5-2話 調査部隊迎撃
【グレイブ・バッファロー】のパイロットは統一連合との戦争を忌々しく思っていた。
しかし、そうやってインフラを整備してやらなかったらこの星に住むことさえ叶わなかった統一連合側の連中に、わざわざ武力行使せざるを得ない……この社会情勢に苛立ちを覚えたうえ、かつて自分たちが創ったものを破壊・侵略する事実が悔しかった。
そんな彼の前に現れたのが11号機。
何故こんな所に居るかは知る由も無いが、テレストリスの要であるアセラントを模倣した白い機体は、自分の味方を塵芥のように片付けてしまった。しかも、今さっきはグレネードの直撃に耐えたと来た。
彼は湧き上がる憎しみを込めて、ミサイルを放つ。
「……さぁ、どう出る?」
回避軌道にしてはあらぬ方向へ直線的に移動する11号機を見て、彼は狙いに気が付く。
「場所を変えたいんだな」
その逃げの姿勢を牽制する為にも、彼は強気にミサイルを追加で撃った。
しかし、11号機が空中で身を捻ったかと思うと、全弾見事にすり抜けて空に輝く花火になってしまった。
「馬鹿な! 後ろに目が付いてるのか !?」
そのまま白い機影がビルの陰に隠れてしまうと、彼は舌打ちをしつつそれを追う。
「いずれにせよ、向こうにはろくな武装が無い。絶対に潰してやるからな……」
手始めに、バッファローはかつて役所であった一際大きなビルの方に照準を合わせた――このビルを挟んで向こう側に隠れている11号機のシルエットを捉えたのである。バッファローはその鈍重さを補う分、レーダーやセンサーが充実しており、このように
そうして、彼は次弾装填の済んだ二門のグレネード砲をもう一度ブッ放した。流石に爆発
が遮蔽物を貫通することはないが、圧力にはなっただろう。
ただし、ここからはビルとビルの合間を縫っての戦闘。狭い環境でこんな範囲攻撃を使おうものなら自機が巻き込まれるのは目に見えているので、残弾数とは関係無く彼はグレネード砲をパージする。
(……こいつに火力を依存していた分、痛手ではあるが、重りを背負っているよりはマシだ。何より、向こうの方が不利な事に変わりは無い)
11号機が自分の部下と戦う様子を観察していた彼は、それが機動力特化の機体であることを察していた。
(殆ど策が尽きてこんな場所へ逃げ込んだのだろうが、それこそ自身の強みを封じる悪手だろう)
それでも、彼には迂闊に攻めに回れない理由があった。
11号機が隠し持つプラズマキャノンの存在である。プラズマキャノンというのは、そのままでも熱線として超強力なのだが、プラズマフィールドを容易く突破する特性がある――同じプラズマに対して干渉・相殺が起こり、最悪の場合キャノンの威力が増幅する。
要するに、こちらの防御を無視して勝負をひっくり返す切り札が、向こうにはあるのだ。
膠着したこの状況を彼が疎ましく思っていると、レーダー上に微弱ながら新たな反応が検出された。
「ん、ワーカーか?……何をしに来たんだ」
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