生徒だけじゃなくて先生もエッチぃんだこれが

 封妖高校において、生徒が戦う力を持っているのは当然だがそれは教師陣にも同じことが言える。

 ここで戦えないとしたら、外部から訪れる用務員の人とかそれくらいだろうか……だからなのか、子供と大人であっても背中を預け合うからこそ距離は中々に近いものがある。


「ほら、ココアだ」

「ありがとうございます」


 昼休み――生徒会で纏めた書類を顧問である望月もちづき先生に渡した後、せっかくだからと職員室の一角でココアをご馳走になった。

 いくら生徒会が頼れる人員で構成され、先生なんかの手助けの一切を必要としないとはいえど、顧問の存在は必要不可欠だ。


「ふぅ、お前たちは本当に優秀で嬉しい限りだ。忙しくない立場ほど楽なことはないからな」


 生徒を導く先生がこれだからなぁ……まあでも、これに関しては望月先生が特殊なのもある。

 この先生――望月ういも登場人物の一人だが、教師というだけでヒロインではない……昨今、学校の先生がヒロインになるというのは珍しくも何ともないが、何度も言うがこの人はヒロインじゃない。


(見た目的にはヒロインに名を連ねてもおかしくねえけど)


 そう……この人の見た目もまた、あまりにエロ過ぎる。

 大人の色気をバンバンに醸す望月先生は、本来のストーリーだと生徒を庇って死ぬ……それは女性なのにエロいシーンが一切なく殺されるというある意味で不遇な存在だ。

 ある意味……いや、考えようによっては幸せかもしれんけどさ。


(この人の戦闘スタイルとか……どっかで見たことあるんだよなぁ)


 何度か望月先生と妖を狩ったことがあるのだが、この人はただでさえ暴力的なスタイルを見せ付けようとするかの如く、ピッチピチのバトルスーツを着て戦場に出る。

 乳と尻のラインがこれでもかと分かる服装でこう……くっころの似合う忍みたいな人だ。


(……俺ってば、よく今まで意識しなかったよな)


 単純な体だけのエロさであれば、この人は輝夜を越えるかもしれん。

 それだけのポテンシャルを秘めるエロ女……エロ女性だからこそ、必死な時はマジで気にならなかったのに、今となってはこうしてただ話をするだけなのにエロって思うわ。


「どうした?」

「いえ、何でもないっす」


 気分を落ち着かせるために、グッとココアを喉に通す。

 誤魔化すための勢いだったのだが、先生からしたら俺は大のココア好きにでも見えたらしくまだまだガキだなとコーヒーに口を付けた。


「いやはや、本当にお前たちは優秀で助かる。教師故か、他所の学校のことも詳しく情報が入るんだ。以前に聞いたと思うが、他所の地域では妖狩り同士の争いが頻発している……悲しいことに、学生の姿も多いとのことでなぁ」

「あ~……やっぱそうなんすね」

「愚かなことだよ全く……だがこの地域を守るのがお前たちであり、この学校が誇る指折りの実力者がお前たちだからこそ平和だ。麻宮をトップに据える現在の生徒会人気は凄まじいし、何より救世の英雄的活躍に憧れを抱く者も多いからな」

「あ、あはは……」


 ちくしょう……やっぱこうして褒められるのは嬉しくて、ついニヤニヤと頬が緩んじまう。

 なんかこう……あるよな。

 大人だからこそ感じる包容力というか、お姉さんというのはまた違った悪くない感覚ってやつが。


(まあでも、先生も十分エロ過ぎてヤバいけどな!)


