第19話 リアルと違って構わない
そうして俺たちはお化け屋敷を出た後、もう少しだけショッピングモールの中を回ってから解散することにした。帰り際、メアがこんな提案をしてきた。
「そうだ! 連絡先も交換しましたし、今日の夜、通話でもしながら一緒にゲームをしませんか?」
「俺はいいけどネムってゲームとかするの?」
俺が疑問に思ってことを尋ねるとネムはこう答えた。
「ボク? するよ〜? 最近は万霊っていうゲームしてるかな〜」
万霊とは最近流行っているゲームだ。神話などの生物や、伝説の英雄など様々なキャラが登場するオープンワールドのゲームで、キャラが良いとよく話題になっている。
「ネム万霊してるのー⁉︎ 私も最近ハマってるんだー」
そんな香恋に対してメアも驚きながらこう言った。
「二人もしてるんですか⁉︎ 実は私も……」
「はは、人気のゲームだからね。ちなみに俺もしてるよ」
全員が同じゲームをしていることが分かったところでメアがこう提案してきた。
「では、今日の夜九時くらいからでいいですか……?」
それに対して各々が了承の返事をした。
「では、その時間になったら通話を始めておきますね」
そうして俺は自宅に戻ってから風呂などを済ませてベッドに倒れ込んだ。
「ふう、今日も色々あったな……」
俺は今日のことを思い返し、みんなの様々な面が見れたことに満足しながらも、ますます自分の不釣り合い感にさいなまれていた。
「はあ、いい加減俺も変わらないとな……もう九時か。よし、通話に参加するとしよう」
俺は若干緊張しながらもメアの立てた通話に入った。するともう俺以外の三人は通話に入っていたようだった。
「こんばんは。みんな早いね」
「私が少し早く始めましたからね」
そうやって答えるメアをからかうようにネムがこう言った。
「魔王様楽しみすぎて早く始めちゃったんだよね〜」
「そうなの?」
俺がそう尋ねるとメアが不意を突かれたようにこう言った。
「ネム⁉︎ それは言わない約束では⁉︎」
「まーまー、真裕、フレンドコード教えてー」
俺はみんなにゲームのフレンドコードを教えるとログインしてみんなのパーティーに入った。するとみんなリアルとは全く異なる種族を選択していた。
「えっと……メアが勇者で、香恋が龍族で、ネムが魔王で……ってみんなリアルとは別だね」
「まー、ゲームだからねー。私は空が飛びたかったから龍族にしたー」
確かにゲームの中までリアルと同じにする必要性は全くない。むしろリアルと違うことを楽しめるのがゲームのいいところだ。
「ボクは魔王様になってみたかったんだよね〜」
そんなネムを警戒するようにメアがこう尋ねた。
「ネム、もしかして魔王の座狙ってますか?」
「いやいや〜、そんなことないよ〜? あくまでゲームだから〜」
「……まあいいです。私は光の力を使ってみたくて勇者にしました。魔王は光の力を使えませんから」
そう言ったメアに香恋が羨ましがるようにこう言った。
「えー、でもメアはその代わりに光以外全属性使えるじゃん」
「それはそうですよ。私、魔王ですから」
さすがは魔王、リアルでも光以外全属性使えるのか……俺も魔法とか使ってみたいな。
「それで、真裕は……スライムですか?」
「うん、デビルスライム。結構強いんだよ?」
スライム種は育成の幅が広く、その中でもデビルスライムは体力を犠牲に大きな火力を出せるキャラクターだ。
「スライム……かわいいです」
そういえばメアはスライムが好きだったな。前、メアの部屋行った時に俺があげたエンジェルスライムを枕元に置いてたし。
「それじゃあ、何するー?」
「倒せないボスいるから手伝って〜」
そうして俺たちはネムが詰まっているというボスを倒しに向かった。
「そういえば倒すボスって誰なのー?」
「え〜っと、万滅の死神〜」
……万滅の死神って今の最新ボスじゃないか? ネムって結構ゲームやりこんでるんだな。
「え……⁉︎ それってすごく強いボスでは……?」
「だから手伝ってって言ったんだよ〜」
俺は最近ゲームから少し離れていたので万滅の死神は倒していないのだが、レベルや装備などは解放しているので勝てない相手ではないはずだ。
「まあ、たぶんなんとかなるよ」
そうしてボスの間まで行き、ボス戦がスタートした。最初は順調に進んでいたが、体力が半分を切ったところでボスがデバフ――弱体化スキルを発動したため、こちらの攻撃がほとんど通らなくなってしまった。
「つ、強いですね……」
「デバフのせいで攻撃が全然入らない!」
「ダメージ量も多すぎ〜」
圧倒的に劣勢な状況で俺は逆に燃えていた。
「ここはデビルスライムの見せ所だね!」
俺はスキルを発動して体力を犠牲にして攻撃力を大幅に上昇させる。すると俺の体力もゴリゴリ削れていくが同時にボスの体力もみるみるうちに減っていった。
みんなの支援などもあって俺たちは無事にボスを倒すことができた。
「やった〜勝ち〜」
「いえーい!」
「ふう、なんとかなった」
俺が一息ついているとスキルによって大幅に削れてしまった体力をメアが回復してくれた。
「真裕、回復しますよ」
「ありがとう、助かるよ」
その後もゲームを楽しみ、ひと段落ついたところでこんな話題が出た。
「そういえば異世界いつ行くー?」
「私は来週末でよければいいですよ」
「ボクもそれでいいよ〜」
異世界へ行くという話題に俺はうちから湧いてくるワクワク感を抑えながらこう言った。
「俺も」
「じゃあ、来週の土曜日にしよっか。久々の異世界楽しみー!」
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