第8話 悪魔の宮殿

 3日後、ハルヤと女性は、ハルヤの送還を実現すべく悪魔の宮殿へと向かった。

 宮殿では、人間送還の儀式が行われるらしい。

 二千里の砂漠を越え、千里の森を抜け、どこまでも続く河を遡上した先に宮殿はあった。

 宮殿は擬洋風建築で、門に日本の意匠が入っていたり、屋根にフランスの意匠が入っていたりした。

 門番に用件を伝えると、開門してもらうことができた。

 開門されると、極楽浄土のような景観の日本庭園が広がっていた。

 ハルヤが少し驚いていると、どこからか話す鶏がやってきた。

「ようこそ。宮殿へ。初めてだと驚きましたよね。何しろ、極楽浄土のような庭園が広がっているのですから。これはですね、様々な思想の多様性を表しているのです。」

「そうなのか。」

 ハルヤ達は、鶏を置いて歩き出した。

「待ってくださーい。」

ー悪魔の宮殿にてー

「陛下、お話があります。」

 女性が言った。

 その瞬間、悪魔の皇帝がいる部隊を隠すカーテンが上げられた。

「何じゃ。」

 皇帝は、どこか温かみのある声で言った。

「ハルヤを送還して欲しいです。」

「なぜじゃ⁉」

「ハルヤは、私の欲のためにこの世界に来てしまいました。」

「しかし。」

「覚悟は十二分にできています。」

「うむむ、分かった。」

 女性は、刺殺され、ハルヤは元の世界に一人佇んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

湿地の向こうの世界 @UminoMiyako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