第74話 裏にひしめくちょー謀略!(Another side)

ワイルアーク王国第一王女(sideクリスディナ・ワイルアーク)



「報告は以上になります!」


「そう。下がっていいわ」


「ハッ!」


私の小間使いのように使っている騎士が部屋から出て行った。本人が嫌がっていないようだからそ のように使っている。

それにしても。


「伯父様は無事だったようね」


そう。今日裁判に掛けられていたギナイ公爵は私の父、国王の兄だ。そして私の小さい頃に面倒を見てもらった過去がある。

そんな小さな頃から見てきた伯父がこの国を裏切るなんてありえないとは思っていた。


それがなんとか男爵とかいう、金と権力と女が大好きなゲスな男が証拠を持ってきたという。しかもその証拠が本物だと『比較』スキル持ちの男が証言する。


何度嘘だと、冗談だと願ったことか。だが判決はくつがえらず、最終判決の時まで来てしまった。私も父も仕事を進めながらも無罪となるような、いや、少しでも刑が軽くなるような証拠を探してきた。


だが私は勇者召喚の対応で忙しくなり、父は各地で起こる大小様々な問題の対処に追われ時間が無くなっていった。時間だけが過ぎていく。そう思っていた。


そして刻一刻と過ぎていく日々に『イレギュラー』が混ざったのを感じたのはアワセ・クートが提案を仕掛けて来た日だ。


4文字ハズレの所持者であり、それを上手くスキルへと変化させられた者。ただ、初めて話したその時は、数日の徹夜と焦りから、その能力の使い方を考えるのを遅らせ、危険度を注目してしまった。


今最も必要な者だと言うのに、父に言われるまで気付けないとは、為政者として不甲斐ない。

終わり良ければ全て良し等は知能を持たない、食い物にされるだけの弱者の戯言だ。だが、今日だけは許してくださるのではないでしょうか。


「良かった…。本当に良かった…」


ああ、まだもう少しこの安心の余韻に浸らせてもらっても良いのでは……。


「スゥ………」


「………お眠りになられたようです」


「(もう少しボリュームを落としなさい!まったく、スキルがあるからと言って無茶をされるのは困ったものです。すぐに毛布を掛けて差し上げなさい)」


「(はい!)」


「(国と民の為に日夜働く寛大で、英明な王女殿下。その小さな手にいくつの命が救われているか。せめて、今だけでも健やかに休息を…)」



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クリスディナ・ワイルアーク old 18 

Human  Level 27

job『王女』 『姫』

HP 40/40  MP 66/66

STM 27 STR 4 SPE 30 PRO 26 

MSTR 30  MPRO 18 LAC 5

STP 0


SKILL

『速読』P 『並列処理』P 『並列思考』P 

『思考加速』PA 『執務』P 『細剣術』A

『礼儀作法』P 『学習』P 『王族の気品』P 

『威圧』AP 『耐圧』P 『演技』AP

『毒耐性』P 『火魔法』A 『聖魔法』A

『ぬ』AP


USKILL

『忍耐ある御身』P


──────────────────────

『王族の気品』P…スキル所持者が行う全ての行動に気品を伴い、見た者が敬いたくなる気持ちにさせる。スキル『礼儀作法』と、王族の血、もしくは王族になろうとする者が獲得可能。


『忍耐ある御身』P…心を張り詰め、気力を保ち続けることで全ステータスが上昇し、全てのスキル・行動に補正。スキル獲得・熟練度の上昇率が上昇。

気力を保ち続ける限り、休息を必要としない。

尚、疲労は蓄積される。

全状態異常無効。

HP、STM、PRO、MPRO10獲得。




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ワイルアーク王国国王(sideウォンクライン・ワイルアーク)



「ふむ、そうか。下がれ」


私に仕える草から情報を得て下がらせる。


「あの娘にはいい味方が居るようだね」


「!兄上ですか」


「んー出来たら非公式の場でも公爵の方が良いと思ってるんだけどね。立場的に」


「兄上が面倒だからと私に押し付けた立場ですよ?」


「ハハ!そう細かいことを気にするなよ。それにクラインの方が王に向いていそうだったからね」


そう。私、ウォンクラインは兄に王座を譲られたのだ。私よりも才能に満ち溢れた兄上だが、王をやるには今一度やる気が足りなかったようだ。

成長を見るのが楽しいから、と。

それでも国を想う気持ちは互いに互角だったようだが。


「それにしても兄上、今回ばかしはちと肝が冷えましたよ。どこまでが計画なのですか?」


「ん?ああ。国にが混じっているのは気付いていたのだけどね。どこかの貴族の裏に隠れていると思っていたけど、まさか本人が魔族だったとはね」


「あの裁判は計画の内だったので?」


「いや?あれはヤバかったよ。今回ばかりは死ぬか~。って覚悟するくらいにね」


「!兄上も予想外だったのか!?」


「そりゃあ、僕は神でも悪魔でもないからね。全てを予見するなんて出来ないさ。でも『予感』がしなかったのも大きな要因だけどね」


「ならあれを使ったのは正解だったのですね」


「そうだね。だから『予感』がしなかったのかな?危険じゃないと分かっていたから。というか、あんなのどこから見つけてきたんだい?


