関係の進み方もやっぱエロ過ぎるってか?

「ふぅ……ふぅ!」

「……………」


 正義は今、まさかと言った顔をしている。

 というのも倒れている正義に跨り、上半身を晒している輝夜から熱烈な告白を浴びたからだ。

 最初は、何を言っているのか分からなかった。

 好意を裏付ける言葉であることは分かっていても、それが自分に対して向けられるものだと考えないようにしていたからだ。


「ねえ、ここまで言っても分からないとか寝言は言わないよね? もしもこれで聞こえないフリとか、早まるなとか言い出したら本当にあなたのことをぶっ飛ばすわ……いいえ、ぶっ飛ばして誤魔化せると思われたら嫌だからもうやっちゃうわよ? どうせここから逃げられないんだし、思う存分やっちゃうわよ?」

「っ!?」


 やっちゃうわよ、その言葉が意味することを分からないわけがない。

 この部屋のことはともかく、ギラギラと獲物を見定めるような目をする輝夜から正義が逃げられる気が一切しない。

 まあ力に任せれば容易だろうが、それでもこの肉壁を傷付ける結果にはなるだろうし……とにかく、輝夜を傷付けない形で脱出というのは難しそうだ。


「……俺は……」

「ねえ正義、私はあなたに悪い感情を抱かれてないと思うのよ。ちなみにこれは間違ってる?」

「間違ってはない……な」

「なら良くない?」

「いや軽すぎぃ!」


 僅かないつものキレが戻ってきた!

 だがしかし、相変わらず蛇に睨まれたカエル状態なので正義はただ輝夜を見上げるしかない。

 このままではお互いに時間が過ぎ去るだけ……。

 そう判断したのか、輝夜は更に言葉を重ねて行く。


「ねえ正義、あなたが前に使っていた端末が見つかったって話をしたわよね? その時に父と戦っている時の会話が入ってたのよ――あなたが全てを回避するために頑張っていたこととか、その辺りのことも聞いちゃったのよ。どうしてそんな未来を知っていたのかは……そうね。あなたが素敵だったということで気にしないわ気になるけど」

「なるんじゃねえか……って、記録として残ってたのか……?」

「バッチリね。その音声データももはや消えてしまったけれど」


 前に使っていた端末が見つかったことは教えてもらったが、それに音声データが残されていたことは知らなかった。

 仮に全てを喋っていなくても、正義がこの世界で何を成してきたのかを明確に表すような言葉はいくつもあり、勘の良い人なら正義に秘められた謎を察しもするはずだ。


「……俺は」

「それでも、俺は……って口ごもるのね。ならもっと言ってあげる――どうも父の会話を聞くに、私を含めて多くの人が死ぬはずだったみたいじゃないの。あなたはそんな未来を認めたくなくて、私たちを助けるために奔走していた……それもまた、あなたが必死にという言葉を沢山使っていた答えに繋がったわ」

「……………」

「あのねぇ……惚れるなというのが無理な話じゃない?」


 輝夜はもう一度、顔を近付けてキスをした。

 互いの唇を銀の糸が滴り、あの輝夜とまたキスをしたという事実が正義に夢のような瞬間を与える。


「英雄、正義のヒーロー……そんなものは子供が語る夢物語でしかなく、妖が蔓延り無力な人が足掻くだけのこの世界においてもっとも不釣り合いな言葉だった――でもそうじゃなかったのよ。あなたは私のヒーローであり英雄だった……それはもちろん他の子たちも同じ」


 英雄であり、ヒーローだとそう言う輝夜の瞳は輝いていた。

 彼女は今、どんな心境なのだろうか……子供のようにウキウキとした様子を隠そうともしないその姿はあまりにも可愛らしく、それこそ普段の彼女より数倍は幼く見えてしまう。

 だが忘れることなかれ――正義の目の前には揺れる特大のバストと、彼女の体から香る異性を夢中にさせる媚薬のような香り!


