第3話ホントにゴメン
一「悪い、マチ」
「もう、いいわよ。でもこれから毎日修行しなさい!あんたは才能あるんだから」
「ああ」
(毎日、触手プレイしていいのか…。こいつ結構ムッツリだな)
身体の方は元に戻った。どれ位で戻るか良く分からない。
そして、人攫い共は憲兵隊に引き渡した流れで俺とマチはそのまま別れた。
俺は、帰途に着いた。
「お帰りアルバス。今日もマチちゃんと修行?」
今の俺の母親と呼ぶべき女性だ。艶やかな黒髪をした聡明で、美しい母親だ。俺の容姿は母親譲りだ。
「ああ。途中で人攫いに遭ったけどな」
「えっ!ちょっと、大丈夫なの!?」
「まあ、マチちゃんがいるんだから大丈夫だろ」
心配する母をよそに、父親と呼ぶべき男性がつぶやく様に言った。
眼鏡を掛けたいかにも真面目そうな、実際真面目な男性で職業は医師をしている。
「アルバスも早く魔力をモノにできるようにしないとね。あなたは、才能があるんだから」
「分かってるよ。それよりご飯は?」
「今できたわよ」
今世の俺はこんな穏やかな人々に囲まれて生きている。前世では、考えられないような毎日だ。あの時は、血の雨が止まない日はなかった。
俺は、飯を食べ終え、そのまま寝床に着いた。
朝を迎えた。母が用意した飯を食べ、センテンス学園へ登校する。
途中、マチと会った。
「おはよう」
「おう」
少し元気がない気がする。
「なんかあったか」
「…妹の事で、ちょっとね」
「ああ、あの不良娘か」
マチの妹のウルリは姉貴に負けず劣らずの性格だが、私生活の方で問題があるようで家族をよく困らせている。
「飯屋に爆発魔法でもぶっ放したか?それとも王様の髪を蛇に変えたか?」
「あんた、時々洒落にならない冗談を言うわよね」
ちょっと冗談が過ぎたらしい。
「はあ~。ウルリが帰ってこないのよ」
「一晩位ならお前の妹なら普通じゃないのか」
「二週間も戻ってこないの」
二週間か。不良娘といってもマチから聞く限りそこまでではない様に思う。それを考えれば、確かに不自然かもしれない。
「どこへ行ったか見当はつかないのか?」
「マチとよくつるんでる友達にも聞いたけど、分からないって」
思春期特有の自分探しの旅とかではないのだろうかという考えも浮かんだが、それを言うと怒られそうなので黙っとくことにした。
「ただ、その友達曰く、最近とある噂があるの」
「噂?」
「【ヨルガンの血溜まり】という地下闘技場で一対一のタイマンバトルが行われているらしいの」
「・・・・」
「もうその時点でバカバカしいんだけど、どうやらその地下闘技場では魔力の強い子
供を拉致して大人達が賭け事をするのよ」
マチ、ゴメン。
「リングの上の子供達のどっちが倒れるか、はたまたどっちが生きるか死ぬか!」
ホント、ゴメンなさい。
「もし妹が、ウルリがそんな事をさせられていたら、その薄汚い大人達も闘技場を造った倫理の欠片もないグズも全員燃やし尽くしてやるわ!!」
(お腹が痛い)
そう、何を隠そう【ヨルダンの血溜まり】という名の地下闘技場を造ったのは、倫理の欠片もないグズは、他でもないゴトリー・モール。つまり前世の俺だ。
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