普通、他の者が見逃さないはずだけど。いや、確か僕が牢獄にいる間に予定通りに勇者召喚がされたのだったね。なら彼のあれはユニークスキルってことかな?」


「いえ、確かに勇者召喚で呼び出された者ではありますがユニークスキルは所持しておりません」


「ん?ならあのスキルは何なんだい?」


「あれは4文字のハズレスキルを変化させたモノだそうです」


「ハズレスキルか…。なるほど。確率は低いが、あり得ない話ではないね。それでも変化させた後も普通のスキル欄にあったんだね?」


「はい。最初に召喚された際に『ステータスオープン』を使用していた際に元のスキルを確認でき、その後にステータスを開示させた際も普通のスキル欄にあったようです」


「つまり、何処かにユニークスキルの『正解』を持つ生き物が存在している。ってことになるね…。

それと、いつまで敬語で話すつもりかな?」


「これは2人きりの時くらいは許してください」


「まあ、いいか。それよりも今後のことを話し合おう。特に、魔王国のことについて」


「……戦争ですかな?」


「そうだね。それ以外はないだろう。それに、つい先ほど屋敷の地下で幽閉された状態で死亡したエンプ・ライビー男爵が発見されたよ。これは確定的な敵対行為だ。戦争は避けられないよ」


「そうですか…」


出来ることなら戦争は避けたかったが、もう無理だろう。我が国の貴族が殺されているんだ。戦争の際には、召喚者にも出てもらうしかないだろうな。…それにしても。


「召喚者、か…」


「ああ、彼らにも出てもらうしかないね。僕が幽閉されている間に召喚された彼ら。僕は彼らのことがまだ把握出来ていないから後で書類を送ってくれよ」


「はい。もちろんです」


「それに、あの『探求尋問官』殿は色々と隠し事が多そうだったし、結構戦えるんじゃないかと思うから、他の召喚者にも期待しているんだ」


「ほう、兄上がそうおっしゃるとは、どれほどのものなのですかな?召喚者案件については娘に一任しているので、正確には把握出来ていないのですよ。

ああ、そうだ。兄上から直接クリスディナに話して貰えばどうです?クリスディナも喜ぶでしょう。今回は無茶をしたようですし」


「…ああ、そうだね。あの子はまたあのスキルを使って無茶をしたのかな?」


「ええ。草からの情報ですと、10日ぶりの就寝だそうで」


「全く、もっと若者を楽させてあげないとね」


「ええ、そうですね。我々は、未来ある若者に無茶をさせている今の現状を打破しないといけないですね」


「そうだね。それじゃあ今後のことについて話し合おうか」


「ええ。あ」


「どうしたんだい?」


「『探求尋問官』クート・アワセはどのように見えたので?」


「んー、タイプ的にはクリスディナに近いかな?でも方向性が微妙に違う気もするね。彼の内面から、クリスディナのように社交界で貴族の闇を見てきた訳でもないのに、仄暗い闇を見たよ」


