第4話  四人の魔女

【ヨルダンの血溜まり】は前世の俺が造った。用途は今と大体同じだ。金を持て余した奴らや裏社会の連中、死への旅(デストリップ)”の組織メンバーが賭け金を投じていた。ただいくつか異なることがある。


まず、一つはプレイヤーはどちらかがが死ぬまでやる。倒れるだけで勝負を決したりしない。

二つは、魔力の強い子供達だけではなく大人や老人達も殺し合わせた。そこ、ヨルダン闘技場ではプレイヤー達の血は池の様に溜まったことから【ヨルダンの血溜まり】と呼ばれるようになった。


「どうした?アルバス。難しい顔をして」


「いや。それよりお前の妹の行方を探そう。ヨルダン地区ならこの街の隣だ」


「捜してくれるの?」


「当たり前だ。お前にはいつも修行の相手をさせてもらってるからな」


「それと、セクハラもね。言っとくけど、あれ他の女の子だったら絶縁ものよ」


「フン」


「でも…ありがと」


礼を言われる資格はない。これは、俺が撒いた種だから。


「でも、探すのは下校してからにしましょ。ただでさえあんたは魔術の授業は大事にしなきゃいけないんだから」


「一言余計だ」


とりあえず、俺達は学園に登校することにした。


―俺達は学園に着いた。このセンテンス学園は国一魔法学校で能力があればどんな者でも入学できる。


「おはよう。アルバス。相変わらずマチと仲いいわね」


挨拶してきたのは、チェリー・スモール。

ピンクの髪をした全体的にスレンダーな少女で、センテンス学園の風紀委員長だ。


「チェリー。マチとはお前が思ってるような関係ではない」


「節度のある関係を心掛けてよね。この学園の風紀を乱すことは風紀委員長として許

さないわ」


「話聞いてたか?」


チェリーは、思い込みが強く人の話をまともに聞かないことがある。


「あら、チェリー。私には挨拶がないの?風紀委員長ともあろう人がもしかして無視?」


「マチ。あなたは一言が多いわね」


「挨拶は?」


「何故、あなたに催促されなければならいの?」

マチとチェリーは、犬猿の仲だ。


「そんな事より、アルバス。放課後に私と修行しない?今日は、風紀委員の活動もないから」


「悪い、放課後はちょっとマチと用事があるんだ」


「マチと?」


「ああ」


「用事ってなに?」


チェリーの声が低くなった気がした。


「そんな事あんたに教える義理はないわ。私とアルバスの、二人だけの用事よ」

マチは、二人だけのところを強調していった。


「…風紀を乱すことは許さないわ。マチ」


「学園内ではちゃんと風紀を守るわ。でも学園外ではどうかしら」


「……」


チェリーの顔が怖い。とりあえず、俺は二人から離れた。


「無駄にただっ広いから教室に行くまでしんどういな」


「おお、マーガレット様だ」「今日も気品に溢れてるな」「そりゃあ、俺達とは生まれが違うからな」「本当に可愛いよな」


男女問わず視線が一人の少女に注がれる。

彼女の名前は、マーガレット・レンジャー。この国、センテンス国の王の娘である。

セミロングの金髪に美男子にも見える中性的な美しい、というより人形の様にかわいらしい女性だ。

マーガレットは、俺を見るなり駆け寄ってきた。


「やあ、アルバス君。今日の調子はどうだ?」


彼女は、どういうわけか俺によく話しかけてくる。きっかけはよく分からない。


「まあまあですよ。マーガレット先輩」


「そうか。なら今日の調子は良好という事だな」


「そうなんですか?」


「ああ、君の事は君自身より知ってるよ」


マーガレットは俺より一つ上の先輩だ。容姿もさることながらその地位に見合った

力を持ち、このセンテンス学園最強とうたわれている。そんな彼女は男女共の憧れの的だ。


「くそっ、なんであの落ちこぼれがマーガレット様に気に入れられているんだ?」


「全くよ。きっと何か弱みでも握られてるんだわ」


あることない事を言われているが、まあそんな言は前世でもよくあったことなので気にしていない。

「君達、憶測での物を言うのはよしなさい。それと、人様に対して落ちこぼれなだと

言うな。彼は、才能に溢れている」


マーガレットが俺のために反論してくれた。


「も、申し訳ございません。マーガレット様」


気まずい雰囲気が流れる。


「しかし、彼らの言う事も一理あります。マーガレット様」


凛とした声から気の強さを感じる。

黒い髪をなびかせ、学生のふんわりとした雰囲気を感じさせない。

そこにいるだけで緊張感を漂わせる。


彼女の名は、ルキア=ジョトル。マーガレットと同学年でセンテンス国王に仕える騎士団長の娘である。よくマーガレットとつるんでるのを見かける。


「ルキア。あなたまでそんな事を言うのはよしなさい」


「ですが、センテンス国王の娘ともあろう方が、学園の落第生と気をよくするなど。もう少し人を選んでください」


ルキア=ジョトルは、俺の事を毛嫌いしている。

まあ、落第生が自分の仕える王の娘と馴れ馴れしくされのは心良く思わないだろう。


マーガレット・レンジャー

ルキア=ジョトル

マチ・ハンター

チェリー・スモール


この四人は学園内でも傑出した魔力を持ち、そしてその美貌から彼女らは生徒、教師から一目置かれている。

そいて彼女たちの先祖は、俺を打ち倒した。

まあ、別に恨んではないが。


「マーガレット先輩、俺行きます。授業に遅れるんで」


「すまない。アルバス君。ルキアが心象を悪く言うようなことを…」


「別に気にしてませんよ」


俺は、教室に向かった。

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