第6話 片鱗を見せる

俺達は、雑に放り投げられ目隠しを外された。


そこは、薄暗く辺りを見渡すと俺とマチと幾人かのプレイヤーと思われる者がいた。


「ここから生きて出たいか?」


一人の男が問いかける。筋肉隆々の長身の男だ。俺はそいつが下っ端ではないことを見抜いた。


「ここはどこだ?」


「質問に質問で返すな!」


男は、俺に平手打ちを喰らわせた。


「!あんた、こんな卑劣な事を子供達にやらせてどういうつもり!?」


マチが男に向かって吠えた。


「ほう、その物言いからしてお前らはここがどういう所か分かってるな?」


「知ってるわ!だからあんた達を焼き尽くすためにここに来たのよ!!」


「俺達を焼き尽くすだと?」


男は、冷笑した。


「お前達は魔力を使い果たしている。つまりここのルールに従わざるをえないわけだ」


「くっ!!」


「ルール事態は単純だ。連続で三人に勝ち抜ければそれで一日は終わりだ。それを、100日間連続で勝利を重ねればここから出られる」


「そんなことできるわけが…」


「ああ、大概の者は途中で命尽きるよ」


俺の時は、1000日連続だったな。それをクリアしたのは俺だけだったが。


「精々、生き残れよ。でなけりゃ俺達を焼き尽くせないからな」

中々、いい悪役ムーブをする。


早速、俺がリングへ駆り出された。


あの頃と別にデザインは変化がない。


魔法を使って暴れられような十分な広さがあり、そこから観客達が見下ろす。


(懐かしいな、俺もここでよく暴れてたっけ)


前世の俺は見てるだけでは飽き足らずここでプレイヤーとして参加し、相手だけではなく観客達も殺していた。それでも見に来る人達は後を絶たなかった。


「今日もまた鮮血に塗られる!さあ、ろくでなしの金の亡者共!財布の底が空くまで掛けろ!」


(あれ?どこかで聞いたことのある声だ)声のする方向に目をまさかの現実を目にす


(ナナリー先生!?)


俺の担当をしているナナリー先生がこの闘技場を執り仕切っていた。


(意外とエロイスタイルをしているな…)


普段のお堅いイメージから想像できないスケベな服を着ている。


シースルーのシャツとミニスカート。


そこから黒のブラジャーとパンツが見える。


後、着やせするタイプなのだろうか、中々の巨乳だ。


それでいてくびれは細く、丸尻が強調されている。



「まず一回戦は、鏡面のロウシ対!!……」


先生の言葉が詰まる。それもそうだろう。まさか、学園一の落ちこぼれが参加してるとは思うまい。


「アルバス・ボルグ!」


精一杯の声を張り上げた。

出てきた相手は身長190はあろう大男だったが、年齢は俺とそんなに変わらなさそうだ。


「おい!あんなチビガキにロウシの相手が務まるのか!?」「いや、俺はあえてあのチビに賭けるぜ」「あ~あ、こりゃ血なまぐさい戦いになりそうだな」


観客共の無責任な声聞える。


(これだから成り上り共は鼻につく)


いちいち腹ただしい。


がこのスタジアムを造った俺がそんなことを思う資格はないだろう。


「試合始め!!」


ナナリー先生の開戦宣言と同時に鐘の重い音がスタジアム全体に鳴り響いた。


「大丈夫だ。ちゃんと手加減してやる」


俺は相手に安心させるのが目的だったが


「はあ!?てめぇ、このクソガキ舐めてんのか!!手加減してやるのは俺の方だ!!」


(ああ、失念)


そうだ、俺の今の姿を見れば怒るのは当然か。


それより、ナナリー先生の方に視線を向けてみた。


先生は、両手を祈るようにしておりその顔はとても不安そうな表情だった。


(やはり先生も不本意なことらしいな)


「何よそ見してやがる!“鏡の雨(ミラーレイン)”!」


相手が鏡の雨を頭上に降らしてきた。


(中々、容赦の無い技だ)


「“白銀の砂(サー・シルド)”」


俺は防御魔法を発動し、全ての鏡を白い砂に変えた。


「なっ、何だと!?」


「悪いな。この姿だとうまく魔法が使えないだ」


「!!」


俺は、砂を操り拳の形を象った。


「大丈夫だ!運が良けりゃ死にはしねぇよ!」


ドン!!相手は場外へ吹き飛んだ。


「……」「………」


観戦してる奴らは開いた口が塞がらない様子だ。


「い、一回戦はアルバス・ボルグの勝利!!」


「「うおおおおおお!!!!」」


歓声がこだました。


「おい、あのガキが何者か調べろ」


さっき、アルバスに平手打ちをし、マチを挑発した男だ。


この男の名前はセコンド・セル。


死への旅(デストリップ)”の幹部の一人だ。

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