第21話 ダンジョン探索、魔王勇者ドラゴンつき

 翌日。俺はネムの言葉で目を覚ました。


「真裕〜起きて〜。朝だよ〜」


「……おはよう。ネム」


 体を起こして辺りを見回すとネム以外の二人も既に起きているようだった。


「二人ともおはよう」


 俺がそう声をかけると二人は少しうわずった声でこう言ってきた。


「お、おはよー!」


「おはようございます。き、昨日はよく眠れましたか……?」


 俺は二人の不自然さを少し疑問に思いつつもこう返答した。


「うん。眠れなかったんだけどネムがよく眠れる魔法をかけてくれて……あれ? なんで眠れなかったんだっけ……?」


 昨日の夜なぜか眠れなかった記憶があるのだが、なぜかそれを覚えていない。


「それは〜、魔王様と香恋の二人が真裕に抱きつ……」


 そこまで言ったところで香恋がネムの口を押さえた。


「眠れたんだったら良かったー。それじゃあ朝ごはん食べよっか」


「む〜!」


 よく分からないが、ネムのおかげでよく眠れたことは確かなので別にいっか。


 異世界での朝食を食べ終えると、俺はこんなことを聞いてみた。


「そういえば、この世界ってダンジョンとかあったりするの?」


「あるよ〜、真裕、興味あるの〜? 行ってみる〜?」


 どうやらダンジョンは実在するらしい。できれば行ってみたいところだが、危なくないのだろうか。


「えー、危なくない? ダンジョンって魔物の巣窟だよー?」


「大丈夫でしょ〜ボクら三人に勝てる魔物なんてそうはいないよ〜?」


 確かに魔王と勇者とドラゴン相手に勝てる魔物はそういないだろう。てか、むしろ存在するのか……?


 俺がそう思っているとメアが考える素振りを見せた後でこう言った。


「……少し行く程度なら問題ないのではないでしょうか。ここらのダンジョンは上層から強い魔物ばかりでもありませんし」


「……うーん。真裕はどうしたいの?」


 そう尋ねられ俺は正直にこう言った。


「俺は少し行ってみたいかな。ダンジョンなんて行く機会ないだろうし」


「……分かった。じゃあ、少しだけね」


 そうして俺たちは近くにあるダンジョンへ向かうことになった。


「到着〜! ここがダンジョンだよ〜」


 そう言って到着したのは洞窟の入り口のような場所だった。


「ダンジョンってやっぱり地下にあるんだね。これは、中がどうなってるのか楽しみだ」


「真裕、ダンジョンに入る前に障壁を張りますよ」


 メアがそう言って俺に手をかざすと周囲に一瞬、半透明の青白いものが展開された。


「障壁……? バリアみたいなのを張ったってこと?」


「そうですね。もしもの時のために強めに張っておきました」


 メアがそう言うと香恋とネムも障壁を張ってくれた。


「私も障壁張っとくねー」


「あ、ボクもボクも〜!」


 そう言って俺の周囲には三枚の障壁が展開されたようだった。


「みんなありがとね。これで安心してダンジョンに入れるよ」


 そう言って俺たちはダンジョンの中へと足を踏み入れた。


「これがダンジョンの中……! 砂漠みたいだね」


 中に入ると外からは考えられないほどの砂原が広がっており、地下のはずなのに昼間のように明るかった。


「砂のダンジョンだからねー。だから火のダンジョンとかだったら溶岩地帯だったりするし」


「そうなんだ。ダンジョンにも色々種類があるんだね」


 ダンジョンといえば地下洞窟的なイメージだったが、この世界のダンジョンはそういうわけでもないらしい。


「それに~、このダンジョンって未開拓な場所があるから伝説のアイテムがあるかもって言われてるんだよね~」


「伝説のアイテム……!」


 その言葉の響きに俺は思わず反応してしまう。男であれば一度くらい聖剣とかの伝説のアイテムに憧れるものだ。それが実在する可能性があるとなるとなおさら。


「まあ、今日はそんな深くまでは行きませんけどね」


「そうだねー。さすがにそんな下層になってくると危ないしー」


 ……まあ、そうだよな。俺にも戦う力があればよかったのだが、俺はあくまで普通の人間なのだ。


「やっぱりダンジョンは下層の魔物の方が強いんだね」


「今いるこの層はほとんど魔物がいませんが、流砂にだけは気をつけてくださいね」


「そうだよ~、流砂に呑まれると下層まで落ちちゃうことがあるからね~」


 このダンジョンの流砂ってそんなに危険なのか。気をつけて進まないとな。


 そんなことを思いながら先に進もうと一歩踏み出した瞬間、踏み出した場所から足場が崩壊し砂の中に呑み込まれてしまった。


 流砂というよりも落とし穴のように落下したため、みんなが反応するよりも先に俺は流砂に呑み込まれてしまったのだ。


 しばらくの間、砂の中を流されていき、何度か何かにぶつかりながらも俺はどこか先程とは違う場所へ放り出された。


「ゲホッゲホッ……ふう、なんとか生きてるな」


 そうして辺りを見回すとそこは先程の場所とは違い、少し暗く、まさに迷宮のような場所だった。


「……もしかしてダンジョンの下層に来たのか……?」


 そう言っていると俺の手元にある砂にビー玉くらいの大きさのきれいな半透明の青い球体が顔を出していた。俺はその球体を手に取ると思わずこう言ってしまった。


「きれいな球だな……」


 俺はその球体を自分のズボンのポケットに入れると立ち上がって今の状況を整理した。


「……明らかにまずい状況だよな。ダンジョンを進むのは得策ではないだろうし、ここでじっとしておくか……?」


 俺がそう言っているとすぐ後ろから何か硬いものが弾かれたような音が聞こえた。


「⁉」


 俺が反射的に振り向くとそこには爪の長い二足歩行の狼のような魔物がいた。先程の音は魔物の攻撃が俺の周囲に張ってある障壁に弾かれた音だったのだ。


 俺は全速力でその魔物から逃げようと走り出した。しかし、魔物のスピードは凄まじく、走りながら障壁に攻撃を加えてくる。


 まずいまずい! いくら障壁が守ってくれているといえど永久的ではないはずだ。このまま攻撃され続ければいずれは破壊されてしまうだろう。


 そうして走っていると目の前に大きな部屋があることを発見し、その中へ逃げ込むと、不思議と魔物はその中には入ってこなかった。


「……? なんだ……? この中はセーフティゾーン的な場所なのか……?」


 俺がそう不思議に思っていると俺が入ってきた場所に隠れていた扉が勢いよく閉まった。


 その瞬間に俺は理解してしまったこの部屋はセーフティゾーンなんかではなく、ダンジョンのボス部屋だということに……。


「シャァァァァァ‼」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る