症に近いものはあった。
両親からも「そこまでこだわらなくてもいいんじゃない」と言われた経験があるが、どうしても気になるものは気になる。
そんなことより牛すじ!せっかく作ってもらったのに冷めてしまってはもったいない。
箸で1つ摘み、口の中へ運ぶ。
牛すじなのだから柔らかいのは当然だと思うが、ここのはまた少し違った。
極上の柔らかさで口に入れると噛まずとも、勝手に溶けてなくなる。
それとワインを入れて煮込んだのか良い香りがする、確かワインでお肉を煮込むのは身が柔らかくなる効果があるから、お肉料理にはお酒類が必須かも。
お次に田町さんがくれたパスタは、麺が家庭でよく使われるものより太めになっていて、甘くてモチモチ。
鮭は身がホロホロで、クリームソースはレモンの酸味がほんのりするおかげで、クリームソース特有のしつこさや脂っこさはない。
やはり、ここの学食は何を食べても美味しい。
あっという間に食べ切ってしまい、最後にお味噌汁を飲んでごちそうさまでした。
「牛すじなんて久しぶりに食べたわ。昔食べたのとは全然違ってかなり美味しかった」
どうやらお気に召されたようで、よかったです。
田町さんの年相応の微笑みにほっこりする。
ムスッとしたお顔より今の柔らかいお顔のほうがお美しいですわ、お嬢様。
「パスタも美味しかったですね。麺が太めなのがちょっと新鮮でしたし、クリームもしつこくなくてよかったです」
「そうね、ご飯につき合ってくれてありがとう。それじゃあ、食事会もお開きにしよっか」
その言葉を皮切りに2人揃ってトレーを返却しに行き、外に出たら田町さんとはそこで別れた。
私はその場に残り、学食の外のスペースで夜風にあたりながら夜景を見つめる。
やっぱりこの風景は綺麗だ、私の住んでいた街も負けずとも劣らない綺麗さだったけども、ここまで煌びやかではなかったし、それに潮の香りもしなかった。
もし、未知の存在と本格的に戦うことになったらこの景色は無くなってしまうのだろうか...。
いや、亡くさないためにも全力で守らないと。
寮に戻ってトレーニングをしたら、お風呂に入ろうっと。
あ、そういえば田町さんにどこから狙撃したか聞くのを忘れていた。
まあ、射撃部の部員になってくれたから次に会ったら聞けばいいか。
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