9-3
1日の授業が終わり、教室に戻ってHRの時間。
「皆、お疲れ様。今日は訓練が2つあったから疲れたでしょうけどよく頑張ったわ。明日も射撃訓練と体術訓練があるから覚悟しておいてね♪」
えーとクラスの生徒らから文句の声が出たが、体術に対しては同感だ。
運動は苦手で力も全然ないし、直近2回の入院のせいで筋力がかなり落ちているから今の状態ではしんどい。
ちゃんとプランクとかトレーニングをしないとダメかも。
HRが終わったので、朝の疑問を渡先生に聞いてみるとしよう。
「先生。少し気になったことがあるのですが、お時間よろしいでしょうか」
「ええ、大丈夫よ。どうしたのかしら?」
「昨日の夜に、渡先生が屋上の柵の傷に気がついて報告するとおっしゃっていましたよね」
「ええ。あの後、事務員さんに塗装をしてもらうようお願いしたわ」
「私が学校側から聞こえた銃声に助けられた、というお話はさせていただいたと思うのですが、もしかすると柵の傷は狙撃した際についたものではないかと思って」
「ふーん。あの場所は見通しが良かったし、可能性としてはありえるけど.......もしそうなら目撃情報があるんじゃない?」
言われて初めて気がついた、隣で射撃をしたならば誰かが見ていてもおかしくない。
もっと言えばカウンターの人は基本在中しているから、いたなら見ているはず。
「銃声がしたってことはサプレッサーもつけてない。後は教室からでも狙えるし、窓際を調べたら傷がついているかもしれないわね。時間があるときに私も調べてみるわ」
先生に助言をもらったおかげで、助けてくれた人を見つけることができるかも。
「それと話は変わるのですが、部活ってあれからどうなっていますか」
「部活については、クラス内では愛星さんだけ入部してない状態ね。どこか気に入った所があるの?」
えっ、嘘だ....き、帰宅部とかいないの!?
この状況下で、私だけが帰宅部を選ぶのは難しそう。
皆やる気があるなぁ....凄いなぁ.....。
「そ、そうですか。それについてはちょっと考えがあって....あ、それは一旦置いとくとして整備部には誰か入部しましたか」
すると意外なことにまだ入っていないと返事がきた、やはり銃の整備は大変だし目が疲れるから皆やりたくないのだろうか。
「どうして整備部の入部状況を聞いたの?」
「話が戻ってしまうのですが、仮に狙撃した際に柵に傷をつけたなら銃に柵の塗料がついているのではないかと思って」
「なるほどね〜。愛星さんってもしかして頭いいのかしら....?」
「先生、それはモラハラですか」
「冗談よ。それで、さっき言った考えって?」
「あ、はい...えっと、部活を作りたくて。射撃部とかどうかなと」
そう、暇つぶしにはもってこいの部活!
無心で的を撃ち続けるだけであら不思議もう帰宅時間!なんて悲しい部活なのだぁ....。
本来理想の部活といえば、柔和で和気あいあいでアットホームな雰囲気の中、仲のいい子と切磋琢磨をするみたいな感じ。
そんな楽しそうな現実は皆無だけどね!
「へぇ...とってもいいアイディアよ!私から校長先生にお願いしてみるわ」
「え、えっ....あ、あのあの...考えであって決めているわけでは....」
「射撃部ということは、競技射撃とか色々楽しそうなことができそうね。私まだ顧問決まってないし、なろうかしら?」
なぜそんなに乗り気なのか私には到底理解できなかった、ただの時間潰しにいいと思ってただけなのに!
まぁ、射撃自体は嫌いじゃないけども....。
でもこれでは、理想の射撃部とは乖離したものができてしまう。
うん、諦めよう!ときには流れに乗る諦めも必要...必要...なのかなぁ?
「じゃあ早速、職員室に行って聞いてみるとしましょう。愛星さん、今日も射撃訓練するわよね?」
「先生のお時間が空いていたら、したいです」
渡先生は会議と相談が済んだら向かうから、いつも通り待っていてと言って教室を出て行った。
すぐには射撃場へと向かわず、先ほど話題に上がった内容を調べるため教室の窓へ寄って外を見る。
今いる副校舎から大通りを見た限り、ここからは木が邪魔になっていて狙撃するのは厳しそうだ。
窓のサッシ部分にも傷はなかったし、ハズレ。
なので本校舎のほうへ赴いたが、1階は狙撃に適した場所ではなかった。
では2階、大通りが見える教室は確か.....化学室と調理室・茶道部だったはず。
化学室は薬品などがあるためか鍵がかかっていた、この時間帯に鍵がかかっているなら休日も入れない可能性が高い、ここは候補から除外かな。
調理室も化学室と同様に鍵がかかっていたので除外。
茶道部は部員の人にお願いをして確認してもらったが、傷はなかった。
次は3階、図書室に向かい窓の外を見ると視界良好でばっちり大通りが狙える。
窓枠に傷がないかしっかり確認するも、見当たらず。
手芸部の部屋にも行ってみたが、そちらも傷はなかった。
最後は音楽室、ここは防音対策がされてるけど射撃をするなら窓を開けるし、あっても効果はフルに発揮できなさそう。
窓に寄って周りをじっと眺めると傷が見つかった。
心なしか、学食の柵にあった傷跡と似ているような気がする。
まさか似た様な傷をつけて、射撃位置を特定されないようにした、なんてフィクションみたいなことはないと思うけど....。
射撃をした人物は音から考えて1人だと決めつけていたが、実は2人いたとか....?
謎が解けるどころか、新たに謎が増えてしまうなんて。
とりあえず、ひと通り見たので調査を切り上げて射撃場へ向かうべく音楽室を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます