第41話

 どうやってもなにも。

「普通に撮りましたけれど」

「いや、普通じゃない。この3人はみんな友達か?」

「あ、はいクラスメイトです」

「それは知ってる。連絡を取ったのか?」

「……はい」

 わたしは正直に答える。

「そうか、それなら課題としては失格だ。そうだよな」

 わたしは黙ってうなずく。

 深いため息をつき、わたしの写真を見つめる萩原先生。エミリーと文月と谷川くんがわたしを見ている。

「でもな、」

 萩原先生は写真を見ながら続ける。

「写真としては最高だ。なんでだ。友達のはずなのに、尋常じゃない緊張感がある。言い方は悪いんだが、決闘をしているみたいなんだ」

 決闘、と言う言葉にびっくりする。そうだ、確かにあれは決闘をするように撮った写真だ。さすが写真部の顧問。わたしは答える。

「そうです。決闘をしました」

「そうか。まったく課題としては失格なのだがな、写真としては出色だ。その決闘というのはどういうことだ?」

 わたしは答えに躊躇した。決闘。それはわたしが一方的にふっかけたものだ。だからわたしは自分の事情だけを話した。

「3人を撮影することで、わたしが写真をやめるか続けるか、という決闘です」

 蜂飼くんがわたしの方を向く。斉藤先輩は前を向いたままでいる。

「続けて」

「はい。詳しくは言えないのですが、わたしは写真をやめるつもりでこのポートレートを撮影しました。それで、この後もしばらく撮影はしないと思います」

 わたしの発言を聞いて、萩原先生は眉を動かす。

「しばらく? それはまだ続ける意志があるということか?」

「今は、まだ分かりません」

「じゃあ、それはいつまで待てばいいんだ?」

「夏休みが終わるまで。新学期が始まった時、撮影したこの3人に向かい合うことができたら、答えが出ます。それで写真を続けるか考えられると思います」

「そうか、分かった」

 萩原先生が、それぞれの写真を手渡してくれる。わたしはもう一度、3人と対峙をする。生身の彼らに会いたいと強く願う。それと同時に心細くなる。ちゃんと会えるよね。祈るように見つめる。

「それでは、合宿の最後は屋上での撮影会といこう」

 萩原先生を先頭にして、わたしたち生徒3人は屋上に続く階段を上がる。普段は締め切りの屋上だけれど、

「今回だけ、特別だ」

 そう萩原先生が言って鍵を開ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る