真面目かと思ったらやっぱりエロいんだよぉ!
前世で考えられない物の中に、人ではない化け物――妖を狩るという仕事があるのはもちろんだが、この世界で俺はもう一つ経験していた。
それがテレビの番組出演だ。
(……こういうこともあるんだよなこの世界)
今、俺は会長と共にテレビ局に訪れて生出演していた。
というのも最上級妖を狩ったのは俺を含めた仲間たちということで、封妖高校の名前を世間に知らしめたのはもちろんのことだが、それだけの活躍をすれば多くの目に注目もされるというものだ。
会長は麻宮家の令嬢として顔が広いというのはともかく、俺は別にこういうことに興味はない……それなのに俺がここに居るのは会長の付き添いとしてである。
「しかし、麻宮家のご令嬢が妖狩りというのは……ご家族の方は特に反対などされなかったのですか?」
「お父さまはわたくしが妖狩りになることに反対されていましたけれど、お母さまは好きにしなさいと言っていましたね。まあ、お母さまが妖狩りだったのも大きいでしょうが」
俺の隣に座る会長に質問が飛ぶ……というか、会長にしか飛ばない。
この場に居るのは俺と会長を除いて全てが一般人……まあよくテレビに出ている芸能人ばかりだが、テレビを見るくらいならゲームとか漫画を読んでいるので顔は知ってる気がしても名前は分からない人が多い。
(俺……居る意味なくね?)
そりゃ俺みたいなモブ顔なんかより、美人の会長にばかり質問が飛んだり興味を持たれるというのも理解出来る……けれど、こうなるくらいなら会長を見守るだけでわざわざ番組に出る必要はなかったんじゃ?
妖狩りは確かに人々を守る剣であり盾……だが、戦いの場に出ない一般人からすれば、妖狩り側の苦悩なんて知らないようなもんだ……だからなのか、ただ力があるだけで目立つ妖狩りに対してヘイトを向けようとする芸能人も居たりして……ま、世のため人のための行動も万人に受け入れられるというわけではないんだ。
ましてや、最上級妖が滅び以前よりも危機が減ったというわけだから。
(こういう部分に関してはストーリーを読むだけじゃ分からなかったなぁ……知りたくもなかったが)
ま、実害があるわけじゃないからどうでも良いっちゃどうでも良い。
というか俺は今の状況に少しばかり感動している――何故なら、会長以外にこの場にも女性は居るのだが、彼女たちからは一切のエロスを感じない……ま、まあそれは会長とか他のエロ女たちと比べて体の凹凸が少ないとかそういうのもあるけど……って、そう考えると如何に周りに居る女たちがエロいかが分かるな!
「救世さん……でしたか?」
「あ、はい」
おっと、ようやく俺の名前が呼ばれた。
ちなみに今回の出演に関しては、先輩がもっとも信頼する相手として俺を選んでくれたのだが……蒼汰じゃないのかという疑問はあった。
それでも彼女を本来よりも早く生徒会長にしてしまってからの付き合いなので、実を言うと結構嬉しかったりする。
「麻宮さんがあなたのことをとても頼れる後輩だと言っていました。最上級妖を倒せた要因だとも」
「あ、はい」
……分かってたけど、俺絶対こういうの向かないわ。
他の出演している男芸人とか全然面白くなさそうな顔で見てるし、俺も俺でこういう顔をされると面倒だしなぁ……でも何となく、俺の知り合いたちはこういうのを見ると怒ってくれそうな気がするのは嬉しいや。
「なんや、あまりパッとしないですな」
「あまり僕たちと変わりませんねぇ」
それ、言外に自分たちがパッとしないって言ってるのと同じじゃね?
芸人たちの言葉に会長が眉を顰め、これ以降は学校の指示だろうと番組には出ないという固い意志が宿ったようにも見えた。
ただ、こんな風に俺を馬鹿にする視線を投げかけるのは極一部だ。
他の人……司会の大御所さんはしっかりと注意をしてくれるし、番組が始まる前に守ってくれてありがとうと握手までしてくれた人だ――ま、こういう人は本当に良い人だと思うよね。
「麻宮さんが全幅の信頼を寄せるあなたは、妖狩りとして何を考えて活動をしていましたか?」
その問いかけに、俺は数秒ほど考えてこう答えた。
「全てを守るために――俺が守りたいと思った人を全て」
これ、いつもと言ってること変わらねえや。
なんて思っていたが、俺の一言がどうもスタジオの空気を変化させてしまったようだった。
隣に座る会長の感動したような視線に、そんな目を向けないでくれと照れ臭くなる一方で、この場所でも変わらず横乳出してんなとムクムクしそうになるのを抑え込む。
「やっぱりかっこいいですね! そんな皆さんが居てくれるから私たちはこうして無事に居られるんです……それなのにあの人たちと来たら」
「っ!?」
「な、なんすか!?」
共演者のアイドルさんがそう言い、芸人たちの顔が真っ赤になる。
軽く放送事故になりかけたそれも司会のおかげで事なきを得て、その後は妖狩りのことを知ろうのコーナーで実際の映像が映った。
「な、何が起きてるのか分かりませんね……」
「これが戦いですか……いやはや」
今、モニターに映る映像は俺を含め生徒会の面々が戦う瞬間を録画したものだ。
触手を伸ばし、嫌悪感を強制的に引き出す技を使う妖を狩る俺たち……ちなみにこの時は、会長だけでなく桜花も一緒だった――けれどこの映像に関しては使ってほしくなかった……だって……だってさぁ!
