10-1

2036年 5月 16日 金曜日 05時48分



空腹を知らす腹鳴が目覚まし代わりとなって目が覚めた。

手探りで枕元のスマホを引き寄せ画面を見ると06時前。

ベッドからのそのそ降りて、支度をしたら学食へのんびり歩いて行く。



今日の朝食はホットケーキにしようとすでに決めていたので、学食についたらすぐ注文。

受け取ったトレーに載っているホットケーキから、温かくていい匂いが溢れ出ている。



席につき、手を合わせて感謝を捧げたらホットケーキを一口サイズに切り分けて口の中へ。

う〜ん....ふかふか&ボリューミー。

ほんのり生地からメープルの味がするのが好き。

それとバニラエッセンスの香りで安らぐ。



ついでにルイボスティーを頼んで飲んでみたけど、感想としては鼻にツーンと来る独特な風味がするから、きっとハーブティーの仲間なのかな?。

これは人によって好き嫌いが出るタイプ、自分は結構気に入ったのでまた頼もう。



朝食を食べ終わり、机にだらんと突っ伏しながら街を眺める。

本日も相も変わらず...代わり映えのない生活をしているなぁ。



部活を始めたのはいいがそれ以外はてんでダメ。

もっと色んなことに挑戦したほうがいいと思ってはいるけど、気力も出ないし、挑戦したいものも全く思いつかない。

むぅ、私のおつむがこの程度だったとは...。

一旦このことは忘れよう...うん、それがいい。



ネガティブな思考はほどほどにして、スマホの時計を見ると時間は06時50分。

そろそろ教室に向かうべく、席を立ってトレーを返却しに行った。



本校舎の屋上から1階に下り、渡り廊下を進み副校舎へ。

3組の教室の鍵を開けてHRまでタブレットで暇つぶし。

HRの時間になると渡先生が来て連絡事項を話し、休みを挟んで授業開始。



3限目の社会の時間に戦争についての話があった。

根本的なこと、どうして戦争が起きるのか。

それには歴史を見ると5つの原因があるそうで、民族・宗教・資源・政治・領土がそれにあたる。



資源についてはまだわからなくもない、人であろうと動物であろうと、生きていく上でどうしても必要なものだから。

だけど、ないからと言って他者から奪えば良いというものでもない。

そうならないよう、政府がしっかり国の方針を取り持つことが大切と。



民族や宗教については、信仰する対象はまだしも人種などは生まれ持ったもので選べないのだから、強要してしまっては魅力的に見えなくなる。

違うからこそお互いを良いものだと思える、違いにこそ価値を見出せるように自分もならなければ。



そして戦争がおきると難民や経済の悪化による、国の治安崩壊などが起きるとも教えられた。

正直なところ、私の主観では戦争をする利点が全く無いと感じる。



短期的に見れば利益があるように見えるが、長期的に見ると戦争で消費した資源や人材の損失は痛い。

特に人材については技術の発展と後続にそれを伝え、更に種を残すという重要な役目がある。



自分のような人はともかく、優秀な人が居なくなったら技術の衰退が始まるのは間違いない。

さらに戦争で土地を取ったならば維持と発展にお金が取られるうえに、治安の安定化もはからなければならなくて大変だ。



そう思うと未知の存在はどんな事情を持って襲撃してきたのかが気になるが……。

仮に教えられてもそちら側の人間ではない私はきっと、理解は示せても肯定はできないだろう。



午前の分の授業が終わり、お昼休み。

学食でナポリタンを頼み、それを受け取って席に着く。

ケチャップの甘酸っぱい香りで、すでに減っているお腹が背中へくっつきそうだ。

では、いただきます。



酸味がほどほどに残っており、おかげで唾液が出てきて食欲をさらにそそられる。

ピーマンと玉ねぎも素材の食感が残っていて素晴らしい。ナポリタンってこんなに美味しい物だったっけ?

家庭料理や喫茶店の定番メニュー的な味のイメージだったけど、いつも認識を変えられてばかり。



数分もせずスルスルと胃の中におさめてしまった、パスタはやっぱり食べやすくて美味しい料理だ。

まぁ…パスタに限らず麺類は基本、美味しくて食べやすい気もするけど。

次はうどんやそばなども頼んでみよう。



久しぶりのナポリタンを堪能できて、嬉しいお昼休みだった。



午後の6限目は昨日と同じく体術訓練が行われているが、正確には訓練ではなく見学のようなもので各国の様々な体術に精通している人を呼び、実際に見せてもらう授業形式に。



ロシアのシステマやイスラエルのクラヴ・マガ、日本のゼロレンジコンバットなど、今回も殺傷は除く護身技のみを教えてもらった。

どこの国の体術もそうだが素人では気づいたころには地面とこんにちは状態で、技を知らなければ防ぐなど到底できない。

実際に技を受けた日には、もれなくトラウマになりそうだ。



講師の解説によれば人間の身体は緊張している場所が弱点になるらしく、格闘術ではその弱点を利用して無駄なく相手を無力化するらしい。

ただ熟練者でないと緊張している場所を見分けるのが難しく、簡単には習得できないとも言っていた。



なので生徒には誰にでもできる、相手の動きを借りるものや関節の動きを阻害して無力化する技を教えているのだと。

これは習熟が早いのと力を必要としないのが利点らしい。



だけど渡先生から現代では近場で戦うことはほぼない、という話を聞かされたことをふまえれば、やはり生徒達が使用する場面が訪れることはないかも。

さらに自身の実体験で語るなら、先日の街での銃撃戦では距離をおいて戦闘をしたし、3ヶ月前だって車と林の間にはそれなりに距離があった。



もちろん建物に入ったら話は変わるけれども、移動の際なら他の隊員が側にいる状態で動くのが普通だろうし。

仮に近接戦闘になったとしても銃を捨てて、素手で挑む余裕があるならば撃ったほうが遥かに早いうえに安全のはず。

性別や肉体の鍛錬の度合いに影響されず、誰でも扱えるという銃の利点を最大限に活用すべきだ。



実際に訓練する時間は短かったので病み上がりの体に負担が少なくて嬉しい。

そして体術訓練の時間も過ぎ去って、今日の授業は終わり。


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