6
6
よると言うものは、何処までも暗く、人の心以上に見通せない
「それで、書類は、何処に仕舞ったと言うのだ」
怒鳴り声が、オフィスに響く、ただでさえ、換気の悪い
この地下室において、密閉された音は、室内を、大音響で、こだます
きっと、馬鹿高い音楽ホールでも、ここまで、響いてはくれないことであろう
ただ、それでも、その音は、この部屋の誰もが聞いた所による
所であろうが、しかし、だからと言って、誰かが、その正解を、導いてくれることはなかった
その断絶された回答の中
総勢で、探しているにもかかわらず、お昼のチャイムが、なっても、全く、答えは、見つからずじまいであり、結局、昼食へ行く人影は、何処にもないのであった
深夜
だれも居ない公園に、一人の老人が立っていた
帽子に、コート
手には、新聞を持っており
一歩間違えば、早朝に、思えるが、残念ながら、時間帯は、午後十二時を、少し過ぎようとしていた
しかし、老人は、そんなことは、知ったことかと、ただ、誰かの待ち合わせでもあるのか
かれこれ、一時間ほど、そのだれも居ない公園の中に、突っ立って、停止をしていたのであった
「誰だ、こんなところに寝ているのは」
日が昇るころ、掃除用具を持った老人が、清掃用着で、公園の通路で、掃除を、していると
芝生に、寝ている人間がおり、その顔には、新聞紙がかけられてあった
寒かったら、普通であれば、顔にではなく、体にでも、かければいい物を、どういう訳か、
寝転んでいる人間は、みな、顔に、かけられていた
それはまるで、酔っ払いが、一番手っ取り早く、近くにあったもので、寒さを、しのぐものを、顔だと認識したかのような
そんなふざけた様子に思え
老人は、老婆心を、折りながら
彼らに、声を、かけようと、肩を揺らしたが、よほど、眠っている深さが、深いのであろう
その様子では、起きるどころか、さらなるゆりかごとして、浅瀬の波のように、熟睡している人間を、まさしく、眠りへといざないかねないように思えた
丁度、黄金色の朝日が出てきたことを、良い事に、新聞紙の
窓を、取っ払って、老人は、仰天した
その、首から上が、何処にもなかったのである
「しかし、何処にやったのでしょうか、辺り一面、血痕の毛の字もないほどです
これは、よほど、熟練した、犯罪者ですよ
どこかのトサツ場でしょうか」
不機嫌そうに、サングラスに、無精ひげ、縦と横とどちらか長いかを、考えるほどの大きさのサイズをした男が、皮の茶色い靴を、芝生に、踏みながら、あくびをしている
「トサツだと、こんな都市には、そんなところはない
俺がガキの頃はあったかもしれないが
みな、ビルの下に、埋まっちまった
くそが、皆くそだ、くそ、犯罪者も、警察も、それを許容している市民も、俺たちも」
部下は、そんなことは、獣の鳴き声ほどにも、興味を示さないのか、それとも、都会の鳴き声としては、正常だと聞いているのか
「僕が住んでいた街の猟師でも、ここまでの人は、中々いませんよ
やはり、どこかの施設か何かで」
・街って、顔かよ、どこかの遊牧民か何かだろ・
少年のような顔つきであるが、髪が、背中でくくられて、箒のように中ほどが、ぼわんと、膨れている
女は
「そんなことはありませんよ、山の中の街ですよ、くるみ料理が、有名で、くるみもち
、くるみ砂糖、くるみ・・」
鑑識が、到着し、遠くから、誰も入らないように
見張っていた
刑事は、邪魔だと言う風に、追い出される
本来であれば、そこら辺の所轄が、駆り出されるが、たまたま別の事件で、夜勤明けで、
戻って居た所を、出くわしたのだ
「じゃあ、俺らはいくか」
2人が、車に戻っていくと
代わりに、見張っていた、後から来た所轄の一人が
そのしわがれた手を、振って
「つけもの後で、食べさせてもらうわ」
と、声をかけた
徹夜で、いっていた、事件現場で、売っていた
