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午後は銃の適正判断がなされ、大体の生徒は2つから3つが適正有りだったが私は全部だった....嬉しくないぞぉ....。
適正のある銃の中から自分の扱いやすい物を選ぶことになり、周りの子は最新の銃だったり見知った物を選んでいる。
そんな中、私はお母さんから渡された銃が使いたいと思ったものの、あれは病院の所持品保管庫にはなかった。
もう使えないと思うと寂しい気持ち。
仕方なく似ているタイプのを選んで構えてみたがしっくりこない、他のも持ってみたりして悩んでいると先生が話しかけてきた。
「愛星さんそういえば、この銃を貴女に渡しておいてと言われていたの忘れていたわ」
渡先生が手に持っていたのは、私の求めていたお母さんの銃だった。
でも、どうしてここにあるのだろう?
「愛星さんがいた中学校の伊藤先生が入学式前に持ってきてくれたそうなの。このM4、型が古いものだけど大丈夫?扱える?」
「はい、それの扱いかたはよく知っているので大丈夫です。持ってきてくださってありがとうございました」
伊藤先生、ナイスです。
本当に感謝しかありません。
そういえば、お母さんの銃の名前はM4ということを今初めて知った。
優しく胸に抱きしめた後、構えてみるとしっくりきて安心する。
お母さんと触れ合っているような感覚がしたなどと他者に言えば、きっと危ない人だと思われそう。
受け取った後は各自、選んだ銃で午前の復習をし始めた。
このM4はハンドガンとMCXに比べてトリガーがかなり軽く、半分程度の力で引けるため力まなくて済むのは楽で良い。
射撃の結果は言わずもがな5発とも命中で、精度も中々のものだった。
今回はお母さんの貸してくれた銃で成績が良かったから、思わず喜んでしまったのは内緒。
そしてまた先生が大仰に褒めるせいで、クラスの子はこちらに興味津々の模様。
ともかく、訓練は無事終了して今度は整備室で使った銃の整備をする練習をすることに。
「さてと、自分の銃の整備の仕方を学んでもらうわよー!」
先程使った銃を先生の教え通りに分解して、溶剤でバレルとチャンバーを掃除、摩擦の多い部品には潤滑油を塗ったりと大変。
案外楽しかったが、これは生けるものを傷つけるための道具ということを思いだした途端に、何を楽しんで整備しているのかと冷めてしまった。
すぐ、銃は悪い物だと決めつける思考が定着しかけている。
この先、銃に救われることもあれば銃で救うこともあるはず、だから頑張って考えかたを変えていかないと....はぁ。
自業自得ではあるが、やや憂鬱な気分のまま分解した銃を元に戻していると、先生が立ち話を始めた。
「大体のことはわかってもらえたと思うけど、基本的にはあなた達がここで整備することはないわ。昨日言った通り、部活で整備部に皆の銃を整備してもらう予定だから、今回のは緊急時の知識として学んでもらったの」
「それと銃の保管についてだけど各自、寮の部屋にあるガンロッカーに保管してね。鍵は電子錠で指紋とパスワード登録が必要だから忘れずに登録しておいて。もし、銃が紛失したりしたら大変なことになるから保管には要注意よ」
確かに使った際、毎回自分で整備するのは疲れそうだし時間も取られる、代わりにしてくれる人がいるなら大歓迎だ。
銃の管理についてはちょっと面倒くさい気はするが、危険な代物であることには変わりない、お母さんのM4は大切に保管しておかないと。
しかし、昨日も渡先生は部活があるって言っていたけど入学前はてっきり、防衛科に部活はないと勝手に思い込んでいた。
巡回などの取り組みがある以上、他のことに時間を割けないと踏んでいたが…これいかに。
でも部活があるのかぁ....どこに入ればいいのかな?そもそも、どんな活動が存在しているのか全く知らない。
惚けていると先生に整備の時間は終わりと告げられ、慌てて片付けをして席を立ち、集団と一緒に整備室から出た。
教室に戻ってからは自分達の使う銃の申請をすることに。
記入用紙を貰って、それにM4と先程の訓練で使用したハンドガンのP365を書いて先生に提出。
P365を選んだ理由は自分の手が小さいせいでP320はしっかり握れなかったから。
「あら?愛星さんは全部の適正があるからその2つ以外も申請していいのよ?」
「えっと....今はこの2つで問題ないと思います。扱いも慣れていないのに、たくさん申請しても腐らせてしまいそうなので。あの、後々追加申請はできますか?」
質問をするとできると言われたので、巡回などで他の銃が必要になればまた申請しますと返した。
「愛星さんもう巡回に出るつもりなの?その心がけは素晴らしいけど....でも、最低1ヶ月は学ぶことに専念して、それからでも遅くはないわよ?緊急事態になった場合は経験の有無は問わず、否応なしに駆り出されるけれども....」
「確かに先生の仰ることはごもっともですが、悠長に事を構えていられない可能性もあるので、経験を積んでおくのは重要かと。今週の土日あたりにでも一度巡回をしようと考えてます」
事実、自分のようにいつ襲撃されるかなんて誰にも分からない状況だ。
だからこそ早めに行動を起こしておかないと、不安になる。
それに加えてこの街に来てから外に出ていない、だから街のことを何も知らないのだ。
「えぇ!?い、いきなりなのね...うぅん....生徒がやる気になっているのに水を差すのは良くないわよね。分かったわ、勉学が疎かにならない程度によろしくね?」
「はい。ご心配ありがとうございます」
返事をしたら自身の席へ戻る。
先生はこちらを心配そうに見つめていたが、気づかないふりをするのにタブレットの書籍を読んで過ごした。
今日の日程はこれで終了、ホームルーム中に明日の説明がされていたけど部活のことに意識が取られて頭に入ってこない。
中学校の時は好きな部がなかったため帰宅部だった、もし天文部でもあったならば即入部していたんだけど。
まぁ、決める時は勧誘や張り紙を見ればわかるはずだから今は置いておこう。
そして会話へ意識を戻すといつの間にか話は終わったようで、色々聞き逃してしまった。
まずい、どうしよう?
