第11話

俺達は、【ヨルダンの血溜まり】へ着いた。


「不自然な程静かね」


マチが緊張を含んだ声を発した。


「そうね、ここがこんなに静寂に包まれることなんてありえないわ」


(確かに、前世でもそうだったな)


「待っていたぞ…ネズミ共」


図太い声が聞こえ振り返るとそこには二人いた。


「ウルリ!!」


「あ、姉貴……」


弱々しい声だが意識はあるようだ。


「セル…あなた、どこまでも下種ね!」


「当たり前だ、俺は悪党なんだからな」



ムカつくにやけ顔でセルは、ナナリー先生の煽りを返す。


「何で、家にいたウルリがここに…パパとママは無事なんでしょうね!!」


「ああ、無事だよ。何故ならお前とこの娘が死ねばあの親達は地獄に突き落とされ

るからな」


「…!!」


マチが歯ぎしりをする・


「もう、あなたと話すことは何もないわ。私の全てを掛けてここで殺す」


「おやおや、教職に就いている人間がそんな物騒な言葉を…!!」


セルは驚きの顔を浮かべる。


人質にしていたウルリが俺の元に居るからだ。


(いつの間に、全く見えなかったぞ!!)


「セル、油断するなよ」


俺は忠告する。


マチとナナリー先生が同時に攻撃を仕掛けた。


マチの炎とナナリー先生の風が合わさり凄まじい攻撃力を発揮した。


「くっ!!」



セルはなんとか避けたものの左腕が切断された。


「セル、あなたの悪事もここまでよ!!」


普段、感情を露にしないナナリー先生が珍しく声を張り上げた。


「この程度の攻撃で自惚れるなよ」


セルの腕が能力により復活した。


「ナナリー、随分威勢がいいな。俺の人形遊びにあっさり引っかかった間抜けが」


「!」



「お前は絶対に手放さないぞ!ナナリー!!」


ナナリー先生に対して執着ともいえる言葉を吐き、魔力を解放した。


ズゴゴゴ!!


セルはマチと闘った時と同じように巨大化した。


「巨大化したところでまた尻もちつかせるだけよ」



マチは強気な言葉を吐く。


「赤髪の娘、お前と闘った時俺が本気を出していたと思うか?」


「!?」


更にセルは巨大化した身体を10体まで増殖させた。


「そ、そんなそこから増殖させるなんて!」


(ほう、中々の練度だな)


「マチさん、落ち着いて。私と貴方の力を合わせれば勝機はあるわ」


絶句するマチをナナリー先生は諫める。



「風の鉄砲玉(ウィンビー)!!」


先生は無数の風の玉を射出した。


「!そういうことね、炎の装飾(デコレーション)!!」


風の鉄砲玉をマチの炎で規模と威力を大きくした。


「甘いな」



セルの分身体は腕を盾に変形させ攻撃を凌ぐ。


「まだよ!マチさん!!」


「分かってるわよ!!」


巨大な炎の竜巻が続いて襲う。



「フライングモード」


セルの分身が背中から翼を生やし上空へ飛んで攻撃を回避した。


「巨大化して増殖してその上で翼まで生やすなんて…」


「どんだけキャパがあるのよ、こいつ!!」


マチとナナリー先生は強い。だがセルは能力を極めていると言っていい。


「今度はこっちからいくぞ!!」


セルとその増殖が仕掛ける。


ドドドドオオオオン!!


(また、あのガキか…)


「何度もごめんね。アルバス君」


「いいえ」


みんなを瞬間移動でセルの攻撃から避けた。



「めちゃくちゃな奴ね。さっきの攻撃でこの一帯の森林が剥ぎ取られたわ」


マチの言う通りこれ以上の攻撃は周りの被害が大きい。


「おい、お前はコロシアムにいたあのチビだな?」


セルが俺に問いかける。


「ああ、ちょっと色々あってね」



「お前は只者ではない。技の種類、威力」


「どうしたいきなり独り言か?」


何か考え事をしているようだ。


「…ゴトリー・モールの血筋か?」


(違う、が的外れではない。というか本人だし)


見た目に関わらず意外と鋭い奴だ。仕方ない。

「何を言ってるの!?アルバス君が…」


ナナリー先生の言葉を手で遮る。


「セル、今度は俺が相手だ」


「……」


「安心しろ。ちゃんと楽しませてやるから」





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