先輩も後輩もエロ過ぎる勘弁してくれ
俺の通う高校――
日本全国にこういった高校はあるが、俺が通う封妖には主人公を含めヒロインたちが全て在籍している。
つまるところ、原作の舞台ということだ。
原作のストーリーが始まってからは自重することなく大暴れした結果、この高校で俺の名前はかなり広まり……今となっては主人公たちと共に英雄のように慕われることもある。
(……んなことはどうでもええねん)
そう……そんなことはどうでも良いんだよ。
俺がどう呼ばれていようが、どんな風に慕われていようが、どんな噂を立てられていようが凄まじくどうでも良い。
今はそれよりも、この空間をどう耐え抜くかが重要だ。
「最上級妖が消滅したとはいえ、まだまだ油断を許さない状況なのは確かです。こうしている間にも、妖は産まれ続けているわけですから」
主人公やヒロインたちと固い絆を結んだからなのか、とにかく救済しまくったからなのか俺は生徒会に所属している。
もちろん主人公やヒロインたちも所属しているため、現在会議が行われているこの生徒会室にはエロい女たちが集まっている……あぁそうだよ正直に言おう――右を見ても左を見ても、見渡す限りにエロい体を持った女ばっかりだ!
(……くそっ、今まで全然気にならなかったのに!)
よくもまあ今までずっと、この中に居れたものだと自分を褒めたい。
相対的に女子の数が多いというか、そもそも男は俺と主人公しか居ないのもあってバランスが悪すぎる。
主人公のみに許されたハーレム空間だが、本来なら主人公を含めてここに居る全員が死ぬはずだったのだから本当にこの世界は終わっている。
(良い匂いもするし声にも色気を感じるし、つうか何だよお前らの体本当にどうなってんだ!)
高校生の発育という概念はどこに行ってしまったんだと、論文で発表出来るくらいの謎がこの場にはある。
三年の先輩や二年の同級生、一年の後輩に至るまで化け物クラスのスタイルだ……クソがっ! 欲情しないように耐えている俺を貴様らは嘲笑ってんのか!? つうかなんでボタン外して谷間見せ付けてんだよ! 生徒会長に至ってはなんで横乳見せてんの!? 設定では改造制服って説明されてたけど既に頭の中改造されてんじゃねえのか!?
「さて、正義君」
「……うっす」
「あら、元気がありませんね?」
そっすね、下半身に元気を吸われてるせいかもしれません。
なんて冗談はさておき、声を掛けてきた生徒会長――
例によって例のごとく彼女も殺されるはずだったが、もちろん俺がそのピンチを悉く振り払った。
「何か悩みでもあるのですか? 他ならないあなたのことですし、わたくしで良ければ相談に乗りますが」
「でしたら会長、俺にあまり見せ付けないでください」
「見せ付け……?」
何を言ってるんだと、彼女はデカい乳を持ち上げるように腕を組む。
腰ほどまである白銀の髪は綺麗だし、流石名家と言われる麻宮家のご令嬢と言いたいところだが、行動の節々でエロい動作を混ぜるのは勘弁してほしい……てかそうじゃなくて、今だからこそ俺は言わないといけないかもしれない……いや言おう。
「会長、なんで胸見せてるんですか?」
「……はっ? いきなり何を言ってるのですか?」
「はっ? なんで首を傾げてんですかねぇ? なんで、そこを見せてるんだって俺は言ってるんですよ」
俺が指を差したのは脇と胸の間……つまり横乳だ。
「なんでってこれは制服ですから……あの、あまりジッと見つめられると照れるのですが……」
「なんでそこで照れるんだよおかしくねぇ!? まずはそういう服をチョイスした時点で自分の判断に羞恥を抱けよ!」
突然の奇行に、この場に居る全員が唖然としているがそんなことは知ったことじゃない。
主人公や愛華……愛華に関してはあまり驚いた様子が見えないが、それでも俺はもう我慢ならん!
