第10話

ブラス病院は一見街にとけ込んだ、地域密着型の様なそれ程大きくない所の様に思われるが地下はアリの巣の様な複雑かつ広い造りなってる。


「ナナリー・ポートマンよ。ドラコの見舞いに来たわ」


若い看護師に告げた。


「どうぞ、こちらへ」


奥へ通され、カーテンの後ろに隠れた扉を開きそのまま下って行った。


「本当にこんな所あるのね」


マチは感心したように言った。


「おい、マチそれは今更だろ。俺達はあんな血生臭いコロシアムで戦ったばっかりなんだから」


「あんたと違って私は情緒が豊なのよ。それよりここ辛気臭い場所よね。本当に病院?」


(確かに。ここは、随分陰気になったな)


前世の俺がいた頃は清潔で裏社会の特有の陰鬱さなどはなかった。


「知ってる?この病院はあのゴトリー・モールが建てたのよ」


「!あの世紀の大悪党が何で病院なんかを?まるでイメージがつかないわ…」


「どうやら人体実験の為らしいわよ」


(違う。人体実験の場所はここじゃない)


まあ。噂の正確さなんてそんなもんだ。


「ここよ」


ナナリー先生に案内され、扉の前に着いた。


狭い部屋にベッドが一つ、そこには一人に少年が目を閉じていた。


背は180程あるガタイの良い体格をしている。


「彼がドラコ?」


マチが尋ねる。


「ええ」


俺は、ドラコに触れた。


「何してるの?アルバス」


(ああ、そういうことか…)


俺は、真実が分かった。


「……先生、あなたにとって酷なことを言わなければなりません」


「酷なことって?」


「これは分身体です」


「分身体?…何を言ってるの?」


ナナリー先生は意味を理解してないようだ。


「マチ、お前が昨日戦ったセコンド・セルお能力を覚えてるか?」


「ええ、肉体操作の能力でしょ?現に体のサイズを大きくしたり身体能力を強化し


たりしていたわ」


「違う。奴は細胞を操作する能力だ」


「「!!」」


細胞操作はレアな魔術だ。見分けられなくても仕方がない。


「そもそも、肉体操作程度ではあんなでかいサイズまで体は大きくすること不可能

だ。肉体操作の真髄はあくまで身体の強化であり、セルの力は明らかにそこから外

れていた」


「細胞操作…分身体…まさか…」



ナナリー先生は察したようだ。


「そう、ドラコはセルの細胞で作り出した分身というわけさ」


「そんな!!」


マチは驚愕する・


「でも何でドラコがセルの細胞だってあんたに分かるのよ」


「マチ、感じないか?こいつ、俺達がここに入ったときから殺る気満々だぞ」



「なっ!」


その時、ドラコの身体が躍動し、その手は鍵爪となり俺に襲いかかった。


ドシュッッ!!


ドラコの首は血しぶきと共にはねられた。


刎ねたのはナナリー先生だ。


「アルバス君、真実を教えてくれてありがとう。でも、これから先は私一人でケリつ

けるから大丈夫」



「何かっこつけてんのよ!あんた一人でどうにかなるわけないでしょ!」


マチの言う通りだ。


「これは先生一人の問題ではありません。マチの妹も被害に遭ってる。責任を取る気

なら事が終わった後だ」


「でも、これ以上生徒を危険にさらすのは…」


「大丈夫ですよ。こういった事は慣れてますので。だろ?マチ」


「子供だからって舐めないでちょうだい!」


「…分かったわ。でも無茶だけはしないで。約束よ」


俺達は、セルがいる場所【ヨルダンの血溜まり】へ赴くことにした。






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