寝ている姿までエロ過ぎん……ってお前も何してるぅ?
「……俺、どんな風に過ごしてたっけか」
そう呟いたのは、今までの自分を少し忘れたからだ。
というのもこの世界に転生し、守れる力が宿っているんだと分かってから奮闘しまくっていたのは何度も言っていることだが、あまりに一生懸命奔走していたせいで細かいやり取りなんかは覚えていない。
「それもそうだわ……それ以上に最近はもう、エロいことで頭の中が浸食されてるし」
もうね、家に帰っても頭から離れないのはどうかと思うんだ。
特に数日前、愛華の家に行った時に見たモノとかぜ~んぶ記憶に残り続けてやがる。
巨乳美女のバスタオル姿……はぁ忘れらんねえ。
もちろんそれだけじゃなくて他のエロ女たちのこともふとした時に思い浮かべちまうし……はっ!?
「待てよ……あいつらがエロいってのは仕方ないと言えば仕方ないが、こうして勝手に想像してる俺が悪いだけでは……?」
……い~や、絶対にそんなことはない!
でも……こう考えると少し自信を無くしちまうぜ……つうか、俺は別にエロいことをしたくないわけじゃない……むしろしたい!
「そりゃそうだぜ……だって男子高校生だし、一応前世と合わせてそれなりに生きてるわけだし……エッチなこととか興味あるし!?」
これでも伊達にエロい二次創作を大量に漁ってないからな俺は。
色んなヒロインを相手にする作品はもちろん、敵側の妖視点でドロドロに愛し合う作品だって目を通したし……中でも特に輝夜が相手の作品を読んだのは単純に好みだが……とにかく!
そんな風に俺にも興味はある……だが、今となってはそれを彼女たちで想像するのが何とも罪深いというか……守る対象なんだって感覚が大きすぎてだなぁ。
「……………」
でも……それでも考えちゃうわけよ。
だってマジであいつらエロいんだもん。
「……っと、着いたか」
そんな風にどうでも良い……良くはないが考え事をしていたら生徒会室の前までやってきた。
今日も特に会議はないが、会長に呼ばれている。
ノックをしても返事がないことに首を傾げつつ、中に入ると机に突っ伏すように眠る会長が居た。
「……寝てんのかよ」
……ま、会長として色々大変だろうからな。
封妖を纏め上げる会長としてもそうだし、麻宮家の令嬢としても何かを気を遣うことも多そうだから。
「寝かせてあげても良いけど、そうなると暇になるなぁ」
一応、用があって俺を呼んだわけだし勝手に帰るのも気が引ける。
それなら起こして話を聞けばすぐじゃないかって言われるとそれまでだけど、こうも気持ち良さそうに寝ている姿を見せられるととてもじゃないが起こせられない。
「……はぁ」
しゃあなし、起きるまで待つかと俺はため息を吐いた。
だが……俺の視線はある一点に集中する――もはや会長にとってのトレードマークでもある横乳だ。
「ま~じでなんなんこの制服……これがまかり通るこの学校ヤバいし、そもそも他の誰もが気にしてないのも終わってるわ」
これを見ると着崩して上側から谷間を晒すのが普通に思えるぞ……。
さて……俺はそれから数分間、ジッと横乳を眺め続けた……おかしい全く目を逸らすことが出来ない。
これで彼女が起きているなら改めてなんだこの制服は言っているだろうけど、眠っている以上この燻る思いの丈を発散する術はない。
よって、俺にはこの横乳をジッと見つめるしかないんだ。
「……………」
見つめるだけで満足出来るのか……いいや出来ない!
ピッと人差し指を横乳にロックオンし、俺はそんな恰好をしているお前らが悪いんだと、俺を誘惑して狼にさせようとしているのが悪いんだと責任転換をして……いざ突撃!!