「ほお…。戦力は?」


「んー正確には分からないね。そういうスキルは持ってないからね。でも感覚的にはレベル40超えのステータスかな?魔法的なのはあまり分からないからね」


「兄上でも抑えられますかな?」


「それは…聞く意味が無いよ。彼がどんなスキルを持っていようと制圧出来殺せるよ。ただ少し、面倒な『予感』がするけどね」


「ハハハ。それでも言い切れるとは、やはり兄上は流石ですね」


「ありがとね。さ、今後の話をするよ。無駄話に時間を使いすぎた」


「ええ、そうですね」



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ロウラ・ギナイ old 57 

Human  Level 179

job『冷公れいこう』 『魔剣士』

HP 200/200  MP 550/550

STM 260 STR 200 SPE 300 PRO 200 MSTR 400 MPRO 100 LAC 35

STP 0


SKILL

『天才』P 『疾走』P 『剛力』P 『身硬』P

『長剣聖』A 『水魔法』A 『風魔法』A

『火魔術』A 『氷魔法』A 『魔剣術』A

『魔力感知』P 『魔力操作』A 『氷耐性』P

超並列処理マルチタスク』P 『感知』PA 『索敵』A

『注目』A 『超速読』P 『微直感』P 『詠唱』A

『王族の気品』P 『威厳』AP 『カリスマ』P

『毒無効』P 『手』P


USKILL

『英傑たる所以』P 『虫の予感しらせ』P


──────────────────────


『冷公』…称号jobスキル。氷魔法を使う事と、身内以外への冷淡で冷酷な対応からそう呼ばれるようになった。

『氷魔術』系統の効果や範囲向上。MP消費量低下。『威嚇いかく』系統スキルに冷気が追加される。

『公爵』スキルも内包されている。


『天才』P…スキル所持者の理解力向上。スキル所持者に、並列処理と並列思考の効果を与える。

スキル所持者は合理的な思考になることが多い。

獲得STP2増加。


『魔剣術』A…2つ以上の魔法スキルと剣聖スキルを所持、3年以上の戦争を経験をしていると獲得可能。

魔法と魔術が混ざった剣術を使えるようになる。

レベル0魔剣。MP消費5分毎に10消費。魔術の属性を剣に付与出来る。風魔術だと、剣を振るう際に見えない刃が刀身を囲い、範囲が広がる。


レベル50魔法剣。MP消費五分毎に20消費。魔法の特性を剣に付与出来る。水魔法、ウォーターカッターだと、剣を振るうたびに水の刃を飛ばすことが出来る。


レベル100剣魔融合。MP消費100。剣を1つ消費することで鋭さ、硬度そのままで刀身が選んだ魔法の現象となる。刀身が破壊されてもすぐに修復される。制限時間5分。制限時間が終わると剣はちりとなり消えて無くなる。


レベル150複魔剣合。MP消費属性1つにつき50消費。複数の魔法属性を合成しながら使える。


『英傑たる所以』P…スキル所持者の行動に進歩を与える。スキル所持者の周囲の者も巻き込みながら成長させる。

周囲の獲得STP1増加。

獲得STP5増加。

LAC5獲得。


『虫の予感しらせ』P…スキル所持者やその周囲に危機が迫る際に予感を感じる。ユニークスキルでの暗殺や暗躍には発動しない。

人知の及ばぬ災害等には有効。

LAC5獲得。



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ホーゼンプ魔王国伯爵(sideミレディ・ト・メイナー)



「ほ、報告は、以上です…」


「そうか」


「はい、すみません」


「ん?いや、別にいいさ。君が頑張ってくれてることは知っているからね。僕は実力主義のこの国で他を蹴落としながらその地位まで登ってきた実力を買っているからね」


「ありがとうございます…」


「そんなに甘くて良いんですか?魔王様」


こいつは私と同じく魔王国伯爵のカラ・イ・チャルだ。私と違い身体能力が抜群で、元の伯爵だった者を殴り殺してその地位を手に入れた野蛮な男だ。


「これこれ、魔王様が決めた処置に意を唱えるな。魔王様を疑っておるのか?」


「そ、そうは言ってねぇだろ!」


この温厚そうな爺も私と同じ伯爵だ。エンシ・ス・アビン。卓越した魔法技術でその座を守護する者だ。正直、この男が私と同じ地位でくすぶっていることに驚きを隠せない。


魔王国には3年に一度、『下剋上げこくじょうの日』というものが存在している。その日だけはどのような立場の者も、『挑戦者』を受け入れなければならない。

もちろん、魔王も例外無く。


そして『挑戦者』の資格は王を除いた全国民が持っている。貴族となった者は領地を得られ、好きに改変することが出来る。

そして、職業を手に入れられる。それが1番の報酬となる。職業が爵位持ちの貴族となった者の補正は侮れない。


そして、私の同期の一人のカラ・イ・チャルは、武闘派なせいか、戦闘能力に乏しい私を目の敵にしており、隙あれば蹴落とそうとしてくる。


エンシ・ス・アビンを馬鹿にしないのは、既に15年もの間を守護し続けている猛者だからだ。故にチャルでも大柄な態度を取れない。


「でもこいつがミスをして…」


「うん。戦争は避けられないかな」


「!?」


「何をやらかしておるんじゃ貴様は…」


「申し訳ございません…」


「そんな大失態しでかしておいてこの処遇なんですか!?」


「魔王様よ。流石に理由を知らないと納得出来ん者が出るのも仕方ないですじゃ」


「うん。その反応になるとは思っていたよ。もちろん理由はある。彼女が持ってきた情報が有益だっからね。それに、遅かれ早かれ戦争になると思っていたからね」


「その情報とは?」


「王国の厄介な強者達の情報。王国の内政情報。そして勇者召喚に関する情報をね」


「なんと!?」


「マジかよ!」


「うん、マジだね。他の貴族達も呼んでいるから。それに対する対応の会議だね。もちろん、戦争のことも大事だけど、それぞれの強者に誰を当てるか、誰に当たりたいかとかをね。