コンビニのお見上げ売り場で、適当に、買ってきたものであったが
後から、駆け付けた人間が顔見知りらしく、袋を手渡していたのである
「でもな、お前、最近、奇妙な、人影を、見たと言う話が、結構あるんだ」
サングラスの奥の小さなビーズのような目が、相手を見る
「奇妙ってなんだよ、サンタクロースとか、赤い服を着た、殺人鬼みたいのかピエロとか」
老人は、首を振って肩を、あげて、更には、溜息まで付きそうであった
「そうじゃないんだ、そうじゃ」
じゃあ、何だよと、老人の顔を見る
これでも、しょっちゅう町の話を、聞いているのだ、いつも走り回るよりは、妙な話も、手に入るのであろうか
「これだけ、色々な人間が、居ると、大抵のものは、予定調和だ
それに、そいつの目を見れば、大抵のものがわかる
でも、それは、昔から変わらない
そうだろ、危ない奴は、危ない
いつの時代も、ここら辺が、くそを、垂れるウシか、荒くれ物の酔っ払いしかいない時代だろうが
人を殺しそうなやつは、殺しそうな、奴なんだ
そんなのは、スーツを着込もうが、主婦だろうが、子供だろうが、老婆だろうが、それこそ、牛だって、変わらない
そう言う雰囲気を、しているもんだ」
長い話を、遮り
「それで、殺しそうなやつって居るのは、どういうやつだったんだ」
老人だよ
目の前の所轄の男はそう言った
「おいおい、じさん、お前は、老人は、皆、職質される対象か
危なそうな、コスプレや
昼間からうろうろしているジャージ姿なんかよりも
マレットゴルフのハンマーを、持っているような、奴のほうが」
老人は、コクリと、頷くと
「監視カメラにそれが、映っているんだ」
ずっこける若い女と
じっと、老人を、ジト目で見る刑事
「おい、さっきの話は何なんだ、感じゃ無かったのか」
老人は、指を、ちっちと、鳴らしながら
「監視カメラの映像は、非常に長い
でも、その中で、怪しいと思える人間を、探すのは、非常に」
老人は、頭を指さそうとするも、そのまま、眠たい目をこするように
刑事は、頭を振りながら、その監視カメラのある場所へと向かう
事件現場の監視カメラなどは、いの一番に、調べられやすい物であろう
そして、そう怪しい人間など映り込むわけもない
であれば、調べるのも、実に、短い事だと、刑事は考えていた
その映像は、止められており
老人が一人、公園の真ん中で、突っ立っている
「それで、どうなんだ」
若い刑事が、映像を、早送りしながら
刑事はと言うと、老人にそう尋ねる
しかし、その手には、いつの間にか、その老人の手には、新聞紙の束が握られていた
「おい爺さん」
三人しかいない
監視室
しかし、ビデオの再生音だけが、やけに大きく響いていた
「それで、まだ見つからないのか」
誰のかの叫びは、先ほどから繰り返されているにもかかわらず、その声は、先ほどから、同じ人物により、雄たけびは、変わらない
その女々しい性格だからこそ、上司なのかは、知らないが
しかし、声の大きさは、実に、雄々しい
「もう、深夜だ、最悪だよ、今夜は、かみさんの誕生日だと言うのに
また、俺は、叱られる
いつも、予定を立て
完璧に、物事を、答えて居ると言うのに
どうしてだ、俺が、何か、お前たちに悪い事でもしたか
俺は、いい夫にも、良い職場の上司にも、なれないとでもいうのか
ええ、早く探せ探せ、さすがに、時刻が、明日になってもなんて、最悪だ
銀行では、一円でも、違えば、それを、探すと言う
でも、その一円を、建て替えるのとは、訳が違う
これは、大問題だ、そう、一株、百万の株を、一円で、売るようなものだ
いや、もっと問題だ、これは、替えが利かない
それどころの話じゃない
なあ」
その大声に対して
一人の部下が
先に帰っても良いですよ、見つけたら、連絡します
と、言おう物であれば
三角の目を、更に角度を鋭く
「おい、俺が、帰って、それで、楽しめると思うか