……なんて思ったけど、俺は即座に方向転換してソファに置かれている毛布を手にし、そのまま会長の肩に掛けた。
「さてと、大人しく待つとするか」
この空間ではエロい女が寝ているし、香りも甘い。
でもこの静けさが俺を落ち着かせてくれる……ソファに深く座り、スマホを手に時間を潰そうとしたが、そこで更なる来客が訪れた。
「失礼しま……って先輩じゃん! どうし――」
大きな声を出しそうになった淫乱ギャルピンクの口に目掛け、俺は大リーガーも真っ青のスピードで丸めたお菓子の饅頭を投擲した。
淫乱ギャル……桜花は目を丸くして驚いたものの、咄嗟に饅頭を掴んでそのままパクッと口の中へ。
「ちょ、ちょっといきなり……あぁそういうことですかぁ」
「そういうことだ。静かにしろ淫乱ギャルピンク」
「だから淫乱とか酷くないですかぁ? そりゃ、先輩の前なら喜んで淫乱にもなんでもなりますけど~」
ニヤニヤと笑いながら桜花が近付く。
俺の隣にピッタリと腰を下ろしたかと思えば、いきなり胸元のボタンを二つほど外して谷間を見せ始めた。
シャツの下で桜花の巨乳を支える下着の色とかもバッチリと見え、俺は何してんだと即座に視線を逸らした。
「ねえせんぱ~い♪ 狼になっちゃいそうですかぁ?」
「……………」
「ほらほらぁ、我慢は体に毒ですよ~? 私と先輩の仲ですし、私は一向に構いませんけどねえ!」
「があああああ! てめえいい加減に!」
「大きな声出すと白雪先輩、起きちゃいますけど~?」
こ、こいつはあああああああああああっ!!
まるで眠る会長を盾にするように、俺に対して有利に立つクソギャルはそのままもっと俺との距離を詰めてくる。
「ふふん……ねえせんぱ~い、狼になっても良いんじゃないですかぁ?」
上目遣いなその様子は、正しく漫画の彼女を彷彿とさせる表情だ。
まだお前の中に妖が寄生してんじゃねえかと一回か二回頭をぶっ叩いてやりたくなるが、流石にそれはしない……代わりに、改めてちょっと確かめてみよう。
「動くなよ淫乱ギャルピンク」
「っ!?!?」
スッと、桜花の両頬に手を置いた。
驚きに目を見張る桜花にグッと顔を近付け、その瞳を覗き込む……段々と近付けば近付くほど、その瞳の奥が見えてくる。
……うん、やっぱり何も居ないな分かっていたけど。
「先輩……♪」
「おい、目を閉じるな。もっとお前の目を見せろ」
「ひゃ……ひゃい」
それからしばらく、目に魔力を込めながらじっくり観察し……当然だが桜花は普通に人だった。
……っと、ついその気になって真剣な空気を出しちまった。
ただ、これでその後は桜花が大人しくなったから良かった……あのまま続いていたら俺は間違いなく狼に変身していただろうたぶん。
「……あのぅ先輩?」
「あ?」
「もしかして狼になっちゃうとかって全部演技とか……今までのちょっと近寄りがたい雰囲気を和ませようってオチじゃないですよね~?」
「何言ってんの?」
「だってさっきの……さっきの数カ月前の先輩ですもん! 黙々と任務を熟したり、時に熱くあたしたちを導く先輩でしたもん! 絶対そうだあたしたちを期待だけさせてペッてするんだ!」
「だから何言ってんだよ……」
「あたしのことなんて全然えっちぃとか思ってないんだ!」
「思ってるよエロ過ぎるだろ犯罪的だろお前の体!」
「じゃあもっとあたしのこと淫乱って言ってくださいよ~!!」
「淫乱! 淫乱ギャルピンク!」
「……クセになりそ」
しばらくして、俺たち何やってんだと正気に戻ったのは言うまでない。
▼▽
元々、妖狩りとその敵である妖の間には隔絶された力量差がある。
下級妖は弱いが、中級妖になれば戦力は跳ね上がり、上級妖ともなれば死を覚悟せねばならず、最上級ともなれば災厄レベル……戦うこと自体から逃げた方が良いとされるほど。
よって上級妖と遭遇し勝利の見込みがない場合は、とにかく自分が助かることを優先し……無理そうならば諦め、時に見捨てるというのが妖狩りの在り方だった。
『助からないと分かれば見捨てる……ですか』
『あぁ、それが妖狩りの在り方だ』
彼女は……白雪はその現状が許せなかった。
仕方ないと分かっている……そもそもそれなら、そんな死地に向かう必要もないではないかとも思う。
だが向かわなければならない……何故なら、戦わなければ被害は広がるだけだから――戦いの中で傷付き、戦いの中で死ぬ。
それが妖狩り……それが力を持った者の宿命。
『一般人を助けることと、戦友である妖狩りを救うこと……ここに一体何の違いがあるのでしょうか……?』
それはずっと、白雪の胸に燻り続ける疑問だった。