「かいちょ~、たぶん正義先輩は退屈な会議続きで疲れちゃったんだと思うのですよ~。つうわけで今日はお開きにしませんか~」
「神聖な会議を退屈などと……! いえ……確かにそうかもしれません。他ならない彼がこんなおかしなことを言うのですから」
俺はおかしくないだろ!?
つうか前から思ってたけど、なんでこの服にこいつらは一切の疑問を抱かないんだ……? まさかおかしいのが俺だって言うのか!? こういう服のせいで以前にラッキースケベが発動して、俺の手がヌルリとこの中に入り込んだ悲劇的事件が起きるんだろうがああああああ!!
その後、いつもより早く会議は終わったので即座に生徒会を出た。
「せんぱ~い! 待ってくださいよ~!」
「待たねえよ淫乱ギャルピンクがよぉ!」
「い、淫乱って何ですか酷い!」
振り向くと、顔を真っ赤にしてちっこい女子が頬を膨らませている。
とはいえこの子のおかげで会議が早く終わったようなものなので、あまり言いすぎるのもダメだな……ふぅ落ち着け俺。
(……はぁ、こいつもこいつでエロくてダメだわ)
ピンクのツインテールで背が低く、童顔ということで見た目からも後輩キャラ感が漂う彼女は
彼女もヒロインの一人であり、ストーリー開始時点で植物型妖に寄生されていたのもあって後に裏切る女の子。
最後は見るも無残な文字通りの植物人間に成り果てて死ぬはずだったのだが、俺の最強パワーでなんやかんや流れに任せて助けた。
それからというもの学校で見かけてくるたびに、低い背にアンバランスなデカ乳を揺らして近付いてくるだけでなく、一瞬の隙を突くように抱き着こうとするのだから要注意すぎるエロ女だ。
「それよりも一緒に帰りましょうよ~」
「嫌だ、俺は一人で帰る」
「なんで~!」
なんでもクソもあるか!
放課後に一緒に下校とか恥ずかしいだろうが! 妖という化け物が存在することを除けば、それ以外は果てしなく普通の世界。
ということはただでさえ目立つ見た目をする彼女たちだからこそ、変に噂を立てられたら困るってのが分からないのか? 俺は何を言われようと気にしないが、女の子だからそういうの嫌だろうがよぉ。
瞬足を活かして教室に戻り、鞄を背負って生徒玄関へ一目散……だがそこに桜花は居た!
「あ、来ましたねせんぱ~い!」
「……なんでお前の方が早いんだよ」
「ふふっ、速度だけなら先輩よりもあたしの方が速いですよ~」
ニヤリと笑い、オタクに優しいギャルを演出するかのように近付く桜花を俺は制す。
「桜花、お前はエロ過ぎるんだ」
「……せんぱい?」
「なんだその童顔の癖にエロい雰囲気は。なんだその背に見合わないデカい乳は。なんだその短すぎるスカートはパンツ丸見えだろうが!」
「な、なななな何を言ってるんですか~!」
「手で隠すくらいなら最初からちゃんとしとけよ! 俺はなぁ! 今まで我慢してきたんだよ! 俺に後輩に襲い掛かるクソ野郎なんて称号を与えたくなかったらこれ以上俺を刺激すんじゃねえ!」
……ふぅ、ちょっと落ち着いたぜ。
周りに俺たち以外誰も居なくて良かったと安心したが、流石に突然のことで桜花は口をポカンと開けて固まっている。
だがそれもちょっとだけ……桜花は何故か微笑んだ。
「せんぱ~い♡ そういうことだったんですね~……うふふ~」
「……なんだよ」
「つまりせんぱいはぁ~、あたしがエロくてたまらないから襲いたくなる衝動を必死に抑えてるってことですよね~」
そう言って桜花は勢いよくシャツのボタンを外した。
ブルンバスト! そんな効果音が聞こえてくるかのように露出された胸部を見せ付けてくる桜花に、俺はもちろん大声でこう言った。
「やっぱり淫乱ギャルピンクじゃねえかこの野郎がぁ!!」
ちなみに、淫乱ギャルピンクというのはストーリー上で主人公に対しとにかくエロいことをしようとしたからである。
それが寄生されていた影響なのかは知らないが……って、そんなことはどうでも良い!
「おま、この世界がそういう世界だからってやっていいことと悪いことがあるだろうが!」
下着があったとはいえ、躊躇いなく見せる時点で桜花はやっぱりそうなんだ……危険だ……こいつが傍に居たら、俺は自分の意思に関係なく狼になりそうな気がする。
逃げる……しかねえ!!
▼▽
「あ、行っちゃった……」
あっという間に姿を消した正義。
桜花はすぐに胸元のボタンを留めようとしたが、あまりに立派過ぎて簡単にボタンは止まらない。
「……ふぅ、よし!」
しっかり止めた後、大きく深呼吸をしたらパーンと音を立ててボタンが飛んだ。
「あぁもう!」
桜花はボタンを拾い、また帰ったら縫わなくちゃとため息を吐く。
しかし、そんな彼女の視線はすぐに正義が消えて行った方角を見つめて固定された。
「正義先輩さぁ~、ずっとそうだったのかなぁ~」
初めて、彼からエロいなどと言われた。
そのことに驚きは確かにあったが、それ以上に言いようのない幸福感のようなものが胸の中に染み渡る。
「女として意識してくれてるんだね~」
クスッと笑った桜花は過去を思い返す。
かつて植物型の妖に寄生されてしまい、自分の中の全てが汚されていく感覚をずっと味わっていた。
しかし、そんな桜花を救ったのが正義だった。
『よお、助けに来たぞ桜花』
既に意識は朦朧とし、妖に寄生されていたのを裏付けるように桜花は見るも無残な姿だった。
体のありとあらゆるところから触手のような根と、美しくも男を吸い寄せる香りを放つ花が咲き……とにかく、どう見ても普通の状態ではなく人間として見られるかも怪しかった。
『言ったろ? 生徒会にお前が入ってきた時点で、何が何でもピンチになったら助けるってよ。先輩ってのは後輩を助けるもんだし、迷惑を掛けられても笑って受け流すもんだ。もちろん限度はあるけどな?』
正義は桜花を安心させるかのように笑うだけでなく、そっと体に触れて撫でてくれた。
妖のせいなのか、化け物の姿になったからなのか分からない……相手が正義だからなのも分からなかったが、触れられただけで桜花は全身の木々を揺らし喜びを表したほど。
『本来ならそうなる前に助けてやれりゃ良かったんだけど、その姿にならないと妖が表に出てこないからな。でも今ならお前から完全に妖を引き剥がすことが出来る』
何を馬鹿なことを、内側に寄生した妖が馬鹿にしていたのも桜花は覚えているし、直感で切り離された瞬間……正しくは自分と一体化する妖と感覚が全て繋がっているので、妖が死ねば自分も死ぬと分かっていた。
しかし、そんな直感が嘘だったかのように……眩い光に包まれたかと思えば、桜花は正義にお姫様抱っこをされていたのだ。
『あ~……まあお前の中の妖に気取られないように言わなかったけど、全部知ってたよ。それでもお前から離れなかったのは仲間だから……大事な後輩だから……守りたい大切だから』
照れ臭そうにそう言った正義の表情を桜花はずっと覚えている。
それからというものの、桜花はずっと自信を無くす日々だった……何故ならどんなことをしても正義は反応しないだけでなく、全くドキドキしてくれる様子さえない。
「……あはっ♪」
しかし、それは嘘だった。
正義は桜花に女を感じている……それが分かっただけでも桜花には十分すぎた。
「逃がしませんよ、せんぱ~い♡」
これもまた、バッドエンドをぶん殴った正義への
【あとがき】
なんか書くの凄い楽しいので続きを投下。
ただやらないといけない仕事の合間なので……ですが、結構面白いと言ってもらえているのが凄く嬉しいです。
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