高いワインを飲んで、料理を食べて、プレゼントを、わたして
私が一度でも、安らぎを覚えられると思うか
答えはノーだ
何処の国かは知らないが、首を切るときに、介錯といって
誰かに手伝ってもらって、皮一枚残して
死んだ自分の手元に、桶をのっけて、落ちないようにするじゃないか
それと、似たようなものだ
君たちのせいで、責任を得て、それを君たちの手で、首を切られ
幾ら皮一枚つながっても、私は、全く楽しめない
楽しめないのに、さらに、帰れと、実に、楽しい話だ
なあ、きみたち、今は、ハッピーかい」
男は、唇を、真っ赤に染めて、それとは対照的な、粉を吹いたような
白い肌を、震わせながら、一流のブランドの物ではない
オーダーメイドのスーツを、震わせながら
それでも、脳みそがない鶏のように、叫んだ
いや、鶏のほうが、まだ、勇敢かもしれない
脳が小さいだけに
失うものは小さい
「お前たち、明日までに、見つからなければ、首が無いと思え
本当の意味でな」
ただでさえ、明るいはずの電気を、付けた地下室は
しかし、文字通り、暗闇が、じわりじわりと、地面の外から、シミ出してくるような、気がしてくる
この書類で、地層が、形成されていくように思われる
こんな場所でも、まだ、書類が、土化している個所はない
ただ、それでも、嫌な感覚は、皆の共通認識として、広がっていたのである
「確かに、怪しい老人だが、これは、誰かわかるか」
老人は、首を振る
「まあ、じゃあ、直ぐに、データーを、収集しに来るだろうし
そいつらに、渡してくれ
俺は、もう、そろそろ、眠気の限界だ
殺人鬼に、殺される前に、事故で、車ごと永眠しかねん」
刑事が、そう言って、暗い監視室から、表に、出ようとしたが
首に、違和感を感じた
何だろうと、目を向けると、なぜか、視界が、ゆっくりと、ぐらついた
「せっせんぱい」
そんな甲高い声も、響いたように、感じたが、密のような、狭い監視室
声は、あまり響きはしなかった
老人は、表に出ると
スーツを着た刑事が、立っている
「たったいへんです」
老人は、そう、声に出す
中に、なぜか、大量の血痕がと
「はい、これでしょ」
一人の若い女が、分厚い青いファイルを、相手に渡す
「これじゃ、無いでしょ、これなんて、軽い言葉で言ったって
このせいで、本当に、何考えているの」
若い女は、悪びれず、あやまって、表に、歩いて行く
部屋の中では、アリの巣をつついたような、騒ぎであった
「っえ、01と04が、死亡
凶器は、新聞紙
まさか・・・っえ、切断面から金属が発見されたところから
紙の端に、カッターでも、仕込んでいた可能性が・・・全く」
青いファイルに、内容が、書き換えられていく
その犯行の人物に、新たに、新しい項目が、数点増えた
「新聞紙で、人を、切断するなんて」
老人は、無表情で、女を見た
「簡単ですよ、硬いか柔らかいかなんて、ものさしには、ならない
女の手が、切れる
「っね」
老人は、女が、壁際に、逃げた際に、まるで、まな板に乗った野菜のように、その首を、跳ねた
「っなーんてね」
老人は、新聞紙の先端に付けられた、細い刃を、新聞紙を、丸めながら
移動する
監視カメラが、無い場所は、把握済みだ
バンに、清掃員の恰好をして、載せると
そのまま、制服に着替えなおし
元の場所に戻る
もともと、同じ血液型だったし
丁度良かったのだ
あの二人で
鑑識が、調べたところで、どうせ、後になってから、分かる事だ
今は、どうでも良い
へとへとになりながら、表にでる
「大変です」
繰り返された言葉が、相手へと伝わる
スース姿の男が、何か、自分を見たような、目で、こちらを、みつめている
「ああ、あなたですか」
彼の耳元で、青いファイルを持った
女が、叫んでした
「遅かったか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます