第12話 ドラゴンボクっ娘ゆるふわ系
「貴様、何者だ! この城の者ではないな⁉︎」
そう言って向かってきたのは鎧を纏った女性だった。その女性はこちらに走ってくると持っていた剣をこちらに向けてきた。
「え、えっと決して怪しいものでは……」
様子を見る限り魔王城の警備員のようだ。なんとかして誤解を解かなくてはならない。
「黙れ! 魔王城に侵入しておいて怪しくない訳ないだろう」
昨日は夜も遅かったし、俺が魔王城にいることは伝達されていなかったのだろう。しかしこの状況、そう切り抜けたものか……。
「その、メアの……魔王様に招かれたといいますか」
そう言う俺だったがその言葉はすぐさま否定される。
「そのような話は聞いていない。貴様、魔王様の名前を使うとは許せん。今この場で始末してくれようか」
まずい、状況が悪化してしまった。ここは言い訳せずに捕まっておくべきか? でも始末とか言ってるしな……。
そう考えているとその警部員が他の警備員を呼び寄せる。
「誰か! 応援を頼む、魔王城に侵入者だ!」
そう言うとその声を聞きつけた警備員たちが俺を取り囲む。
「ちょ、誤解。誤解ですって!」
「黙れ、それ以上口を開けばこの場で始末する」
そう言われ俺は何も言うことができなくなった。そうして困り果てていると警備員たちの後ろから眠そうな声が聞こえてきた。
「みんなこんなところに集まってどうしたの〜?」
そう言って姿を現したのは、ゆるふわ系の大きめのパーカーを着た、眠そうな目をしている薄いエメラルドグリーンの長髪の少女だった。
「これはネム様。ただいま侵入者を発見しまして、早急に始末いたしますので」
……始末されることが決まってないか? っていうか今ネムって言ったか? もしかして昨日のドラゴンのネム? 頭に二本のツノみたいなのが生えているし可能性はあるな。ドラゴンが人化するのはファンタジー世界ではお約束みたいなところあるしな。というかそれにかけるしかない。
「もしかして昨日のドラゴンのネムか⁉︎ 頼む、助けてくれ、メアとはぐれてしまったんだ」
俺がそう呼びかけるとネムは少し驚いたようにこう言った。
「ん〜? あれ、真裕じゃん。そうなんだ〜、魔王様とはぐれちゃったんだね〜」
そう言ったネムに対して警備員がこう尋ねた。
「ネム様はこの者と知り合いなのですか?」
「真裕は魔王様のお友達だよ〜、始末なんかしたら魔王様怒っちゃうよ?」
警備員はその言葉を聞くと青ざめたようにこう言ってきた。
「なんと⁉︎ し、失礼しました! まさか魔王様のご友人とは知らず……」
そう言ってかしこまる警備員にネムがこう言った。
「あとはボクがなんとかするから君たちは持ち場に戻って〜」
「はい! 了解しました」
そう言って俺を囲んでいた警備員たちはこの場を去っていった。
「……真裕〜、危なかったね〜。ボクが通り掛からなかったら始末されたかもよ?」
「本当に助かった。まさかこんなことになるとは思ってなかったから」
そう言って一瞬スマホに目をやるとメアからメッセージが届いていた。
『真裕、無事ですか? できるだけ動かずじっとしていてください』
そのメッセージに俺は返信をする。
『今、ネムが通りかかってくれたから大丈夫』
俺がそう返信しているとネムがこう言ってきた。
「魔王様から〜? っていうかなんではぐれたの?」
「それが分からないんだよ。メアが途中まで送ってくれるって言うから、魔王城から出るために転移魔法陣に乗ったらメアと別の場所に飛んだらしくて」
俺がそう言うとネムは少し考えた後でこう言った。
「う〜ん。転移魔法陣はイメージした場所に行くからもしかしたらそのイメージが不完全だったのかも。手とか繋いでたら別なんだけどね」
そう言われ俺は転移する瞬間に魔王城の内部について考えてきたことを思い出した。
もしかして魔王城の中が気になるなって考えてたからか? って言うか魔法陣ってそんな使い方するんだ。
「っていうかこの際だしボクが家まで送っていってあげるよ〜。魔王様にそう連絡しておいて〜」
そう言われスマホに目をやるとメアからまたメッセージが届いていた。
『それなら安心しました。少し焦りました』
そのメッセージに俺はこう返信する。
『ネムがこのまま家まで送ってくれるって言ってるんだけど、どうしたらいい?』
俺がそうメッセージを送るとすぐさま返信が送られてきた。
『分かりました。ではネムに任せると言っておいてください。すみませんが、私は業務に向かいます』
『了解。また今度時間があったら遊ぼう』
そうメッセージを送ると俺はネムに向けてこう言った。
「送ったよ。メアがネムに任せるって」
俺がそう言うとネムは微笑んでこう言った。
「やった〜、ちなみに真裕はこのあと予定あったりする?」
「今日は別にないけど……なんで?」
俺がそう尋ねるとネムはこう答える。
「少し付き合ってほしいな〜って、真裕のこと知りたいんだよね〜」
そう言われ俺は若干戸惑いながらもその提案を了承する。
「別にいいけど……どこに行くの?」
「うーん、特に決めてないけど。そうだね~、何か美味しいものでも食べに行こうかな〜。真裕、甘いものは好き?」
そう尋ねられ、俺は正直にこう答える。
「うん、好きだけど」
コーヒーに結構な量の砂糖を入れるくらいには甘いものが好きだ。この間もメアと一緒にスイーツ食べたし。
「そっか〜。じゃあ、前から気になってたクレープ屋さんにでも行こうかな〜」
そう言って俺たちは魔王城を出てゆっくりと街の方へ戻って行った。
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