9-1
2036年 5月15日 木曜日 05時37分
「う、うぅ......おはようございます...」
起き上がり、寝ぼけ眼の状態で自分しかいない部屋に挨拶をする。
背伸びをすると肩とお腹の痛みが昨日よりは幾分かましになったと思う、あるいは慣れてきたのかも。
ベッドから降りて洗面所で顔を洗い髪を整える。
それが終わったらパジャマから制服に着替えてタブレットを鞄に入れ、時計を確認すると寮のドアは開放されている時間。
静かに寮の部屋を出て、朝食を摂りに学食へ向かった。
今日の朝食は...チキンサラダとほうれん草とじゃことツナをマヨネーズで和えたものを載せ、上にチーズを散りばめて焼いたトースト。
メニューにあった名前が長かったから選んでみた。
トレーを貰い、席についてガブリと頬張る。
ぐぬぬ...ここの学食はレベルが高過ぎる、なぜただのトーストでここまで美味しく作れるのか。
チキンサラダの身はホロホロで柔らかいから食べるのが楽。
野菜で包んで食べたら、これだけでも主食になりうるのでは?
いつかこの美味しさの謎を追求して、再現できるものならしてみたいものだ。
その前に、ちゃんと自炊できないといけないけど。
ご飯を食べ終わり、お水を一杯。
教室の扉を開ける時間までは結構な余裕がある。
ここで景色を眺めて時間を潰すのも良いが射撃場で風にあたりながら、夏の気色を浮かべる空を見るのも捨てがたい。
景色という言葉で昨夜の夜景を思い出し、学食の外にあるスペースならば二つのいい所どりができるはずだと思って席を立つ。
手元のトレーを返却したら理想を求めて、いざ扉の外へ。
結果としては、落下防止用の柵があるから明るい内は見映えがちょっと悪かった。
でもここに椅子を置いて飲み物と本があればかなり楽しめそうだし、吹く風が心地良さそう。
機会があれば学食の人に提案してみようかな。
柵に両手を置いて体重を預け、優しい風を感じながらゆっくり呼吸をすると全身がジーンと痺れる。
柵の先にはいつも見ている街があるが夜に見たのとはまた別に昼間も綺麗だ。
恐る恐る下の方を覗いてみると、うわぁたかぁい☆
……という平凡な感想しか出てこない、高い所ダメ絶対。
そのまま目線を上げていくと坂道が見え、銃撃戦をした大通りが目に入ってきた。
先生の言っていた通り目立った被害は出なかったようだ.....本当に良かったと柵を握る手に力がこもる。
建物のガラス製品とかは割っちゃったりしたけどね!
ふと、前に街の探検をしたとき大通りからでも学校がしっかりと見えていたのを思い出した。
屋上から大通りがよく見えるのは、今しがた知ったけど....。
....待って欲しい、よく見える??
確か銃声がしたのは学校方面、よく見えるということはここから狙ったのでは?
そういえば昨日、柵の塗装が取れて傷があると先生が言っていた。
その部分を探すと既に塗装が施されていた、事務員さんの仕事が早い。
試しに柵へ銃のハンドガード部分を置いて射撃をする姿勢の真似をしてみると、とても狙いやすい絶好の位置だとわかった。
多分、撃った反動でハンドガードが柵と擦れて傷をつけてしまったのではないだろうか。
仮にそうなら、助けてくれた人の銃に塗料がついているかも。
なら塗料のついた銃がないか見て回れば......そう思ったが、生徒1人1人にあなたの銃に塗料がついていませんか?なんて聞いて周るのは自分には無理だ。
そもそも、この傷が狙撃した主のものでない可能性もあるから早とちりはいけない。
渡先生が調べてくれると言っていたから、どこかのタイミングでこのことを伝えよう。
色々と考えを巡らせていたら07時を過ぎていたので、鍵を開けるべく教室へ向かった。
扉の鍵を開けて自席につき朝のHRを待つ。
それから30分ほど経ったころに先生が入室。
連絡事項を受けて朝のHRは終わり、じきに授業開始の時刻となった。
今日の日程は国数英社化と射撃、体術訓練だけど1ヶ月休んでしまった分、授業内容についていけてないから憂鬱だなぁ.....。
とりあえず.....午前の分は終わったけど、やっぱり数学と英語は内容がチンプンカンプンで全然理解できていない。
国語と社会も覚えるだけなのはいいが、現行の授業部分へ追いつくのも大変。
午後の化学だって覚えることが多いはずだし、苦労するのは容易に想像できる。
とりあえず、気力の回復と食欲を満たすために学食に向かおう。
中に入って列に並び、メニューに目を通す。
昼食はトンカツ定食を選び、ご飯小盛りとキャベツ増しで注文してみた。
いつもの様にトレーをもらい席へつき、いただきますの挨拶をして箸をつける。
まずはキャベツをトンカツソースにつけて一口、シャキシャキと良い食感だ。
ソースはフルーティさのあるものを使っているみたい。
次にお味噌汁をひとすすり、お豆腐とわかめが質素な感じを出していて好きだし温まるなぁ。
そしてトンカツ、まずは何もつけていない状態で一口。
サクッと心地良い音が骨を伝ってくる。
衣は薄めでお肉の部分が厚く、弾力のある歯応えと肉汁が素晴らしい....!
次はソースをつけて口の中へ。
何もつけていないときの味とは打って変わってソースの甘酸っぱさがとても合う。
しかし、このトンカツ...本当に分厚いなあ。
こんな厚さのものを食べたのは初めてで、とても贅沢だと感じる。
ゆっくり味わって完食し、お水を飲んで一息ついたらトレーを返却して教室に戻った。
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