ライト

「えーマイクのテスト中

三番、音声聞こえてますか

三番・・・」

「おい、様子を、見てきてくれ、まだ、あいつは、ここにきて、日にちが、経っていない

また、ブレイカーを、落とされたら、敵わないからな」

タオルを、かけた男が、そう怒鳴ると、一人の男が、走って、ステージを、横切って行った

「全く、明日が、初日だと言うのに、上も、めんどくさい時期に、人事異動なんか、させるから、こういう、めんどくさい事になるんだ」

男は、手元のトランシーバーを、押すと口元に当てた

「おい、大丈夫だったか」

そう、口元に寄せて、声を、発声したが

しかし、返答はなく、代わりに、ステージの明かりが、消失した

暗闇の中、非常口の緑の明かりすらついていないことに、男は、困惑した

どういうことだ

もしものための、あの緑の表示版が、無いと言うのは、実際ありえない

これで、考えられることは

自分が、いつの間にか、失明した

もしくは、梯子から落ちて、気を失っているときに見ている幻覚

ただ、目の慣れていない暗闇の中

自分が、先ほどまで、音程テスト、をするために、わざわざ、古臭い、この大劇場の

照明関係を、維持するための高いところに作られた小部屋にいて

そんな時に、停電などが、起きてしまう

実に面倒だ

しかし、ここで、自分が事故でもしてしまえば、それこそ明日の公演に響く

それこそとんでもない

しかし、トランシーバーは、相変わらず返答はなく、静寂の中

何も見えない

会場を、ガラス窓から、見ていることになる

しかし、やはり、分からない

手元には、触りなれた、機械関係が、置かれていて

自分が少なくとも、全く良く分からず、落下している風ではなさそうである

しかし、状況は、相も変わらず、停止を、続け

その停滞を、解除するすべを、思い浮かばず

どうして、非常口の明かりまでもが、消えているのか、其ればかりに、思いを、浮かべていた

何らかの不都合で、予備電池が、駄目になってしまっている

可能性がある

そんな事を、考えていた時

下で何か音がした

それと同時に、トランシーバーに、何か、声のようなものが聞こえたが

確証はない

こんな、静寂の中なのだ、小さな物音も、暗闇一色では、五感が研ぎ澄まされて、余計聞こえやすいだろう、しかし、それは、余りにも小さく

耳を、再度研ぎ澄ますが、その音は、トランシーバーからは、聞こえなかった

しかし、代わりに、遠くの方で、何かの音が聞こえた

しかし、どうしようもない

梯子から降りることも考えたが

それは、最終手段だ、誰かが、ブレイカーを、あげるまで、休めると言う考え方もある

それこそ、其れすらも、知らないと言う人間ではない

海千山千を、超えて、こんな吹き溜まりに集まったのだ

数学よりも、山で、こもったり

車をばらす方が、得意な人間だ

部屋の明かりを、付けるくらい、適当に、日常茶飯事で、明かりを・・・

しかし、明かりが付かない

腕時計を、見ると、もう三十分は経過しようとしている

これは、明らかにおかしい

仕方がない

私は、そう思いながら、梯子段を、降りようとしたとき

明らかに、この大きなホールの重い出入り口の扉が、それこそ、観客席の背後と左右にある

その大きな扉のどれかが、開く音がした

誰だ

そう、声をかければよかったが、しかし、なぜだろう、男には、なんとなく、声をかけてはいけない、そんな何か予感めいたものが、存在していた

それが一体何なのかと言われても分からない

それこそ、暗闇にお化けの影を見るような

そんないい加減なものだったかもしれない

しかし、男は、それでも、梯子を降りなかったのと同様に

声を潜め、ただ、音の主が誰なのかを探った

しかし、相手は、足音を響かせて、まっすぐと、ステージに向かってきた

おかしい、相手は、ライトさえつけていない

しかし、それは、ステージに上がると、そのまま、自分の下まで来た

そして、その鉄の垂直に、取り付けられた鉄梯子の下

何かが、いや、誰かが、こちらを見て、言うのである

「みーつけた」


「それで、事情聴取は、終わったの」

「ああ、そうなんだけど、それよりも、新作の春のマニキュア36号、あれ、すごくない

被害者になりかけのおっさんから、一応あんたが、欲しがっていた

事情聴取っぽいことは、聞いたけど、それよりも、あの色がさ・・

それよりも、駅前の・・」

「ちょっと、まってちょうだい、つまり、そのシリアルキラーは、無事殺したの」

「もう、そんなことは、どうでもよくて、それより」

「いやいやいやいや、全然、頭の先からしっぽまで、全く良くなくて

あなたは、どうやって、その人を、捕まえたの」

「簡単ですよ、あれは、明かりと言う明かりに、黒い布を、かけていたんです

ブレイカーを、落とした後

どうやら目が見えないらしくて、小さな心音でも聞き得開けて把握している見たいでしたから

心臓の回転数を、奴と同じくらいにしたんです

そしたら、聞き分けにくいでしょ、それよりも」

私は、話を続けさせた

どこの世界に、鼓動を、制御できる高校生が居るのであろうか

「それで、私も、魚とりの投げ網で、奴を、梯子に、登るときに、下からひっかけて

落としたんです

脳震盪起こしているときに、ちょいっと

まあ、それよりも、春の桜餅入りココナッツジュースがですね」

私は、書類を、制作しながら、その穴になる部分を、埋める作業に、長い時間を要すことを、ただ、知って居たのである

しかし、彼女の、行動は、それを、計画通りに、長引かせる腕は、やはり、私の読みを、助長させる

腕前なのであった

「っあ、もうこんな時間ですので、私帰りますわ」

颯爽と、書類が、書きあがると、彼女は、バスが、間に合う時間に、走っていく

この室内に、時計など、何処にもないのに、一体だれに教わったのか変わった高校生である

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