生徒会に入ってから白雪はずっとその疑問を考え続け、そしてそんな彼女の転機は二年の頃――一人の少年が生徒会に入ったことだ。
『救世正義です。よろしくお願いします』
パッと見た印象は普通だった……だが、その身に秘める力の強大さに白雪は気付いていた。
ただ、当時から正義は当時の三年生たちとの相性がすこぶる悪く嫌われており、しかも妖狩りとしての戦果があまりに華々しいこともそれに拍車を掛けていた。
『彼はどうしてあそこまで……いえ、考えるまでもありませんね。わたくしは先輩として、彼を見守らなくては』
それが先輩として後輩にしなくてはならないことだから。
妖狩り同士にとって見捨てるという行為は通説のように教えられていくのだが、白雪はそれを是としたことはない――正義ら後輩が出来たことでその気持ちは更に強くなった。
『救世、何故そうも命令を聞かない? 貴様は組織というものが分かっていないのか?』
『分かってますよ? 組織だからこそ助け合おうとしているんです』
『それが必要ないと言ってるんだ』
『なんで必要ないんすか? つうか戦っている場所から離れたところで指示出すだけの臆病者の言葉なんてどうでも良いっす』
『貴様あああああああああっ!!』
なんて、そんなやり取りも珍しくなく……その度に白雪はオロオロとしてしまうが、正義の在り方を好意的に受け取っていた。
あまりに尖ってて暴れまくっている正義だが、意外と話をすればユーモアある返しもしてくれて……それこそ、麻宮家の令嬢として過ごしてきた白雪にとって初めて出来た親しい相手で、年下なのにどこか年上のようにも思える不思議な魅力も備えていた。
『わたくしは……まずこの学校からでも、妖狩りの在り方を変えたいのです。見捨てるようなことはしない……たとえ無謀でも助けたい、それこそが仲間だと思っていますから』
『良いんじゃないですか? そういう考え俺は大好きです――ですけど先輩、そう考えるだけじゃ何も変わらないですよ。理想論や願望を口にするだけなら誰にも出来る……結局、それを実現するために行動出来るかどうかでしょう』
それは耳の痛い話だったが、白雪の心に火を付けるには十分だった。
三年になったら必ず生徒会長へと就任し、妖狩りの在り方を変えると白雪は宣言したが、それを聞いた正義はこう言ったのである。
『なら先輩、意外とすぐ生徒会長になるかもしれないです。そうなったらよろしくお願いします』
そんな軽いやり取りから少しした後、三年生が全員生徒会から脱退させられたことで白雪が生徒会長の座に就いた。
きっかけは正義が色々と暴れたわけだが……しかし望んでいた席とはいえ不安でいっぱいだった白雪。
『大丈夫ですよせんぱ……会長。俺が暴れた結果でもありますし、本来より早くその座に就かせてしまった責任もあります。俺がずっとあなたを支えますよ――白雪会長が卒業するまで、何があってもあなたの傍であなたを支えますから……へへっ』
だから頑張れと、少し投げやりだったがクソガキのような眩しい笑顔に白雪は頷いた――この瞬間、白雪にとって正義はこの学校で誰よりも信頼出来る後輩になった。
そして、そんな白雪の心が完全に変わったのはあの時……正義の妹と共に助けられた時だ。
『言ったでしょ、支えるのってのは助ける意味もありますから。じゃ、帰りましょう――俺たちの帰る場所へ』
何をするにも、正義はイケメンすぎた……少なくとも白雪の目からそう見えた。
だから彼が気になって仕方ない。
「先輩はどこか会長に甘くありませんかぁ?」
「んなことねえよ。あんな横乳出すエロ女に甘いとかさぁ!」
全部、白雪には聞こえていた。
起きたのは桜花がやってきてからだが、そこからの会話のほとんどを白雪は聞いている……かつて、聞き間違えじゃなかったかと思った正義の言葉も、全て本音だとここで分かった。
あの魅力溢れる後輩が、ずっと支えてくれると言った彼が白雪さえも意識している……それが白雪にとって嬉しかった。
「……うふっ♪」
表情を隠しながら、白雪は笑う。
必ず……必ずあなたを手に入れてみせますと小さく呟く――そんな彼女だが、とあるものを既に用意している。
それは婚姻届け……後は正義のサインさえあれば全てが決まる契約書。
(ずっと支えるって言ってくれましたもの……それはつまりこう言うことで良いんですよね?)
……この女、完全に卒業までずっと支えるの部分を改変してしまっていた。
まあある意味、これもまた正義に対する
【あとがき】
悲報、手が止まらない。
感想等お待ちしてます!
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