第39話 導かれしもの
「いたた……なかなか乱暴なことをするね」
そう言って出てきたのは悪魔、メルトルカだった。
「あなたがメアに取り憑いてた悪魔だよね? 悪いけど真裕から出て行ってもらえる?」
「悪いけど、それはできない相談だね。私と真裕の契約は既に成立しているんだ」
メルトルカがそう言うと二人は戦闘態勢を取りながらこう言った。
「だったらこっちにも考えがあるんだけど……」
「ふむ、実力行使に出ようと言う訳かい? 確かにいくら私でも勇者と龍王を同時に相手するのは厳しいかもね」
メルトルカは落ち着いた様子でそう言うと、こう続けた。
「だが、これは私が強要した契約ではない。真裕が自ら望んでした契約だよ? それを君たちに邪魔する権利はないだろう? それに……」
そう言った次の瞬間、俺の首元にはメルトルカの大きな鎌が構えられていた。
「いくら君たちでも真裕を守りながら私に勝てるかな? ここはお互いのため戦いは避けようじゃないか。それとも君たちは大切なこの子を見殺しにする気かい?」
メルトルカがそう言うと二人はその言葉通りに戦闘態勢を解除した。
「賢明な判断だ。安心したまえ、私は真裕の生命を蝕むつもりはない。元々、魔王の生命を蝕むつもりもなかったからね」
メルトルカが鎌を俺の首元から移動させながらそう言うとネムが疑いの眼差しでこう言った。
「ほんとに~? 信用ならないんだけど~……」
「本当さ。現に魔王の呪いはまだ解かれていないだろう?」
そう言われてメアの方を見てみると確かにまだ苦しそうな表情をしていた。
「私の力が魔王の呪いに共鳴して生命を蝕んでいたのは認めるが、それはあくまで結果的にそうなっただけさ。考えてみたまえ、宿主を殺して私になんのメリットがあると言うのだい?」
確かにそうかもしれない。メルトルカはメアの精神世界を気に入っていると言っていたし、わざわざその世界を壊す必要性はないだろう。
「だったらメアはなんの呪いにかかっているんだ?」
「それを解明するのが君たちの役割だろう? それは私が介入すべき問題ではないはずさ……ま、一つだけヒントをあげるとしたら、幼き頃の魔王を救うことだね」
メルトルカはそれだけ言うと俺の中に帰っていった。
「幼き頃のメアを救う……」
俺がメルトルカの言葉の意味を考えているとメアが目覚めたようだった。
「メア! 体の調子はどう?」
俺がそう尋ねるとメアは体を動かしながらこう言った。
「……少し楽になった気がします。少しであれば動けそうです」
「でも、無理は禁物だよ? まだ呪いが完全に解けた訳じゃないからねー」
そう言った香恋に対してネムはあくびをしながらこう言った。
「ふあ~、さすがに疲れたからボクらはちょっと寝るね~。真裕、後はよろしく~」
「うん。二人ともしっかり休んでね」
二人は徹夜で呪いのことについて調べてくれたのだ。メアも少し回復したし、もしもの時のために休んでもらうことも必要だ。
そうして二人が休息を取りに行くと、俺は引き続きメアの看病をしていた。
「真裕。一つお願いしてもいいですか?」
唐突にそう言ってきたメアに俺は快くこう答える。
「うん、いいよ。俺にできることなら」
俺がそう言うとメアは亜空間から一つのペンダントを取り出してこう言った。
「これを真裕に持っていて欲しいんです」
「これって……前、俺の家に忘れていったやつだよね?」
俺がメアを魔王だと知るきっかけになったのがこのペンダントだった。
「そうです。このペンダントは導き石と呼ばれる希少な石が使われているんです。きっと真裕を導いてくれるはずです」
「……なんでこれを俺に?」
俺がそう尋ねるとメアは自信なさげにこう言ってきた。
「なんとなくそのペンダントが真裕に導かれている気がしたんです。ずっと昔から持っているお守りのようなものですが、きっと真裕の役に立つと思いますよ」
それも導き石の効果なのだろうか。その感覚は俺には分からないが、メアが言うのだから受け取っておくとしよう。
「分かった。じゃあ俺が持っておくよ。また必要になったら教えて、メアに返すから」
「はい。大事に持っておいてください」
それから数時間後、香恋が慌てた様子で部屋に飛び込んできた。
「二人とも! ニュース見て! 外が大変なことになってる‼」
俺たちは戸惑いながらもスマホでニュースに目を通す。すると驚くべきニュースが同じ内容でいくつも上がっていた。
「ファルケイル教団。魔王軍に反乱か……?」
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