第14話
マダムのお屋敷に辿り着いた頃には、だいぶ雨足も強くなっていた。今日はお邪魔しないで、写真だけ手渡そうと考えていた。
坂の上に古い洋館が見えてくる。雨の中にたたずむ洋館は、言い方は悪いけれど、ちょっと怖い。
「あれ、珍しい」
わたしたちは顔を見合わせる。
いつもは開け放しになっている鉄柵の門が閉まっていた。雨の勢いとあいまって、なんだか拒絶されたような気分になる。
「帰ろっか」
うん、と頷いてわたしたちは家路に着く。なんだか寂しい気持ちを抱えて、とぼとぼとわたしたちは歩く。
「写真、見せたかったね」
「そだね。また月曜日、学校帰りに寄ろう。今度はカメラも持ってくる。今日は雨降りで持ってこなかったから」
うん、と文月がうなずく。その時は、なぜだかカメラを持っていないから入れなかったのだと、思っていた。文月もそれを了解していたみたいだ。
少し寂しい帰り道だった。
日曜日も一日、雨。梅雨入りだ。この季節、カメラの取り扱いはとても慎重になる。カメラ本体は防塵防滴の配慮をされているけれど、レンズはそうでないものもあるし、濡れたまま放置するとカビが生えてしまう。小さいものなら写真の写りには影響しないけれど、カビは生きているので、いずれ根を張り広がってゆく。間違っても押入れにしまいこんではダメ。そんなことをすると、たちまちカビはレンズの表面をおおってしまう。それに、もしレンズやカメラ本体を手放そうとしても、買い取ってもらえなくなってしまう。わたしはカメラやレンズを手放すつもりは1ミリもないけれど、カビの生えたレンズで写真を撮るなんて、なんかイヤ。だからわたしは、防湿ケースに乾燥剤をたっぷり入れて保管している。適切な湿度に保ってくれる電動の防湿庫もあるけれど、それは高いし、わたしはカメラとレンズ2本しか持っていないから、防湿ケースで十分。湿度計もしっかりついているから、それをチェックして、湿度60パーセントを越えるwetの位置に針が傾くようだったら、乾燥剤を新しいものに買い換える。
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