第7話

 そうそう、わたし、さっきからヒーコって呼ばれているけれど、本名は高階たかしなひいらぎ。たからぎ、から始まって、らぎ、とか、ひぃ、とか呼ばれていたけれど、最近はヒーコに落ち着いている。文月とクラスも一緒の高校2年生。今年の冬で17 歳、写真部に所属している。高校の写真の活動だと「写真インターハイ」という大会があるのだけれど、わたしは今年入部したばかりなので、作品は提出されなかった。3年生の先輩の写真が選考会に提出されていたのだけれど、残念ながら予選で敗退してしまった。ブロック審査にも進めなかったのはずいぶん久しぶりのことだったらしい。

 わたしの写真も選んで欲しかったけれど、技術的に足りないのと、写真へのアプローチが根本的に違うために採用されなかった。

 応募する写真は撮って出しのものとなる。撮って出しというのは、現像ソフトを使わずに、カメラで写したそのままの写真のこと。わたしみたいに色をいじったりするのはNGなんだ。でもわたしはデザイナーのお兄ちゃんの影響で、写真の絵作りの方が楽しいと思っている。海外だとそういうアプローチの方が多いと思う。

 フォトグラフィーを日本では真を写すという写真と訳しているんだけれど、それはあんまり正確じゃない。本来の意味は、『光で描かれたもの』という意味で、絵画に対して光画とも呼ばれる。お互いに近いジャンルの芸術と考えられていて、それで、海外の写真は大胆な色付けをする。やりすぎなのもたくさんあるけれど、わたしはそちらの方が好きだからそれにならうことにしているんだ。

 とはいえ、写真インターハイでは写真の現像の腕は問われない。それよりも、もっと基本的な、構図の組み立て方、空間認識能力、めまぐるしく変化するシチュエーションへの対応力、撮影時のコミュニケーション能力、そういうものが試される。それらを駆使して、限られた場所と時間の中で、ぐっとくる、いわゆるエモい写真を撮らなくちゃならない。だから、そのための勉強も必要なんだけれど。

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