 もはや胸の谷間を見せるのは鉄板で、それは先生も同じだ。

 谷間に見える黒子がこれまた絶妙にエロくて視線を吸い寄せられるが、何とか見ないようにと視線を逸らす。

 その後、ココアを全て飲んだので職員室から出たのだが……廊下に出てすぐ先生に呼び止められた。


「救世、お前は何も心配は要らないだろうが何かあれば相談しろ」

「あ……あざっす」


 すまない先生……先生がエロい以前にとても熱くて生徒思いなのは知っている……でもやっぱ、俺からすればエロいって感想が先に出てしまうんだ。


(……あ、そういや先生に息子さんの様子聞けば良かったな)


 ちなみに、望月先生には幼稚園のお子さんが居るが……旦那さんは妖狩りとの戦いで亡くなっている。

 そんな望月先生のお子さんに俺は一度、会ったことがある……会ったことがあるというか、妖に誘拐されてしまったお子さんを助けたことがあるのだ。


(って、今になって思い出したけど……確かお子さんも殺されちまうんだったよなぁ……あまりその辺は詳しく語られてなかったけど、もしかしたら俺が居なかったらそのまま死んでたのかもしれん)


 そう思ったら望月先生の心も守れたんじゃないかって思えるし、そういうことがあったからこそこうして気に掛けてくれるのもあるのかもな。

 少し歩いて後ろを振り向くと、まだ望月先生が見つめていることに気付く……彼女はヒラヒラと手を振って、そのまま職員室に戻った。


「あら、教師との危ない関係かしら?」

「っ!?」


 むぎゅっと、背中に押し当てられる柔らかな感触……そして顔の横から伸びた腕が俺を抱きしめた。


「輝夜……?」

「えぇ、少し散歩をしていたらあなたと見つけてね」


 ……って、ドサクサに紛れて抱き着いてんじゃねえ!

 そのデカ乳を押し付けんじゃねえと言って離れようとしたが、相変わらずこうなった時の輝夜の力は凄まじく、全く離れてくれない。


「良いじゃないの。見せ付けてやりましょうよ」

「なんで見せ付けんだよ……」

「ふふっ♪ ねえ正義、まだ昼休みは終わらないでしょう? これから屋上に逢引きと洒落込まないかしら?」

「逢引きて……ま、良いけどさ」


 このまま教室に戻っても輝夜が離れてくれない気がしたので、俺はそのまま輝夜を連れて屋上へと向かった。

 そして、屋上に着いた瞬間にサッと輝夜から離れた。

 望月先生に会ったばかりだから刺激は……なんて事あるかいなと言わんばかりに、やっぱりこの女から漂うモノはヤバいの一言だ。


「ちょっと、いきなり離れなくても良いでしょう?」

「うるせえ……ったくよ!」


 直視するだけでもエロの塊なんだぞ?

 そんなエロ女に抱き着かれたらいつもの如くヤバイことになるし、男としての尊厳というか大事なアレが大変なことになったのを気付かれてみろよ死んだ方がマシだ!


「男って不思議よね。こんなものがそんなに気になるだなんて」

「っ!?」


 輝夜は自身の胸に手を当て、そのまま指を沈めていく。

 圧倒的なまでの柔らかさと弾力は、俺が触れているわけでもないのにその凄さを視覚的に伝えてきやがる。

 ひとしきり自分の胸を揉んだ後、ニヤッと笑った輝夜が近付く。

 だがその拍子に、パシンと彼女の胸ボタンが弾け飛んだ……あれ、以前にも似たようなことがあったような、そう思った時には遅くそのボタンは俺の額に直撃した。


「なんでそうなるんだ……」

「う~ん、やっぱりこのシャツの耐久性はダメね。少し力を入れるとボタンが飛んじゃうもの」

「そうかぁ!? まるで俺と二人なのを狙い撃つかのようにやってね?」

「それはもちろんでしょう? だって私、あなたの中に眠る獣を解き放ってほしいのだから」


 ほら来たよ!

 人が必死に我慢してるってのに、このエロ女は悪びれもせずに堂々と言い放ちやがるんだから……!