「……あれ?」
アイドルさんが何かに気付いたようで、言葉を続けた。
「救世さん……どこか怪我をされたんですか?」
「っ……な、なんででしょうか?」
「だってずっとお腹を押さえているというか……姿勢がおかしいなって思って」
「おや、確かに言われてみたらそうですね……前屈みになって、表情もどこか苦しそうですが」
ぐっ……ぐあああああああああああっ!
俺はどうにか叫びたくなる衝動を堪え、この映像がテレビに流されていることにとてつもない羞恥心を抱く――何故ならこれ、俺は別に攻撃を受けたわけでも、ましてやお腹が痛いとかそういうのじゃない。
(これも全部桜花って淫乱ギャルピンクのせいなんだ……っ!)
あの女……この映像を撮る前に、事故を装って俺に倒れ込みやがった。
『いったぁい♡』
ハートマークが浮かび上がるほどの甘々ボイスだけでなく、倒れ込み方が最悪にマズかった。
何故なら俺の下半身部分に彼女の胸が覆い被さり、俺の視線の先は彼女の股……ただでさえ短いスカートのせいで、モロ見えの下着が目の前だったんだ……それでしかもあの女、むにゅむにゅと胸を擦り付けてさぁ……もう色々大変なことになったんだよ。
『この恰好……まるでシックス――』
『言わせねえよ!?』
そんなことがあったせいで戦いが大変だった……如何に男として大切なモノを失わないようにするかしか考えてなかった。
それがまさかこの映像……つまりあれだぞ?
俺は今、テレビで大変なことになっている状況を多くの人に見られているわけで……こんなのショックなんかを通り越して恥ずかしさで死ねるぞマジでさぁ!
「……はぁ」
「お疲れ様でした」
番組出演が終わり、帰り支度のため楽屋へ会長と帰ってきた。
本当に……本当に疲れたよ精神的に――会長はずっと目を輝かせて映像を見ていたし、俺の秘密に気付いた人も居なさそうだったのでそこだけは安心だが本当に疲れた。
「すみませんでした正義君……少々眉を顰めてしまう言葉がありました。私が無理に誘わなければ……」
申し訳なさそうにする会長に、俺は大丈夫だと告げた。
「大丈夫っすよ。特に気にすることもないですし、他人に何を言われたところでどうでも良いですから――俺はこれからも自分の仕事をします。変わらず先輩のことも支え続けますから」
「あ……はい!」
ちなみにこの後なんだが、妖狩りという括りではなく麻宮の令嬢でもある会長にお近付きになりたいのかさっきの芸人なんかが近付いた。
しかし、会長は名刺も受け取らなければ何もかもを手にしなかった。
「すみません、興味の欠片もありませんので」
そう言って俺の手を引く会長の姿は堂々としており、全く相手にされずに悔しがる彼らの表情は……こう言ってはなんだけど、ざまあみろって感じではあった。
「良いんですか? あんな風に言って」
「構いません――パートナーをあんな風に言われて気分を害さないなどあり得ないのですから。あなたを侮辱することは、麻宮家に対する挑戦でもありますので」
「うん? あぁはい……ありがとうございます?」
「ふふっ、お礼なんて必要ありませんよ。わたくしたちは互いに迷惑を掛け合ってこそでしょう? 支え合う仲なのですから」
「……ははっ、そうですね」
……う~ん?
なんか妙に話が噛み合ってない感じを抱きつつも、横乳を除けば本当に頼りになる人だ。
……だが、こんな風に立派な人でもドジっ子なわけで。
「あ……」
「ちょっと!?」
テレビ局の出口を前に、何故か何もない所で会長は転げた。
俺はそれを助けるために手を差し伸べたが、当たり前のように手が服の中へと入り込む……横乳を包み込むように手が入り、久しぶりに直で触った感触だ。
久しぶり! そう挨拶をしてきそうなラッキースケベに、だからそういう服装はやめろとまた言ったのは当然だった。
以下は、今回の番組を通しての反応である。
横乳変態エロ女↓
「これで私と彼が夫婦であることを暗に見せられましたね!」
サキュバス系人外エロ女↓
「全く、だから私を頼れば良いのよ――一瞬で快楽の虜にするのに」
幼馴染系エロ女↓
「何があったんだろう……でもやっぱり苦しそうだね。あれはやっぱり私が相手してあげないと!」
淫乱ギャルピンク↓
「あははっ♪ 先輩ったら恥ずかしげもなく見せちゃって……だから言ったんですよぉ~? 録画をする前に抜いてあげますって」
妹系腹黒エロ女↓
「……妹以外であんな風になるのは気に入らないけど、あんなお兄ちゃんもまた良い」
主人公↓
「あいつ……いや、あいつだからこそ何もないってのは分かってる。でも何が起こるか分からないのがこのクソッタレな世界だ――俺ももっと強くならなくちゃな」
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