6-4

学食へ行くと中は生徒でごった返していて、さっきまで静かな部屋にいた身としては、ちょっとうるさく感じる。

席が空いているか見渡すと窓際はいつも通り人がおらず、大丈夫みたいだ。

よし、美味しそうなものを頼んで食べようとメニューを拝見。



休日だからかいつもより品目が少なめだけど、どれも美味しそうだ。

うん、小チャーハン定食にしようかな。

これには餃子と中華スープがついているから満足できるはず、追加でデザートのチョコレートケーキを頼もう。

糖質?今日は疲れたから無礼講です!



注文した品を受け取って正面の窓際席に座り、手を合わせる。

チャーハンをレンゲでひとすくい、お米はパラパラ・カリカリしていて、ごま油の香りがしっかり感じられる。

餃子はキャベツが多めに入っており、シャキシャキと歯応えが心地よい。

中華スープはよくある鶏ガラベースのスープだけど、溶き卵が入っていて素朴で落ち着く味。



お待ちかねのデザートは、食べる前にノンカフェイン紅茶を貰ってきて味覚をリセットしてからいただいた。

チョコレートケーキの見た目は、上がガナッシュ、下にスポンジのよくある組み合わせだが……味はいかに。



ガナッシュ部分は生チョコレートのようなしっとり柔らかい舌触りで、口に入れると溶けていくのが病みつきになる....。

スポンジはフワフワしていて、食べやすい。

1口食べ、紅茶で舌をリセットするのを繰り返しながら食べていると、丁度よくどちらもなくなった。



美味しさの余韻に浸りながら夜景を眺めて、家にいた頃より贅沢を満喫していると思った。

両親が生きている状態で私が大人になっていたら、こんな雰囲気の場所へ訪れて家族の団欒を楽しんでいたのだろうか。

たらればを考えても仕方ないけど、もし生きていたら私の働いたお給料で美味しいものをご馳走したかったな....。



食事は食べ終わったし、ここに長居することはない。

返却口の人にトレーを渡して、美味しかったですと伝えたら寮にはすぐ戻らず、射撃場へ寄り道をしに行った。



射撃場に置いてある長椅子に座り天を仰ぐ、背伸びをして大きく深呼吸をすると気持ち良くて、自然と顔が綻ぶ。

見上げる先には果てしない宇宙があって、心うたれる輝きを放つ星々がいて、いつでもワクワクさせてくれる。



VRで見たバーチャルの宇宙もよかったがやっぱり生で見て、体感する宇宙は格別に素晴らしいものだと、改めて実感した。

4月とはいえ夜になると少々肌寒い、長いすると風邪を引くかもしれないし、満足したから寮に戻ろう。



部屋へ帰ったら、お風呂の用意をしてのんびり入浴。

うーん、今日の探検は疲れたなあ...フル装備に近い状態で歩いたのは襲撃された日以来だ、流石にあのときほど重くなかったけど動きにくさには慣れないと。

今度、射撃訓練をする際はプレートキャリアくらいは身につけて練習しようかな。



お風呂から戻って時間を確認すると20時で眠くなってくる頃合い。

そのままベッドに横たわり1日を振り返った。

今日は外に出て探検をして、筋トレをしてVRを体験した、ここ4日の生活とはちょっとだけ違うことができて楽しかった気はする。



ただ、目的もなく外に出るのは自分には難しいから頑張って何か1つ、理由を用意してまた外に触れよう。

そうすれば色んなことを見つけられるかもしれない....。



程よい疲れもあり、眠くなってきたので目を閉じると、すんなり仄暗い世界へ旅立った。

 

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