第81話 親しき仲間とちょー誓約!

城で目覚めた。

異界の泉の上にゲートを開き、顔を洗う。 

『布生成』でタオルのような布を作り、顔を拭いて、『聖火』で焼却する。朝起きた時はいつもこれをしている。


ちなみに異界のベッドで眠る前は泉に浸かり、体を吹いている。服に関してはその時に一緒に泉に浸からせ、自分はバスローブ的な布に包まり、服は聖火の近くに干して眠る日々だ。

今は風属性の魔石の近くに干して乾かしているが。そのお陰で俺は常に清潔だ。


一度騎士に汗の臭いがしないことに違和感を持たれたが、そのことを気にするよりも、汚れる方が嫌という結論が出た。すぐに外の門へ向かう。


「あ」


「ん?あ」


からかいがいのある兵士さんだ。


「今日もボーッとするのお疲れ様です」


「ああ、ありがと…いや、ちゃんと見張ってるからな!?」


「またまた〜」


「冗談じゃないから!ハァ、書類を」


「もうそろそろ書類無くても良いんじゃないの?」


「んなわけあるか!これからはもっと厳しくなるはずだ」


「それはまた、どうして?」


「ちょっと前に裁判あったの知ってるか?この国の重要な役割の貴族の方の裁判でな。

その裁判中に貴族に化けた魔族が現れて、しかもその魔族が元の貴族を殺していたことが分かってな。


魔王国との戦争がだいぶ現実じみて来たんだ。だから次からはどんな密偵も入らないように、この門を守らなきゃならん、って訳だ」


「頼りないな〜」


「は?ここはこの国でもトップクラスに安全な門だ!なんたって俺が居るからな!ほらこの書類持ってさっさと行って来い!」


追い出されてしまった。

だいぶ力に自信があるのだろう。

過大評価にも過ぎる気がするが。…………そうかそうかスキル『正解』君。


過大評価は、か。


あの門番兵士は何者なんだろうな…。今はそれは良いか。早くリック達の所へ行こう。天気が不穏だけど、仕方ない。降り出したら濡れて走るしかないね。



冒険者ギルドに着いた。

既にリック達は着いて待っていたようだ。


リ「遅かったな!」


「お前らが早い…のもあるだろうけど、俺が門番とたわむれてたのが原因だな。申し訳ない」


ラ「戯れる…?まあ、別にいいさ。それと、今日はどうする?いまいち天気が優れないが…」


ル「雨の日は食欲があんまり出ないなぁ」


リ「ルンドはいつもよりちょっと少ない程度だらうが!まぁ、それにしても、どうする?」


「森に行こう」


ラ「……ちゃんと理由があるんだな?」


「ああ」


ラ「…よし、行くぞ」


リ「分かった!それじゃあすぐ出るか!」


「ああ、いや。ちょっと待っててくれ」


リ「?分かった!」


冒険者ギルドの受け付けに行き、その前に見えないところで魔物の討伐部位を詰めた袋を取り出す。


「すいません」


「はい、依頼ですか?依頼達成ですか?」


「依頼達成の方で」


ドンッ、と机の上に置く。


「……時間が掛かりますがよろしいですか?」


「はい」


「では、少々お待ちを」


受付嬢は袋を奥の部屋に持って行った。出した討伐部位は、ゴブリン種とオーク種を全部出しただけだ。

エアリアルとかの奥の方の魔物は討伐部位が分からなかったから、分かったら一気に提出するつもりだ。


「すみません!クート様は冒険者証をお持ちですか?」


「ええ、はい」


「お預かりしても?」


「はい」


「ありがとうございます!」


まともな受付嬢だ…。あのラミって受付嬢しか知らなかったから、凄い新鮮に感じる…。

というか俺が一気に出した時も表情1つ変えてなかったな。これが出来る受付嬢か…。


少し感傷に浸って待っていると…。


「お待たせしました!こちら、新しい冒険者証と、今回の報酬です。袋はお返しします」


「ああ、ありがとうございます」


冒険者証を持っていったのはランクが上がったからか。これでこれから俺も銅級カッパーか。報酬は…銀貨43枚と銀板22枚。所持金が金貨4枚を超えたな。


「よし、行こうか」


ラ「…なあ、それは突っ込んで欲しいのか?」


「?何がだ?」


リ「いや、おかしいだろ!なんで、いつの間にそんなに沢山狩ったんだよ!それにハイオークも出してたようだし!」


「ん?なんでハイオークって分かったんだ?」


ル「美味しい肉の匂いがした」


「ああ〜、そういうことか。森で話すから、話し終わったら一緒に食べよう」


ル「!!?ラーガ!早く行くよ!」


ラ「おい、待て!……ハァ、クート、ちゃんと話せよ」


「もちろん」


ラ「よし。急いでルンドを追うぞ!」


リ「おう!」


ルンドは既に森の近くの門の前で待っていた。流石に外までは行かなかったようだ。一緒に外に出て、オークまでは行かない程度の近くの森に、もっと正確に言うと『禁域』を使った近くに行く。


ラ「それじゃあ、話してくれるか?」


「その前に、『誓約』をしよう」


リ「え!誓約魔術師連れてきたのか!?」


ラ「そんなことは無理に決まってるだろ。いくら掛かると思ってる。もしかして使えるのか。『誓約魔術』を」


「ああ。俺が使えるのは『誓約術』だが、似たようなものだ。それじゃあ、口約を。

『リック達は俺の秘密を身内以外の誰にも伝えない』

『リック達は俺のことを裏切らない』

『俺たちは互いを攻撃しない』

『俺たちは互いに嘘を言わない』いいか?」


ラ「ああ」

リ「おう!」

ル「うん」


「よし、これにて誓約は結ばれた」


リ「お、おお。なんか繋がった感覚が…」


ラ「これが誓約か…。不思議な感覚だ」


ル「ハイオークのお肉は?」


「ルンドはずっと飯だな。なら少し奥に行こうか。俺に着いてきてくれ」


そして俺たちは禁域近くまで来た。


ラ「なあ、おいクート。これ以上先は止めたほうが良いんじゃないか?」


リ「俺もそう思うぞ。なんか、嫌な感じがする」


ル「僕も食欲が湧かないなあ」


「ん?なんで…あ。ラーガ、リック、ルンドを『禁域』に入るのを許可する!」


リ「おお?一気に軽くなったな。威圧感が消えたというか、敵意が消えたというか…」


「そんな感覚なんだな」


ラ「ああ。出来ればここを見たくもないと感じていた。だけど、クートが許可を出したら一気にそれが無くなった。これもお前の力か?」


「ああ。スキル『禁域』の力だ。まだまだあるぞ。『異界』」


リ「これは…黒いもや?」


「この中に入るぞ」


リ「……マジ?」


「ああマジだ。皆が入ったら消すから、早く入ってくれよ。中に入ったら肉を食おう」


ルンドが無言で突っ込んで行った。

それに続き、ラーガとリックも中に入る。

そして俺が入り、ゲートは消える。


森には静寂が残る……。

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