第79話 ついに着手する、ちょー塩生成!

最初からスキルの検証…と行きたいところなのだが、やろうと思って忘れていたタスクを終わらそう。


確か塩を作る方法はいくつかあるよな。

日本で許可されている作り方は天干と平釜の2つだったか。まずはそれよりも簡単に、一瞬で出来るやつだな。


『世界』で岩塩を生成。

これで後は削れば使える。純度100%。不純物無しの完全な岩塩だ。削るための道具が無いけど、いつか手に入れるまでは適当に砕いて使おう。


そして塩の生成だが、結構土地が必要だよな。また増やすか。島。この異界は俺だけが自由に作り変えられる俺だけの世界だからな。

新しい島を、完全に石作りの島を作ろう。

島の名前は塩島かな。


出来る限り平地の方がいいかな?

島が作られる過程を眺めながら、合っているかと再度、塩の作り方を思い出す。


天干は時間をかけて、太陽の熱でじわじわ水分を蒸発させるような感じだったはず。

平釜はそのまま平釜に塩水を入れてじっくりコトコトだったっけ?


正直天干の方は枠組みを作ってそこに『青海』で海水、塩水を流し込むだけだ。簡単だな。

やっぱり問題は平釜の方だよな…。


まず平釜持ってないし。いや、平釜って形は適当でもいいのか。確か密閉しないくらいの蓋であればいいよな。なら適当な器に、穴を開けた適当な蓋を作ればいいか。


土台を作って少し高めのところに釜を置いて、『青海』による海水を流し込む。そして土台の下部分に、直火にならないように聖火を灯す。


聖火は出す時は少しのMPの消費で済むが、火力を上げる際は比にならないくらいのMPを消費する。

ゴレイチにMPを増やさせたのはそのためだ。もしもの切り札としてあのバットは使えるようだからな。


と、そろそろ島が完成してきたな。後は石で枠組みを作って『青海』で海水を出して放置するだけど。……良い事を思いついた!


「『布生成』で真っ黒な布を!と、あ、ええ?」


出て来た黒い布はハンカチ程度の大きさだった。それなのにMPを、増やした事で最大1000まで貯めれるようになった俺のMPを全て持っていかれた。


「なんなんだこの黒い、布、は……」


直視すると呑み込まれそうになるほどの漆黒。


「あ、ハァハァ。か、『解析』」


視線を外し、『解析』する。


シャドウレスブラッククロス…迷宮でのみ確認されている、ノーブルシャドウのコートの素材。あまりの黒さに影が写らないとされる黒い布。光の吸収のみならず、生物の視線をも引き込む黒い布。


これは…として使えるのか?

俺が黒い布を作ろうとした理由は、眠るときに黒いカーテンで部屋を暗くしたらスキル『夜』を、太陽の日差しを消さずに寝ることが出来るのではと思ったからだ。

日差しを消さずに済めば、天干塩の精製の時間短縮になるのでは、と思ったからだ。


聖火を『吸火』で吸収し、MPを回復しながらシャドウレスブラッククロスを量産する。コートと名前に付いているが全部カーテンとして加工していく。視線が惹きつけられる程度なら、どうにかなるだろ。


少し不格好になると思っていたが、くっつけるための糸も見えなくなったため、違和感が無くなった。

カーテンとして家の窓、ドアに掛けてみた。

………家の中が真っ暗だが、これで良いかな。

ゴレイチの家にも付けに行く。


「ゴレイチ、これはカーテンだ」


「!!良いんですか!?」


「?ああ、良いぞ。ただし、カーテンを閉めるのは眠るときだけにしておけよ?」


「分かりました!」


「よし」


暗すぎて足を引っ掛けてしまいそうだからな。

それにしても凄い喜びようだったが、そんなにカーテンが欲しかったのか?

まあ、いいか。

さて、塩のためにやれることはこんなもので終わりだろうし、次はスキルの検証に移ろう。


パッシブスキルは検証不可だから無視するとして、『進化』は既に試した。『海震』はここで試すのは危険過ぎる。

だから試せるスキルは、『回収』と『深海』だ。


『回収』の検証の為に素材島の泉からゴブリンの死体を取り出し、居住島の俺の家の前まで持ってくる。そこで『回収』を発動させる。


するとパッ。と、ゴブリンの死体が消え、ボチャン。と素材島の方から小さく聞こえて来る。すぐに向かうと、おそらくここに飛ばせたのだろう。数が多くて分からなかった。

適当に死体を拾い、サンリアの側に置いておく。


さて、次の検証、『深海』だが、何処かの海を指定しなければならない。そして俺の持っているスキルに、とっておきの無尽蔵の海がある。


「『深海』指定、『海星』」


これで指定出来たはずだ。

海に向け、スキルを発動する。


「『深海』」


凄い威力で、まるで鉄砲水のように吹き出してきた。この威力を正面から直に喰らえば、首だって飛ばせるのでは、最低でも折ることは出来るのではと思えるほどの勢いだった。


これは戦闘で使えそうだ。使うMPが10で済む事も良い点だ。

でも…。


「結局、使うことは少ないんだろうなぁ…」


戦闘の際、俺はつい手元の棒で攻撃してしまうからだ。色々と攻撃に使えるスキルを、必要だと思い手に入れているが、使い時がいまいち見つけられない。


冒険者ギルドにて、俺は土魔術が得意で、軽い水・火魔術を使えると言っていた。辛うじて土魔術『世界』は戦闘時にも使えるが、水魔術『深海』の海水と、火魔術『聖火』の火力だと、森での戦闘には差し支えると思い、ついセーブしてしまう。


故に結局棒で戦闘してしまう。

今のところは問題ないが、今後の為に自身のスキルの把握、連携、訓練、調整をしておいた方が良いはずだ。やるべきことはいっぱいだな。


『異界』内と外で時間の流れが違うことが何よりのラッキーだな。今日はオーク肉を食べて寝るとしよう。


ゴレイチも呼び、聖火で優しく焼き、そのまま食べた。聖なる泉と聖なる炎で清められた、元の味の数倍まで膨れ上がっただろう、素晴らしい素材の味だ。


………早く塩が欲しい……。

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