その強者に関する情報を持って帰って来たんだ。これに対する褒美と罰で相殺にかな」


「そ、そうなのか…チッ。良くやったな」


「これっぽっちも嬉しく無いけど、ありがと」


「うんうん。仲直りしてくれて良かったよ。それと、警戒すべき相手の情報もあるんだったね?教えてくれるかい?」


「は、はい!1人は現在他国に使者として赴く第一王子です。基本的に全てのスキルを隠しているようで、分かった情報はjobが『聖騎士』だということです」


「うん、そうだね。『聖騎士』は魔族に特効のスキルを覚えやすく、その威力を増加させる厄介なjobだね。他は?」


「やはり、国王も厄介そうでしたが、その兄、公爵ロウラ・ギナイは更に危険かと。

既に怪しまれていたので強硬手段を取りましたが、これから裁かれるというのにあまりに余裕があったように感じました。まるで助かることが分かっていたかのように」


「うん。あれは厄介だ。今回で殺れたら良かったけど、流石にそれは欲張りすぎだね。あそこの王族は皆、何かしらのユニークを持っていると思うからね」


「それと裁判長も警戒した方が良いように感じました」


「あぁ、それは正しいよ。言ってなかったね。彼は転移魔法と召喚魔術の使い手だからね。後は王国騎士団団長と王女近衛騎士団団長。それに軍務卿も厄介な強者かな。

あー忘れてた。三国国境番も居たね。今は何処に居るかは分からないけど、あの3兄弟は確実に王国の何処かに居るだろうからね」


「次ですが、王国の冒険者共も危険な者が多いかと」


「んー、それもそうだけど、冒険者の強者たちは冒険者の中でも上澄みだからね。警戒するに越したことは無いけど、警戒のしすぎもしないほうがいいね」


「あとは言わずもがな、勇者達召喚者達ですが彼らも冒険者と同じく強弱はまちまちでしょう。

それよりも厄介そうなものが『探求尋問官』と言う、裁判で初めて知った存在です」


「『探求尋問官』、か…聞いたことが無いな。どんな力を持っているか分かるかい?」


「戦力はあまり正確には分かりませんでしたが、そのスキルの一端は分かりました」


「それは?」


「おそらく『真実の目』や、『天秤』のように、偽装や嘘を見抜く力でしょう。それに加え、強制的に偽装を解く力も持っているようでした。ただ、『真実の目』とは違いこちら側は答えていないのに私の正体を確信しているようにも感じました」


「それは…厄介だね。それにその時まで情報が無かった事も不気味だね。注意しておこう。今日はこれぐらいで止めておいて、次は他の貴族達が来てからにしよう。分かったかい?」


「「「はっ!」」」


「よし。それじゃあ今日はゆっくり休むといい。明日からの会議は面倒だからね。各公爵に侯爵、伯爵子爵、男爵や準男爵に騎士爵も呼んでいるからね」


この国の全ての貴族に最高戦力たる公爵も呼んでいるとは、本気の会議ですね。私も覚悟を決めなければ…。



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ミレディ・ト・メイナー old 39 

Succubus Level 107

job『伯爵』 『夢魔』

HP 80/80  MP 180/180

STM 30 STR 20 SPE 90 PRO 46 

MSTR 150 MPRO 30 LAC 80

STP 0


SKILL

『魔』P 『魔力』P 『謀略』P 『性技』P

『房中術』P 『水魔術』A 『風魔術』A 

『闇魔法』A 『吸精』A 『誘惑』A


USKILL

『堕落する太陽ひまわり』A


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『伯爵』…国と民を持つ王に、その地位を与えられた者のみが、手に入れられる職業スキル。国内では職業の地位の差により、相対する相手に有利なバフ効果を得られる。

自領での行動に中補正。

他国であっても、多少の差はあるが発動する。


『堕落する太陽ひまわり』A…MPを消費して対象の精神に堕落を埋め込む。堕落を埋め込まれた対象は、気力を失い、何をするにも命令が必要になる。

スキル使用者は、堕落させた相手の記憶や姿を奪える。

MP5獲得。







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明日おまけが更新されます。




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