他の子に聞くのは気が進まないし、かといって先生に聞き直すのも...。
いやいや、ここは素直に謝ってついでに部活のことも尋ねればいい。
ホームルームが終わったらすぐに先生へ声をかけた。
「どうしたの?愛星さん」
「整備室でおっしゃっていた部活のことなのですけど、いつから始まるのでしょうか。後、天文部とかありますか?」
「えっとね、部活に関しては今からでも入部申請をすれば始められるわ。それと天文部だけど確か…うちにはなかったはずよ」
それとさっき部活のことを考えていて先生の説明を聞いていなかったことを伝え、もう一度明日の科目を教えてもらえるように頭を下げる。
「ふふっ、今度からは気をつけてね?明日からは普通科目の授業が始まるわ。1限が数学、2限が国語、3限が社会、4限が化学よ。実はさっき言いそびれたのだけど、タブレットのカレンダーに1週間分の日程は書かれているのよね〜」
デジタル化はこういう時に便利だなと感じる。
科目を教えてもらったお礼を伝えて私は教室を後にした。
ふむ、やっぱり天文部はなかったかぁ...残念!
さてさて、今の時刻は15時30分。
お昼ご飯を食べるには中途半端な時間で、では夕食かというとそれはまだ早い。
たからと言って何かすることも今は...あ、早速部活の入部募集を見てみるのはどうだろうか。
掲示板に行くその前に、まず銃を自分の部屋のロッカーに預けに行かねば。
自室に行き、ロッカーの前に立つ。
ええっと…どうやって登録するのかな?
ロッカーの周りを見ると横に説明書がぶら下がっていて、開いて中を読むとタッチパネルのEnterボタン長押しで登録モードが起動するとな。
さっそく、ボタンを長押しすると機械的な音声が流れて指をかざして下さいと指示されたので、人差し指をそっと乗せる。
次はパスワードの設定だけど分かりやすいものは危ないから....うん、この数字にしよう。
つつがなくロッカーの指紋・パスワード登録が終わりホッとする、機械の扱いは覚えることが多くて混乱するから苦手だなあ。
その後、寮を出て副校舎内の掲示板を見に行くと部員募集の張り紙がずらりと並んでいた。
なになに...陸上に水泳・茶道・弓道・映研、その他にも5〜8個ほど募集がある。
沢山あるが運動部はアットホームです!とか書いてあって、一昔前の企業の勧誘文句かな?と思ったり、文化部はというとこちらはこちらで文面からして排他的な感じともとれなくもない。
水泳は少し気になるけど泳げないしなぁ....弓道とかは射撃の練習にはなるかも、茶道は美味しいお菓子が食べられる??
ううん....仕方ない百聞は一見にしかず、行けば気に入る活動があるかもしれないし。
とりあえずは、水泳部から見学しよう。
プールに向かうその道すがら、この学校に水泳の授業があるのかが気になった。
もしあるのなら、泳げもしないのに授業なんて....と別の問題が浮上して不安に。
ま、まぁそれは置いといてプールの近くに来ると活気のあるかけ声に、ザバザバと気持ちよく水を切る音が耳に入ってきた。
フェンス越しに様子を眺めると、楽しそうに泳いでいる光景にちょっと羨ましいと感じる、案外いいかも水泳部。
泳げないことを克服できる可能性もあるし、何より体力に自信のない私にはトレーニングとしてうってつけ、部員数もそう多くないみたいだし候補に入れておこう。
泳いでいる人たちに気づかれないよう、気配を消して素早く次の部へ。
次は弓道部に向かったが、あっさり部員の人に見つかって強制的に体験をさせられることになってしまった。
こんなことならもっと丁寧に隠密行動をするべきだったと恨めしそうに拳を握りしめる。
でも…体験が楽しみになってきている自分もいて複雑な気持ち。
準備が終わったら、レッツ行射!
部員の人に教えられたように構え、静かに弓を引き、心を整えてから放ったが結果は外れ!
ですよねー....銃のように操作して弾を出すのではなく、私が銃になって弾を放つ、そんな感じだった。
うーん...これはこれで趣があって良いものだ。
体験をさせてもらったお礼を伝えて他の部へ。
今度は茶道部に訪れたが本音を言うとちょっとお腹が空いてきて美味しいお菓子が食べたいだけなのであった、邪な気持ち全開。
その欲が表に漏れ出ていたのか部員の人が抹茶と和菓子を出してくれて、内心で喜びつつも恥ずかしい気持ちにもなった。
うん、私にはお茶を出す側はたぶん向いてないね!
食べる側のほうが断然向いているから、やめておこう。
その後も見学を続けたが決まることはなく、疲れたのでグラウンドのベンチに座って休む。
ついでに本校舎についている時計を見ると、針は17時37分を指している。
いい時間になってきたため、夕ご飯を摂りに学食へ足を運んだ。
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