第13話

 さて、授業も終わり、わたしと文月は駅前にある写真屋さんに向かう。写真のプリントの他に、奥の方にはスタジオが完備された写真館もあるお店。マダム、やっぱりこういう写真館で撮影した方がよかったんじゃないのかな?

 そんなことを思いながらも、ともかく撮影をしたわけだから出力してみようと、わたしは写真の注文機の前に座る。USBメモリを差し込んで、写真を表示させる。

「おおお! すごいよく撮れてるじゃん。やるなあ、ヒーコ。絶対、マダム喜ぶよ」

 ふふん、とわたしは鼻をかく。大きな画面で見るとやっぱりいいな。さすがフルサイズのミラーレスカメラだ。隅々までよく撮れている。

 A3サイズの用紙をセレクトしたあと、自動補正を外してから、群れる蝶の写真、蝶のアップの写真、そしてマダムのポートレート、そしてオオミズアオとマダムの写真を注文する。

 10分くらいで、写真は出来上がる。

「高階さま、お待たせいたしました」

 写真屋のお姉さんがレジカウンターからわたしを呼ぶ。

「こちらの写真でよろしいですか? わあ、素敵な写真。この夕焼けに浮かぶ蝶々のシルエット。この写真、あなたが撮ったの?」

 ちょっと、語尾砕けすぎ、と思ってわたしはひるんでしまったけれど、

「そうなんです。この子が撮ったんです。綺麗でしょ」

 と文月が割り込む。

「絶対、賞とかに応募しなよ。あと、個展、個展もいいよ。額とかも買ってく?」

「ああ、それは大丈夫です」

 わたしは慌てて手を振ってそれをさえぎる。そそくさとお会計を済ます。

「雨が降っているので、ビニール袋に入れますね」

「あ、ありがとうございます」

「ありがとうございました」

 お姉さんの声に押されて、わたしたちは写真屋さんを出る。すれ違いに着物を着た小さな女の子と、ドレスアップしたお父さんお母さんとすれ違う。

「なんか、イマドキは七五三は、夏になる前に撮影しちゃうんだって」

「へえ、なんで?」

「秋に撮影すると、夏に真っ黒に日焼けしちゃって、あんまり着物が似合わなくなっちゃうかららしいよ」

「詳しいじゃん、文月」

「わたしの七五三の写真、今見てもびっくりするくらい焼けてんだよね。ちくしょう。あの頃から日焼け止めとかしてたら、肌、真っ白だったのに! そういやヒーコは白いよね。うらやまし」

「ははは。わたし、全然、日焼けとかしなかったな。小・中、わたし、あんまり外で遊ばなかったから。でも、これからはしっかり日焼け対策しないとダメだなあ。カメラ持ち出すようになってから、強い日差しの下だろうと、気にせず何時間も撮影しちゃうもんな」

「そうそう。わたしが日傘してるのに、ヒーコ、帽子まで投げ出しそうなほどがっついているもんね」

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