尊さとエロが合体するとそれはもう最強なんよ

 今日が休日で良かったなと、俺は心底そう思った。

 目を覚ました場所は会長が用意した輝夜の家……というか、こうしてここに来たのは今回が初めてだ。


「……………」

「すぅ……すぅ……」


 視線を横に向けると、そこには輝夜が眠っていた。

 心から安心を浮かべているような顔で……けれども、こうして眠っているにも関わらず俺をビンビンに刺激する甘い香りは健在だ。


「……ふぅ」


 不思議と落ち着きはある……ただ、昨日のことを思い出せばすぐに体が熱を持ってきた。

 全部……当然のように覚えている。

 一度始めたら止まらないというか、俺も輝夜も衝動に突き動かされるような感覚だった……いや、マジであれは何だったんだろう。


「……あら、起きたの? 私が後かしら……?」

「っ!」


 ジッとしていたら輝夜が目を覚ました。

 包まっていた掛け布団を投げ捨てるように体を起こしたせいで、何も纏っていない彼女の裸体が露わになる。

 スッと視線を逸らせば、輝夜はクスッと笑って身を寄せてきた。


「ちょっと、もう愛し合った仲なのに恥ずかしがるの?」

「そりゃだって……いや、昨日の俺は雰囲気に流されて……」


 いや、流されてなんて言うべきじゃない……言えないっての。


「ごめん、流されてなんかない……輝夜を好きだって言ったこと、間違ってないんだ。前世から好きだった……あぁうん、マジで好きなんだわ」

「わ、分かったから! そのいきなり人が変わったようにかっこよくなるの止めなくていいから止めて」

「どっちだよ」


 なんというか、俺と輝夜で立場が逆転したようにも見えてしまう。

 けれどこうして落ち着けているのは自分でも驚いている……でもそのせいか、昨日のことを更に思い出した。

 具体的には輝夜と体を重ねることがあまりにも幸せだったし、何より気持ち良すぎて後先考えなかった……考える暇がなかった。


「ねえ、私が昨日言ったことを覚えてる?」

「え?」

「何となく、生でしたことを気にしてるみたいだったから」


 ドストレートに言うんじゃないよ……。

 俺が気にしていたのは輝夜が言ったことそのものだが、それを気にしなかったら……いや、してしまった時点でクズ野郎なのは俺だけど……なんで輝夜はこんなにあっけらかんとしてるんだ?


「その様子だと忘れてるわね。私は妖よ? 子供を作るかどうかは自分の意思で決めることが出来るの」

「……あ、そういやそんな話をしたっけ」


 ハッとするように俺は思い出した。

 人間ではない妖だからこそ出来ることらしく、それを聞いて昨日の俺は何の気兼ねも無しそのままだったんだ。


「他にも話をしたわね? 正常位に騎乗位にバックに色んな体勢で休みなくする中で――」

「結論だけ言ってもらっていいですかぁ!?」

「……むぅ、私としては優越感が凄いのよ。だってそうでしょ? 他の子たちは我慢しないといけない部分を、何の気兼ねもなくやれるんだから」


 本当に俺にとって答えにくいことを言ってくれるな……。

 得意げにする輝夜だったが、他の子たち……に関することもあれから詳しく聞いて、俺はどんな答えを出せば良いんだろうなってのも悩んでる。


「私はもうこうして一歩前に進んだわけだし、あなたから直接好きだって言われたから……ふふっ♪ しばらくは高みの見物をしましょうか」

「……………」


 それからしばらく、俺は輝夜に抱き着かれて過ごすことに。

 考えなくてはならないことは沢山あるけれど、今はただ彼女の肌の温もりを感じていたかった……ふぅ。


「こうなってくるともう、あなたのキレのある言葉を聞かなくなるのかしらねぇ。それはそれでやっぱり寂しい気がするわ」

「はっ? 言おうと思えば言えるぞ?」


 ぶっちゃけ……こうして落ち着いた雰囲気を出しているものの、内心では輝夜ってやっぱりエロいとか考えまくってるし?

 というかそんなの当たり前だろ!?

 高校生とは思えないくらいのスタイルなのはもちろんだけど、とにかく抱き着いてて安心するしムラムラするしビンビンだし!?

 それを試しに物凄い勢いで伝えてみると、輝夜は俺の頭を胸に抱くようにしながらこう言った。


「それはそうよ。妖として私は男を引き寄せることに長けている……けれどそれを私はあなたにしか使ってないから。もちろん理性を飛ばすものではなく、あなたにとっても心地の良いものじゃない?」

「それは……そうだな」

「それに……こうしてあなたと気持ちが繋がったから。私はもうあなたのモノになってしまったから、あなた無しでは生きられない。そうなってくると私の意思に関係なく、あなたを体が求めて繋ごうとするのはおかしな話じゃないわ」


 ……とのことらしい。

 そして、更に輝夜はこうも続けた。


「たった一人……あなたというたった一人が私たちの運命を変えてしまったの――ならその責任を取ってちょうだいよ。こういう言い方は卑怯だと分かってるけれど、それでも言わせて……これから先も、あなたと共に歩かせてください」


 それはもう、覚悟を決めた二度目の告白だった。

 俺はその問いかけに一切の迷いなく頷く……こうして、俺は本当の意味で彼女と一緒に過ごすことを決めた。

 だが、ここからが大変だと言うのはもう分かっている。

 う~ん……それはそれ、これはこれとしてどうしようかな……。


「白雪とか面白そうじゃない? あの横乳を晒す美人さんには強い妖狩りの旦那さんが居るとかで有名になりそうよ?」

「旦那とかは一旦置いておくとして、横乳は流石に止めさせるべきでは」

「人の個性を潰すのは感心しないわ」


 横乳が個性……だと?

 そのことを一切否定が出来ないくらいに、俺の中で会長と横乳はセットになってしまっている。

 あの横乳があるからこそ息を吸えてるんじゃないかってくらいだし、変に気にしすぎてるのは俺の方なのかなぁ。


「……ほんと、頑張りすぎた結果がこれか」

「そうね。頑張りすぎたからこうしてご褒美をもらえたのよ」

「ご褒美なんて言葉で終わらせたくないけどな……それくらいに、輝夜はもう大きな存在だから」

「……………」

「なあ輝夜」

「うん?」

「妖だからとか気にすんなよ。何があっても守るさ」

「……ねえ、もう二十回戦くらいしない?」


 その時、俺は身の危険を感じて着替えを手に家を飛び出た。

 後ろから輝夜が追ってくるようなこともなくて安心したが、我が家に着いた瞬間……俺は自分の目を疑った。


「あら、おかえりなさい」

「……ただいま」


 家の前に高そうな車が止まっていた。

 そして……。


「あ、帰ってきましたね正義君! ほら、全員分の婚姻届けを――」

「……………」


 ごめん、ちょっとクラッとしたわ。

 ニコニコと笑みを浮かべる両親と、婚姻届けを眺めて嬉しそうにする祈と……そしてドヤ顔を決める会長と。

 ……誰か、俺の頭を殴って意識を飛ばしてくれんか。

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