「一体、何度言えば分かるんだよ! お前は危険だエロ過ぎる! こうして話してるだけで! その解き放たれたパイオツの谷間を見るだけでムラムラが止まらねえんだよ! だから勘弁してくれよぉ!!」


 ぜぇはぁと荒く息を吐きながら、何度目になるか分からないやり取りを輝夜としたわけだが……ほんと、いつになったら分かってくれる――。


「正義、あなたは正直なのかそうでないのかよく分からないわね。そもそもどうして我慢する必要があるの? あ、ここが学校だから? それなら放課後にする? 私はいつだって良いわよ?」

「っ……なんでそうなんねん!!」


 気付けば、輝夜はすぐ目の前まで接近していた。

 佇まいから全てに至るまでにエロスを感じさせる雰囲気は、数十分でも二人っきりの空間……分かりやすく言えば、密室にこいつと居たら絶対おかしくなる自信がある。


「正義、私の目を見て」

「嫌だ。エロいからやだ」

「私がエロいのは今に始まったことじゃないでしょう? ほら、良いから私の目を見なさい」


 俺の頬に手を添え、輝夜は強引にでも視線を固定させた。

 それなら目を閉じてやる……とも思ったけど、瞬き以外で目を閉じることは許さないとも言われてしまったので、彼女から視線を逸らすことが出来なくなってしまった。

 輝夜……前世の最推しが目の前に居てくれるのはもちろん嬉しいけど、やっぱり凄まじいほどのエロさを醸し出しているせいで、純粋さを上書きするほどの欲望が滲み出そうになる。


「ふ~ん……ねえ正義、私は現状をとても満足しているわ。あなたが決して聖人ではないというか、ちゃんと男としての欲望を持つ男だと知れたのも大きいわね」

「そりゃ持つだろ。忙しさと必死さを引き換えに欲望が我慢出来なくなったんだよ」

「ねえ、本当にそれだけなの?」

「……う~ん?」


 なんだ……何が言いたいんだ?

 ラベンダーのような甘い香りに脳がやられそうなのを我慢しながら、彼女から発せられる言葉に耳を傾ける。


「あなたは私たちのことをエロいだとか、理性を削るだとか言って遠ざけようとしている……でもね、私は気付いたのよ――正義、あなたはひょっとしたら……自分が手を出してしまうことが罪になると思ってない?」

「いや、女の子に手を出したら罪だろ」


 そうならないように我慢してんだろうが。

 だが、輝夜の言いたいことはそうではないらしい。


「そういう意味じゃないの。まるであなたという存在が、私たちに手を出すこと自体が罪であるかのような……そんなことを考えてない? もっと言うなら、私たちと必要以上に親しくなることさえも罪だとかね」

「……………」


 何を言ってんだと思いながらも、俺も改めて冷静に考えてみた。

 そもそも俺はこの世界に本来居ないはずの人間だし、だとしたら必要以上に親しくなるのは……まあ違う気もするよな。

 ここまで来たら今更な気もしてるけど、もしかしたら俺は……そんなことを考えていたんだろうか。


「正義、あなたは不思議な人――本来あり得ないような奇跡さえ、起こしてしまいそうな人よ。だからどうかしら?」

「どうとは?」

「私はあなたのことで分からないことがある……そしてあなたも私のことで知らないことがあるでしょう? だからそれを改めて親密に教え合う機会を作らない?」

「……何をするの?」

「それはもちろんエッチなことよ――お互い裸になって、獣のように全てを曝け出せば全部知れるわよね?」

「何だかんだそういう方向だと思ったよ!」


 ちょっと考えさせられたらこれだ……少しでも油断したら、誘惑という名の悪魔が鎌を首元に当ててきやがるんだ。


「ええい離せ!」

「だから逃げないでってば! 人を呼ぶわよ!?」

「都合の良い時にそんなこと言ってんじゃねえ!」


 だが危なかったぜ……最近、ずっと溜まってるからマジでヤバいと思ったもんなぁ。

 でもそれも今日で終わりだぜ……だって今日の放課後……具体的には夜になるんだが、俺はついに大人のお店へ行く――既に店の場所とか全部リサーチ済みだ。

 まずは一旦スッキリさせてもらうんだからなぁ!

 ……けれど何故だろうか――重大な局面というか、大変なことになるからやめておけと神のお告げが聞こえてきそうなこの感覚……怖い。

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