「正義、あなたはもう逃げられないのよ? ずっと逃げて、逃げ続けても逃がすわけがないじゃないの。私はあなたに惚れている……たとえあなたが私に嫌悪を抱いていたとしても、その嫌悪を好意で塗り潰せる自信があるほどなの……ねえ正義、あなたが好きで仕方ないのよ。あなたを想う度に体が疼いて、あなたが欲しくてたまらないの」

「輝夜……」

「妖的に言うなら、あなたとエッチがしたくてたまらない……あなたの子種を受け止めたくてたまらない。あなたを番にしたくてたまらない、あなたを犯したくてたまらない……でも一番は、あなたに滅茶苦茶にされたいのよ……私が持つ妖のプライドを、あなたから与えられる快楽でズタズタにしてほしい! あなたのことしか考えられないただの女にしてほしいのよ私は!」


 それはもう熱烈というレベルを突破していた。

 愛と欲望を織り交ぜた輝夜の言葉に、流石の正義ももはや誤魔化すという選択肢は取れない……というより、諦めに近い感情もあったが一番は喜びの方が大きかった。


「……推しに告白とかマジかよ」


 そう、何より推しに告白されたのだから嬉しくないわけがない。

 変わらず見下ろされ続けている正義だが、今度は彼のターンだとして話し始めた……自分の秘密を、この世界において何を思い何を考えて過ごしていたのかを改めて。


「……それが、俺が頑張った理由であり真実だよ」


 生まれ変わりであり、全てを知っていたからこそ頑張った。

 がむしゃらに全てを救うために動き、力を振るい、大好きだった君たちを守りたかったからだと……そして何より、逆に輝夜の心を完全に射止めた言葉さえも正義は放った。


「……ま、輝夜のことは一番好きだったからな。何があっても助けようとは思ってたよ……それこそ、この世界に気付いたガキの頃からずっとさ」


 照れ臭そうにしながらも、ニカッとガキのような笑みを浮かべた正義を輝夜はもう好きという言葉以外で表すことなんて出来はしない。

 だがしかし!

 正義にもプライドはあった!


「でもさ! それとこれとはちょっと違うんでない!? エッチなことっていうか、それをするには心の準備ってのがお互いに居るじゃん!?」


 慌て始めた正義が可愛くて仕方のない輝夜は、ニッコリと笑ってこう言った。


「だ~め♡」


 そして、しばらくした後に輝夜命名の妖の穴(セックスをしないと出られない部屋)は消失した。


「……………」


 やっちまったと頭を抱える正義と、満足したようにお腹を擦る輝夜。

 もはや後戻りは出来ないし、逃げ道もないのだと輝夜は言わんばかりに口を開いた。


「ねえ正義、私だけじゃないのよ? 他にもあなたのことを好きでたまらない子たちはね……ふふっ、どうなるのかしら」

「そ、それは……でも人間社会は一夫多妻を認めてないぞ!? というかそもそもそんな気の多いことなんて俺はだなぁ!?」


 お互いに素っ裸だというのに、これからのことを考えて正義は再び頭を抱え……そしてそんな正義を見て輝夜はクスッと微笑む。


(正義のおかげで汚れる前に戻った体……貫かれる痛みを正義で感じられたのも良かったわ――あんな凶悪なモノを持ってるのに、どこまでも手付きが優しかった……はぁ、もっと惚れちゃうかもねこれは)


 結局、なるようにしかならないのだ。

 こうして行動してしまった以上は……ただ、正義にとってこうなることももはや時間の問題だっただろう。

 好き勝手するということは、その分のツケも支払うことになる。

 正義は全てを救い、全てに抗い、全ての絶望を希望に変えたことでヒロインたちの愛を受けるのだ。


「あ、輝夜」

「なに?」

「……好きだよ。前世から好きだった」


 忘れていたと言わんばかりに、ふと囁かれた声は輝夜の音を奪う。

 今までの強情さはなかったがそれでも、まだやってしまったという表情の彼だが……そんなものはもはや輝夜にとってどうでも良い。

 いまだ快楽に包まれていた体に、愛する男の告白が襲い掛かったことで強く体は震え、ゴボッと何とは言わないが勢いよく漏れ出し……へなへなと正義に寄り掛かるのだった。


「ちょ、ちょっと全身の力が抜けてしまったわ……えへ……えへへっ」

「お、おい!?」

「はぁ~……妖のプライドなんてどうでも良いわこんなの」

「ちょっと!?」


 こうして、一つ進んだ。



【あとがき】


マジで後数話です!

よろしくお願いします。

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