6-2
元気よく門を飛び出して何歩か歩いた時点で、女子高生がこんな軍人と遜色ない装備で、銃を持ち歩いていたら、好奇の目に晒されるのではと気づいた。
注目をあびるのは苦手なのだ、だから目を引く格好は好ましくないなぁ....。
先ほどまでとは打って変わって、みるみる気分が急降下。
他に選べる道がなかったとはいえ、自ら進んで綾乃高校へ入学したんだから誰に何を言われ、どう思われようとも"守る"という防衛科の役目は果たさないと。
でなければ......この先、お母さんや私みたいな人を減らすことができない。
この解消できぬ苦痛を味わうのは自分で金輪際、最後にして欲しいと心の底から切実に願う。
さて気を取り直して探索再開だが、どういうふうに街を回ればいいのか、何も考えないまま出てきてしまった。
スマホの地図があるといえど見知った町ではないから迷うと困るし、あまり遠くへは行かないほうが賢明かも。
学校から続くS字の坂道を下っていくと道の終わりは大通りへと繋がっていて、後ろを振り返ると丘の上にそびえ立つ2つの校舎がよく見える。
そして前を向くと、そちらには街中を忙しなく飛ぶドローンたち。
このドローンは第5世代移動通信システム、通称5G+の普及を早めるため何年か前に導入されたものとかネットで見た。
当時範囲を広げるのに苦労していたのだがドローンを飛ばし、それを中継局にすることでなんとか解決したらしい。
5G+が普及したことによって通信範囲の制限が減り、ドローン自体も遠くに飛ばせるように。
それで様々な用途に使える個体が色んな企業から開発された。
今、私の目の前を飛行しているドローンは緑色なので宅配用の個体、他にもスマホなどの充電をワイヤレスでしてくれる水色の個体などもある。
様々な恩恵を受けられるのは良いが、たまにドローンの故障で怪我人が出たとかネットニュースで見ることもあるように、どうやら万能とはいかないようだ。
それでも、一度体験してしまった利便性は非常に魅力的で今更捨てられるものではない。
だからどんな危険性をはらんでいようとも、よっぽどの事件が起きない限りは使用禁止になることはまずないだろう。
それはさておき、近くにある陸橋を渡って向かい側へ移動するとコンビニと喫茶店がある。
高校があるから両店共に、行き帰りの生徒を狙った商売をできるのが良さそうだ。
うーん、コンビニかぁ....コンビニスイーツ食べたいなぁ....喫茶店のパンケーキも。
スイーツを食べられない現実に肩を落としたまま店の前を通り過ぎると、広めの交差点が見えてきた。
先へ渡るために信号待ちで立っていると、老若男女様々な人の声が耳に入ってくる。
学校という閉じた空間とはまた違った雰囲気で新鮮なのだが.....。
「ねぇねぇ、あの子銃持ってるよ?おもしろーい写真撮ろっと」
「何だあれ、何かのコスプレ?催しとかあったっけ?」
「サバゲーの装備みたい。格好いいなぁ」
「本物?気になるから声かけてみようかな」
案の定、私の格好を不思議に思った人々の会話が聞こえてきて額に汗が出てくる。
今度銃を持ち出す際は、折りたたみ可能なサブマシンガンを鞄の中にしのばせてお出かけしようか。
いや...そもそも銃がなかったとしてもこんな身なりをしていたら、目立つのは避けられない。
いたたまれない気持ちのあまり、周辺をキョロキョロ見渡していると交差点の左手奥に、大きな駅とロータリーが見えた。
駅が近いとは中々いい土地に学校を設立したものだ、ここからなら色んな場所へ気軽にアクセスできそうだし。
信号が青に変わると先程まであったこちらへの関心が一気に消え失せ、周りの人々が動き始める。
それに合わせて横断歩道を渡り、足を進めると川と橋が視界に入ってきた。
この川はいつも学食から眺めている川で、幅は河川敷に公園が作られているくらいなので結構広い。
これだけ広いということは雨が降ると増水しやすいのだろう。
激しい雨の日は巡回をして、子供などが残っていないかよく確認しておかないと。
食事の際に窓越しでしか見れなかったものが、こうやって目の前にあって生で見られたのは、嬉しいし新鮮味がある。
橋を渡るとその先には、大きい商業施設が鎮座していた。
かなり立派で綺麗な外装だけど、どことなく歴史を感じなくもない...リニューアルをしているのかな?
これだけの規模ならきっと欲しい物は大抵手に入りそう、お給料が出たらぜひとも買い物に訪れてみたい。
後は目で確認できる限りこの先は、住宅やオフィスがあるくらいで他に商業・レジャー施設は見あたらなかった。
振り返り、歩いてきた方向へ体を向けるがこちらも長く続く道路と住宅くらいで、そちらへは行く必要がなさそう。
完全なベッドタウンとまではいかないが、都心部に比べるとシンプルな街並みだと感じる。
まあ、見たところそれなりに揃っているおかけで生活していく上では便利そう。
話が変わるがこの通りを歩いて1つ思ったのは、身を隠せる物が少なすぎる。
仮にこの辺りで戦闘が起きた場合、すぐに盾にできるのは誰かが乗り捨てた車か電柱くらい。
即席でもいいから壁を用意できると助かるが、そんな都合よくはいかないだろうし。
住宅街方面なら塀などがある分マシだけど、あちらはあちらで敷地内や曲がり角に相手が潜んでいないか、いちいち確認を取るのが大変だと容易に想像できる。
うん、とりあえず今日の探検はこれくらいで切り上げて...さっきからお腹の虫が鳴っているのを考えると、既にお昼ご飯の時間のはず。
スマホのロック画面を出すと、やはり12時を回っていた。
早足で来た道を戻り、学校に到着したら校長室にいる校長先生へ会いに行き、装備品を弾薬庫に返品。
そして学食へ、一直線に突き進む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます