4-3
授業から解放された軽い身体で、お昼ご飯を食べに学食へ行く。
短い列の最後尾へと並び、メニューを見て和食にしようと鮭の定食を注文、トレーをもらってお気に入りの場所へ。
席につきしだい、もぐもぐと食べ始める。
ご飯はふっくらしていて甘く、鮭には脂がしっかりとのっており身も柔らかいし、皮が香ばしくて唾液が溢れる。
お味噌汁もお豆腐とワカメで質素で良い、そこに漬物できゅうりとたくあん...しょっぱすぎず漬け具合がよくて、ついつい箸が伸びてしまう。
ここの学食はなぜにもこんなにレベルが高いのか。
こんな代物を毎日食べていては、自炊や他所で買ったものが食べられない舌ができあがってしまう、危険なかほりがする!
綺麗に空になった器をトレーに載せて、返却口に置いて外に出たが.....この後はやることがない。
なんてことだ......周りは友達と楽しそうに談笑していたり、買い物に行こうと話しているのに。
比べて自分は1人ぼっちで、こんなにも悲しい存在だったとは....うらやまけしからん!
なんてふざけてみたくもなる今日、この頃。
そうだ射撃訓練とかはできないのだろうか?あれなら時間潰しには丁度いいし、文字通り訓練にもなって一石二鳥。
ついでに成績表に追加点が入ったら良いなあ。
渡先生を探しに職員室に行くとコーヒーを飲んだ後に机へ突っ伏しながら、めんどうだよぉ....なんて呟いていてる姿が見えた。
何かあったのか、心配になる。
「あの先生...今、お時間ありますか?」
顔を覗き込みながら話しかけると、考えごとに夢中だったらしく、うわぁっ!といつもとは違う可愛らしい反応をしてこっちも驚いた。
何これ面白可愛い、また機会があれば驚かせてみようかな。
「あ、愛星さん!びっくりした....えっと??何かしら?」
「ふふ...すみません、驚かせてしまって。お聞きしたいことがあるのですが、射撃訓練は授業以外ではできないのでしょうか?」
「うん?射撃訓練ならいつでもできるわよ。ただし、先生の付き添いがないとできないけど。もしかして今からしたいの?」
おや、てっきりできないと思っていたけど案外融通がきくみたいだ。
他にすることもないので、時間潰しに訓練したいですと伝えると先生からこの後に会議があるから30分くらい待って欲しいと言われた。
その程度であれば問題ない、また30分したら訪ねますと伝えて職員室を出る。
さてさて、どうやって待とうか?
時間潰しのために訓練を求めたのに、その訓練をするためにも時間を潰さなければならないとは....本末転倒だったりするような?
とりあえず、こういうときは時間潰しの定番である図書室にでも行って、そこで星の本を読んで癒されよう。
そういえば今時、学校に図書室があって紙の本を置いてあるのは珍しい気もする。
近頃はデジタルで大体のものが読めるようになったから、管理の面倒な実物は減ってると聞いていたけど今でもちゃんと、存在しているのは嬉しい。
やっぱり本は紙じゃないと読んだ心地がしない、触れられることで本自体の歴史を感じることもできるし———なんて通ぶってみたり。
図書室の中に入るのは今回が初めてだけど、結構広くて色んな種類の本が見受けられる。
様々な要望に応えられそうだと思いつつ目当ての本を探すため、棚に貼ってあるジャンルが書かれたシールをよく見て、星に関する本が置かれている棚を探す。
棚を見つけると、その中にあった"別れの星"という題名の本が気になったので手に取りぱらぱら中身を拝見。
何やらこの本いわく"別れの星が巡ってくると理由がなくとも別れが訪れる"と書いており算命学というものを用いて別れの時を見るらしい、そして人それぞれに宿命図があると。
ふむ....ならばお母さんと別れることになったのも、運命なのだろうか....?
