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学食につくと、ご飯を食べにきた人がそこそこいて朝とは違う賑わいを見せていた。



今日はお昼ご飯の時間がなかったけど、訓練がある日は毎回お昼の時間はないのかな?

もしそうなら中々過酷だなぁ、こっそり食べ物でも持っておこうかな....。

うん、怒られそうな未来が見えるからやっぱりやめておこう。



よーし、昨日は夕ご飯を食べられなかったからどんなメニューがあるのか楽しみ。

先ほどまで部活のことで頭がいっぱいだったのが、今度はご飯のことで脳が埋め尽くされていて単純だなと、指で頬を触りながら思う。



カウンターを見ると列はできていなかった、今のうちに早く決めてしまおうとメニューを取って確認。

定番のカレーに唐揚げ定食やパスタなど色々あり、見ているとゴクッと生唾を飲んでしまっう。



どれを頼むか困る....こういう時、友人でもいれば交換したり一口もらうこともできるのだけど私にはいないからできない。

今ほど友人がいないことを恨めしく思ったことはないぞぉ。



今回は明太子カルボナーラパスタとデザートは青りんごにした。

頼んだ品物を正面の窓際席まで運び、座って落ち着いたら、いただきます。



明太子とカルボナーラが混ざっているのは初めて見たから、どんな味なのか全く想像ができなかったけどこれは.....うん。

レシピを考えた人はきっと凄く、カルボナーラと明太子に拘りがある人だったのだろう。



明太子の辛さがカルボナーラのクリーミーさによって中和され、辛いものが苦手な自分でも食べやすくなっているのがグッド。

さらに明太子のぷちぷちした食感が平麺のフィットチーネとソースに合う....あっという間に完食してしまった。



もう少し食べたい欲が溢れて、それをりんごを食べて抑えようとしたがこれがまた罠だった。

りんごもとても甘くて歯応えがシャクシャクして素晴らしい...もっと食べたい....ふへへっ。



ふぅ、ここの学食は高級なレストランか何かなのかな?

絶賛したい気持ちをごちそうさまの掛け声に込め、食後に麦茶をゆっくりと飲み干す。

そして、トレーを返して学食を去った。



とても質の良いご飯を食べられて大満足、そのまま寮に向かいベッドに仰向けに倒れ込む。

今日は疲れた、射撃訓練で緊張したし整備で目もしばしばする。

上体を起こし部屋を改めてぐるりと見回すと自宅の自室とは様が大きく違い、2ヶ月前の平穏を思うと胸の傷がズキッと痛む感じがした。



さてと、寝てしまわないうちに体を動かしてお風呂の用意をしないと。

お風呂を掃除してお湯をためつつ、朝と同じ順序で体を洗った後に湯船へ浸かる。



朝とは違う心地よさを感じるのは疲れが身体にあるからだろう。

気持ちよさで表情がフニャフニャに緩みきっているのが備え付けの鏡でわかる、心身が温まったらお風呂を上がった。



髪を乾かすのが面倒に感じたが乾かさないと横になれないし、明日髪が酷いことになるだろうからドライヤーを持ってしぶしぶ乾かす。

ドライヤーの音を聞いていると昔、私がずぼらで髪を乾かさないからお母さんが叱りながらも乾かしてくれた思い出が蘇る。



……いくら思い出しても、もう触れられないし触ってももらえない。

生けるものが死を迎えるとは、こんなにも虚しい気持ちになるものなんだなと何度目かの痛感。



乾かし終わった後は部屋のテレビをつけてニュースを見ると、2ヶ月前の事件について特集が組まれていた。



話を聞いていると私が住んでいた地域周辺しか襲撃にあっておらず、建物が燃えるなど建築物に対する被害は大きいものになったが人的被害は病院で聞いていた通り、そこまで多くなかったようだ。

あの街には工場とか大きな企業などの狙われる要素が特にないのに狙われたから理由が全くわからないと論議している。



内容を見ていて変に思ったのは人的被害は少なかったなら人を狙った犯行ではないはず、ならばなぜお母さんと自分は狙われたのだろう。



今更ならがら振り返ってみると、人気のないあの場所で襲われたのは出来すぎな気がする。

明確に狙われていたとも思う、実は待ち伏せされていた?



では仮に待ち伏せしていたとして、私達が狙われた理由は何なのだろう?

こう言っては悪いけどお母さんは特別何か持っているような人ではなく、その辺にいるいたって普通の母親で自分も平凡以下な少女。

自分のことを平凡以下と言い切れてしまうのは中々悲しいなあ。



だから自身の知る範囲では、ああやって狙われるいわれはない。

襲ってきた彼女達は何者で何が目的だったのか考えれば考えるほど謎が絶えない。

だが今の私には真実を追求する手段が思いつかないから、この疑問は胸にしまっておくしかないか……。



今日はもう休もうかな。

テレビの電源を切ってベッドに乗り、スマホの時計を見ると20時05分。

ちょっと高校生が寝る時間には早い気はしたが、横になって目を閉じる。



目を閉じて数刻、うまく寝つけなかったので目を開けて天井を眺めていると今日の出来事の中で1つ、気になることがあったのを思い出した。



銃を持ったのに嫌悪感を抱かなかったこと。



そのときは訓練だったから気にもしていなかったけど、こちらもよく考えてみると変である。

射撃をしている間は嫌なものというイメージが湧いてこなかったのに、昨日と今日の整備室ではしっかり感じていた。



なぜだろう、ううん....わからない。

もっと銃と触れ合ってみればわかるだろうか?

そもそも、銃なんてものに触れる機会がないほうが良いのだけれど。



明日も頑張らねば。



そう考えていると次第に眠くなってきて、黒い世界へ私の意識は落ちていった。

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