10-2

HRの時間になり、明日から休みに入るのでハメを外さないようにと注意を受けて本日は解散。



ふぅ....やっと休日をもらえるから楽しみ。

とは言っても、入院していた期間は毎日休みのようなものだったけど。

まぁ入院中は長らく意識がなかったし、起きたらいつの間にか5月を過ぎているわで、休んだ気が全くしないのだ。



それはさておき。

さぁさぁ、今日も夕食までの時間を射撃訓練に明け暮れよう、そうしよう。



教室を出てグラウンドの整備室へ向かい、本日試射する銃を探す。

今回はライトマシンガンとスナイパーライフルを撃つ予定だ。



ガンラックを見ているとM4に近い形をしたものがあり、気になったのでそれを持ち出した。

前回は気づかなかったがガンラックの下に名札があって、そこにはARES-16、FD338と名称が書かれている。



最近になって思うが銃の名称は暗号みたいで少々覚えにくい。

M4やMP5のような短いものはいいが今持っている銃はちょっとだけ名前が長いし、銃自体の形が似ているものも多いから混乱する。

もっと統一感のある製品名をつけて欲しい。



愚痴はおいておくとして、持って来た銃はレーンの机に一旦預けて弾薬庫に行き、対応している弾を探してそれをマガジンに詰めていく。

マガジンに弾をつめるこの時間は意外と好きなのだ、カチャカチャと音が出るのが心地良い。

手が疲れるのは全然、心地良くないけど。



案外、精神安定に使えそうだと思ったが、よくよく考えるとこれは人殺し用の道具だということを忘れていた。

忘れていたというよりは....慣れてしまったのだろうか。



銃は人を傷つけるための武器として扱わなければ良い物だと思う、的を狙って射撃をしているときは素直に楽しいと感じているし。

正しい使いかたをするのであれば、けっして悪いものではない。

でも元々武器として作られたものだから、やはり武器として扱うのが本来は正しい…のかな。



ならば自分の思う"銃"の使いかたを間違えてはいないだろうか。

自ら相手を害するために使うのではなく、守るもののために力を行使するという。



実戦で使ったのは2回、どちらも自身のためではなく人を守るためにやむなく発砲した。

今後もちゃんとそれを守れるのだろうか...。



この高校に来てからは自衛の方法を色々学んでいるが、歯に衣着せぬ言いかたをすれば殺しの方法を学んでいるのとなんら変わりない。

だって守るための方法として最も簡単で、手っ取り早いのは殺してしまうことだから——。

不殺主義ではないが、できれば後続に私のような人を生み出したくはない。



今悩んでも答えの出ない問題に気を取られて、気がつくと弾薬庫に30分も立ち尽くしていた。

弾のつめこみを急いで終わらせてマガジンを持ち、レーンへと戻る。

気分を変えるのにまずはライトマシンガンを先に撃とう、スナイパーライフルは後で。



ハンドガードについているバイポッドを広げて机に設置っと...レッツ、シューティングッ!

数発撃った感想は馴染みのあるM4に近い射撃の感触で新鮮味が薄い、やはり形が似ていると似通ったものになりやすいのかな?

後はマガジンの形がカイゼル髭だったか、その形に似ていてちょっと面白いと思った。



マガジンにどれくらいの弾数が入るのか分からなかったから、とりあえず30発入れたけどまだまだ入りそうな勢いだったのを見るに、結構な容量を有しているのだろう。

60mの的を撃って当たったのは20発、半分以上は当たっているから良いのではないだろうか。



次はスナイパーライフルに持ち替えて、今回は机に置かず立って撃ってみようと構えてみたが、重い銃を支えるために力んでいるせいで照準のブレが酷い。

まともに狙えなかったので諦めて机にバイポッド立てて、椅子に座って狙撃。



どうやらセミオートの銃だったらしく、初段を撃った後は自動で次弾が装填された。

100mの的に10発中5発命中で、もう少し頑張りたい結果だ。



言い訳をさせてもらうと、さっきの立射に挑んだ時に腕が疲れて引き金を引く際にぷるぷるしてブレたのです。

非力なのが悲しい、これから休日は体力と銃の保持に苦労しない筋力作りをしよう、もちろん部活でも。



さて、満足したし今日はこれくらいにして片付けを.....。



「あなたが愛星 愛璃さんよね?」



急にしらない声に名前を呼ばれて、肩がビクッと跳ねる。

素早く声のしたほうに振り向くと、スタイルの良い金髪ツインテールの碧眼少女がレーンの仕切りにもたれかかっている。



昨日、グラウンドで見かけた金髪の人はもしかしてこの人だったのかな。

しかし.....すごく可愛い、アニメとかゲーム画面の向こうからやってきましたと言われれば信じるレベル。



「あの...そう、まじまじと顔を見られるといたたまれない気持ちになるのだけど」



はっ....見とれている場合ではない、返事をしないと。



「すみません、可愛かったものでつい。ええっと...どちら様でしょうか?」



「かか、かっ、かわ....!?初対面の人にいきなり言うことじゃないと思うんだけど....。んんっ....そ、そうだ、名前をまだ言ってなかった。私は2組の紫陽、田町 紫陽(ちまち しはる)、貴女を助けた者よ。それで貴女が愛星さんで合ってるのよね?」



なぜか動揺していらっしゃる、なにか言ってはいけないことでも言ってしまっただろうか。

でも可愛いと思ったことは本当で、それを言わずにはいられなかった。

なので後悔と反省は一切しておりません!



それは、ひとまずおいといて....こっ、こんな可憐で麗しい少女が私を助けてくれただって!?

はぁー、世の中生きているとこんなこともあるものなんだなぁ。

だけど、これで恩人を探す手間が省けたのは実に喜ばしいことだ。



「はい、私が愛星で合ってます」



「そう」



あれ?さっきとイメージが違うような....。

ちょっと冷たい系の人なのかな、それとも金髪ツインテールといえば定番のツンデレ?

はっ、もしやクーデレのほうだったり?

と、とりあえずお礼は伝えておかないと。



「ありがとうございました。助けていただいていなかったら、今頃お空の上にいるところでした」



「たまたま戦闘になってることに気づいて助けただけだから、そんなに畏まらないで。ところで、射撃部ができたって聞いてここに来たのだけど....愛星さんは部員なの?」



「はい、部員兼部長です」



「部員兼部長ということは、今の部員数は1人?」



「そうです、昨日設立したばかりなので」



「ふ〜ん....じゃあ、私も入部していい?」



おやおや、射撃部なんて物騒なところに人は来ないと思っていたのに。

人が増えるのは良いことだけど、増えたら1人の時間が減ってしまう。

でも個人の事情で入部を拒否することはできない、つまり選択肢は1つ...受け入れるしかないのだ。



「大丈夫ですよ。入部申請書は顧問である3組担任の渡先生に提出してください」



「わかった、ありがとう」



よ〜し、これであの人の用事は終わったはずだから帰ってくれるだろう。

お掃除、お掃除っと〜♪



「よかったら、この後一緒に食事しない?」



お母様、私まだお家に帰れそうにありませんわ....(泣)。

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