そうは認めたくない気持ちのほうが大きい、私に知識と経験があれば守れたかも知れない。
まぁ、その力がない時に事件が起きたことが運命なのかもしれないけど....。
もしこれからの人生で、また似たようなことが訪れても変えられるものならば、全力で変えたいと強く思う。
密かな決意と共に本を閉じ、スマホを取り出して時間を確かめるとすでに約束の30分をオーバーしている。
気をつけながら階段を駆け下り、やや息を切らして職員室前へたどり着くと先生が外に立っていた。
遅れたことへの謝罪をしたら、一緒に本校舎を出た。
射撃場に行く前に寮に寄って、自室のガンロッカーからM4を持ち出してから射撃場へ。
まずは弾を取りに弾薬庫へ向かい、扉の前で先生が指紋認証とカードキーで解錠しているのを見て、前回の訓練のときはやはり事前に解錠していたようだ。
「昨日も思ったのですが、危険な物が多いからここまでセキュリティが厳重なのですか?」
ごく当たり前の質問をしてみると、生徒が勝手に使えると危ないし、他者に盗まれて使われるのを防ぐためだと言われた。
生徒が使えたら良くないのはその通り、でも盗みに来る人間がいるのかはちょっと疑問だけども。
念には念をという言葉もあるし、過剰気味だったとしても損はしないか。
そして中に入りM4の弾を3マガジン分90発を箱から取り出して、こつこつマガジンにつめる。
この前は5発だったから疲れなかったけど30発×3回は大変、マガジン内のバネが硬いから力がない人には辛い作業。
それにプラス、マガジンの先端にある弾を止める部分が意外と鋭利だから危ない。
準備が終わり外へ出ると、射撃場の入り口付近で先生は機械を操作して旗を立ち上げていた。
何をしているのか聞くと、射撃場では射撃中の合図として赤色の旗を上げておかないといけないルールがあるのだとか。
もし射撃中だと気づかず的があるレンジ内に人が入ったりでもしたら、事故が発生すると。
確かに銃に撃たれたりしたら、痛いという程度で済まされないことはよく知っている。
事故が起きるのはダメ、絶対。
レーンに立ち、予備のマガジン2つはテーブルへ置いて愛銃にマガジンを挿入。
セーフティを外して後方で先生が見守る中、レッツ・シューティング!
昨日のおさらいとして30mの的にセミオートで5発撃ってみた、的を確認すると5発とも命中しているようだ。
次は少し遠くなった50mの的に挑戦してみよう、5発撃って銃のセーフティをかけたら着弾箇所の確認をしに行く。
50mになるとちょっと難しかったらしく、3発しか当たっていなかった。
遠くなると手ぶれと、射撃の反動による影響が出て当てにくい。
私の貧弱な体では反動をうまく抑えきれない気がするけども、訓練しだいでどうにかなるものだろうか?
体格のことを考慮するならばアサルトライフルよりもっと軽量で、反動の少ないサブマシンガンのほうが適切なのかもしれない。
次回練習するときはサブマシンガンも使ってみようかな。
的から離れて、射撃位置につく。
セーフティを外して銃を構え、今度は80mの的に10発....当たったのは5発。
この銃についているデフォルトの照準器は見やすいが狙いを合わせることは難しいと感じる。
それに比べるとMCXについていた光学照準器は赤いドットを標的に合わせて撃つだけでよかったのが素晴らしかった。
理想はあれを載せられるといいが、M4には取り付けられる場所がないように見受けられる。
本体についているもので頑張って狙うしかないか....慣れれば当てられるはずだろう。
残りのマガジンを使い切るまでまた30mから80mの的を順に撃って練習した。
弾を撃ち切った頃には校舎の時計の針が17時を回っており、日も暮れてきたことだし、先生のところに報告しに行こう。
「お疲れ様。80mの的を狙っていたみたいだけど、どうだったかしら?」
「最初、今の照準器ではちょっと狙い難いと感じましたが多少は慣れてきました。と言っても、あまり当たりませんでしたが....今日は付き合っていただいて、ありがとうございました」
「また練習がしたくなったら、教えてね。あ、空の薬莢は忘れずに掃除しておいて。誰かに盗まれて売られたり、踏んだりして転んで怪我をするかもしれないから。空マガジンをくれるかしら?」
持っていた空のマガジンを渡すと弾薬庫にしまいに行ってくれて、戻ってくるとまた明日とこちらに手を振ってくれたら、本校舎のほうへ去っていった。
先生を見送ったら箒を取ってきて、地面に散らばった空薬莢を集め、それを近くに設置されている回収箱に入れてその場を離れた。
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