第20話 みんなでおやすみzzz……
そうして迎えた土曜日。メアが迎えにきてくれて無事に異世界の扉があるらしい魔王城へ到着することができた。異世界の扉の前に行くとそこにはネムと香恋が先に到着していた。
「皆さん集まりましたね。では行きますよ」
目の前には大きな扉が開いており、中はグニャグニャした異空間のようになっていた。
「……この中に入るの?」
俺が心配そうにそう言うと香恋が俺を安心させるようにこう言った。
「大丈夫。怖くないから」
「そうそう、じゃ、ボクお先〜」
そう言って香恋とネムは先に扉の中へ入って行った。
「真裕、行きますよ」
メアに手を引かれて扉の中に入ると次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。
「ここが異世界か……」
俺が異世界の空気感に浸っていると香恋がスマホを持ち出してこう言ってきた。
「ほんとに久しぶりー! みんなー、写真撮ろー!」
「え? いいですけど……なんでですか……?」
「ま、いいからいいから」
そう言ってカメラを起動する香恋に俺はこう言った。
「でも誰が撮るの? 俺が撮ろうか?」
「大丈夫大丈夫。魔力で浮かして自動シャッターで撮るから」
なるほど、魔力って便利なんだな。念力的なことなのだろうか。
そう言われ俺たちは各々ポーズをとって写真を撮影した。
「よし、これを呟けばバズること間違いなし!」
「え⁉︎ もしかしてドラシルYで呟くんですか⁉︎」
え……? 俺、めっちゃ厨二病ポーズで写真撮っちゃったんだけど……。
「うん。魔王様一行、異世界旅行中って」
そう言う香恋に俺は疑問に思ったことを尋ねた。
「え? メアたちって姿明かしてないよね? 呟いて大丈夫なの?」
「そうだよ〜。ボクも正体明かしてないのに〜!」
不満そうにそう言ったネムに香恋はこう返答した。
「でもそろそろ私たちも顔出しするべきじゃない? 最近は反魔王軍派も増えてきてるんだから、少しくらいアピールしないと」
「た、確かにそうかもしれませんね」
メアたちは美少女集団だからな。確かに顔出しすれば人気が上昇することは間違いないだろう……しかし、そうなるとますます俺が写ってていいのか疑問だな。
「メアたちはいいけど。俺は写って大丈夫なの?」
「? 何が問題なんですか?」
なんの疑念もないメアのその瞳に俺は言い淀んでしまう。
「いや、その……」
そんな俺をからかうようにネムがこう言ってきた。
「ふっふ〜ん、真裕は魔王様の彼氏って思われるのが不安なんだよ〜」
「か、かれっ……! そ、そうなのですか? 真裕」
少し不安そうにそう言ってくるメアに俺は慌ててこう言った。
「い、いや別に嫌とかじゃなくて。一般人の俺が写ってもいいのかなって……」
俺がそう言うとメアは断言するようにこう言った。
「真裕は私たちの大切な友人ですから、写ってもなんの問題もありません!」
「そうだよー真裕。もっと自信持ちなって」
「そ、そっか。まあ、みんながいいならいいんだけど……」
そうして俺の厨二ポーズが全世界に晒されることになったところで、俺たちは近くにある街へ向かうことになった。その道中、俺は気になっていたことを尋ねた。
「そういえばこの世界特有のものとかあったりするの? アダマンタイト的な」
アダマンタイトやオリハルコンはゲームなどでも出てくる伝説の金属だが、異世界には存在していたりするのだろうか。
「アダマンタイトならありますよ? 今持ってます」
そう言ってメアは俺に一枚のプレートを渡してきた。
「え? これアダマンタイトでできてるの?」
「あ、それ魔王様の名刺じゃ〜ん」
そう言われてプレートを見てみると確かにそこにはメアの名前などが書いてあった。
「そういえばメアの名刺ってアダマンタイトでできてるんだったねー」
「その名刺は真裕にあげます。この世界に来た記念ということで」
伝説の金属で名刺を作っていることに魔王っぽさを感じたところで俺は少し戸惑いながらこう言った。
「あ、ありがとう。まさか伝説の金属でできた名刺をもらうことがあるとは思わなかったよ」
そうして俺は着ていた服の胸ポケットにメアの名刺を入れた。
「あ、街に着いたみたいだよー」
気がつかぬ間に街のすぐ側まで来ていた。
「この街は結構大きいから〜、結構楽しめると思うよ〜?」
そうして俺はメアたちの案内の元異世界の街を観光した。前に香恋が言っていたようにまさに剣と魔法の世界って感じの街だった。
観光をしているうちに夕方になり宿に泊まることになったのだが……。
「なぜベッドが二つしかないんだ……?」
そう今日泊まる部屋には大きなベッドが二つしかなかったのだ。
「この街は混むからね〜部屋がなかったんじゃない?」
「ど、どうやって寝よっか……?」
戸惑う香恋に俺はこう提案する。
「俺がそこら辺で寝れば……」
しかしその提案はメアによって却下される。
「そ、それは駄目です!」
「ボクは真裕と一緒に寝てもいいけど〜?」
そう言ってくるネムに俺は動揺しながらこう言った。
「ちょ⁉︎ 俺だって一応男なんだよ⁉︎」
「大丈夫だよ〜、真裕はそんなことしないし〜。なんなら襲ってくれてもいいよ〜?」
そう言ってくるネムの言葉を俺はこう理解した。
「そっか、みんな俺より強いもんね」
「む〜、ボクだって一応女の子なんだけど〜」
そうしてネムと話していると香恋とメアが少し顔を赤らめながらこう言ってきた。
「わ、私も真裕となら一緒に寝てもいいよ……?」
「で、でしたら私も別に構いません……」
「ちょ⁉︎ みんな⁉︎」
なぜそうなる。俺が床にでも寝れば解決するというのに。
「ひゅ〜、真裕モテモテだね〜。じゃあ、みんなで一緒に寝よっか〜」
「なんでそうなるの⁉︎」
そうしてネムの一言で一つのベッドに全員で寝ることになってしまった、のだが……メアと香恋の二人が寝ぼけて俺の腕に抱きついてきてしまったのだ。
え……? 何この状況……ただでさえ理性が限界なのにこんなの寝れるわけがない!
腕に当たる柔らかい感触を暗いせいか非常に鋭く感じてしまう。そんな状況にドキドキしていると足元の方から何かがもぞもぞと潜り込んできた。
「ちょ⁉︎ ネム⁉︎」
そう、ネムが俺の体の上に密着するように乗ってきたのだ。
「し〜、二人とも起きちゃうよ〜?」
二人の柔らかい感触にネムの柔らかい感触も加わり、俺は完全に限界だった。
「二人が真裕の腕を占領してるから〜、ボクはここで寝させてもらうね〜」
どうしてそうなるんだというツッコミはこの時の俺には考えることもできなかった。
「真裕〜、すごいドキドキしてるね〜。寝られるように魔法、かけてあげよっか〜?」
「ま、魔法? 寝れる魔法があるの?」
俺がそう尋ねるとネムは俺のおでこに自身のおでこを合わせながらこう言った。
「あるよ〜? 今かけてあげるね〜」
そう言われた瞬間、俺は強烈な眠気に襲われる。
「おやすみ〜、真裕」
まどろみの中、ネムの言葉を最後に、俺は意識を手放した。
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