第72話 いきなり裁判ちょー本番!
「く………。…ート…。クート様!」
「はい!?」
なんだ?
『異界』内で寝てる時は『夜』が明けるまで起こさないようにゴレイチに言っていたと思うんだけど…?ってかゴレイチは狩りのはず…。昨日俺って『異界』内で寝たっけ?
ヤバ。もしかして普通に城に戻って寝たか?
「クート様!王女殿下がお呼びです!王族の命令を寝坊で遅れるだなんて…」
「はい!すぐ行きます!」
確実に城に戻って寝たな。しかも夜明け近くに寝たはずだから、しっかり寝れずに眠気も飛んでないし。これは、一瞬異界に帰って顔を洗おう。……よし!これで行けるな。
「今出まーす!」
部屋から出る。
「……身だしなみは綺麗ですね。すぐに向かいますよ」
「あ、はい」
少し早足で王女様の部屋に向かう。これで王女様からの呼び出し、というより仕事は2回目だな。次は何を命令されるのか…。
「召喚者のクート様をお連れしました!」
「入っていいわよ」
「失礼なきように!」
「はい。失礼します…」
中に入ると前回と同じように山積みの書類に囲まれた王女様が居た。
「来たわね、アワセクート」
「はい、遅れてすみません」
「いいわ。それよりも仕事よ」
「はい。次はどのような?」
「ハァ……」
「どうしました?」
「いえ…今回の依頼主は私ではないわ」
「?では一体誰が?」
「王よ」
「…は?」
「王が貴方を直々にご指名よ。実際の裁判で貴方を使いたい。だそうよ」
王様からの依頼、それに実際の裁判か。そういえば…。
「裁判って何時あるんですか?」
「今日よ」
「今日!?」
「そうよ。…あぁ、貴方用の礼装も用意済みだから、すぐにメイド達に着替えさせられるといいわ。外で既に準備が終わって待っているはずだから。
話は以上よ。もう行っていいわよ。くれぐれも粗相の無いように、励みなさい。全力でそのスキルを使っていいわ隠す必要もないから」
そこまで話すと、少しだけ上げていた目線を下げ、何も言わずに書類の消化を始めた。
「失礼します!それではクート様、部屋の外にてメイド達が待っているので向かいますよ」
「あ、はい」
「失礼しました!」
「失礼しました」
部屋の外に出るとメイドが4人待ち構えていた。
「騎士様!クート様をお連れしても!?」
「えぇ。こちらの話は終わりましたので、好きにしてください」
「えぇ!?」
「クート様、それでは」
サササと騎士が離れて行った。するとメイド達に服を掴まれた。
「それではクート様。これから採寸をしてから、クート様に合った服を選び、髪のセットや化粧等。このあとは忙しいですよ!」
「化粧なんて必要ですか?」
「もちろん必要です!!これから王の前で被告の無罪を証明しなければならないのてすから!」
「必要なのか…。ん?無罪の証明?」
「はい。これから裁かれる相手はこれまで国を支えてきた国王陛下の右腕とも言われる忠臣ですから」
「そんな人物がどんな罪で裁かれるんですか?」
「魔王国に情報を売ったのではという重罪ですね」
「魔王国に?」
「はい。証拠らしき物も用意されているようですね。だから私達は貴方がどんな力を使うか分かりませんが、無罪であることを証明してくれることを祈ってております!」
「どうしてそんなに無罪を求めているんですか?」
「それは……知っていてもらった方が良さそうですね。今裁かれている
そしてその方、ロウラ・ギナイ公爵を訴えた貴族がエンプ・ライビー男爵という差別意識の高いゴミく…貴族らしい貴族の方なのです。
な・の・で!貴方には無罪であることの証明をしていただきたいのです!さあ!採寸は終わりました!次は服なのですが…時間が押しているのでこの一着を合わせるとしましょう」
「あ、はい」
それにしても公爵を男爵が訴えるなんてことがあるのか?あとメイドの言葉は正しいのに、完全な『正解』じゃないな。
「あの、聞きたいことがあるのですが…」
「はい!服終わりました!」
「よし!すぐに着替えさせて!」
「あの、ちょっと待」
「さあさあすぐに着替えさせてしまいますよ」
「え、あ、早」
「騎士様ー!終わりましたー!」
「え?もう化粧も終わってる!?」
「良し。では連れて行くぞ」
「どうぞ!」
「えぇ…」
「そうか。クート殿。少し走るが付いてこい」
「え、あ、はい」
するとすぐに騎士が走り出した。
「あの?」
「なんだ!」
「どうして男爵が公爵を訴えられるんですか?」
「今聞くことか!?まあいいだろう!絶対的な証拠が見つかったそうだ!それを裁判官が確認する限りでは有罪判決にするだけのモノだったということだ!」
「ありがとうございます」
有罪を確定させるような証拠、そんなものを男爵が持っているというのも奇妙な話だ。走って十分ほど。
「ここだ」
城の裏手に広がる大きな建物。その建物の前には二人の騎士が立っている。これが裁判所か。こんなところに裁判所があったとは…。いつもは荷物を出入りするための小さな門だったが、裏、ってことは貴族街の部分か。
城下町は城を中心にして、左側に歓楽街。
右全体から前方にかけてが平民街。
後ろ全体が貴族街。となっている。
そして今まで来たことのなかった貴族街に初めて足を踏み入れることになるが、その理由が裁判かぁ。
「クート殿。君の礼儀作法で不快に思う者が居ないとも限らない。くれぐれも気を付けてくれ。そして、ここからは完全なアドリブになると思うが頑張ってくれ」
「え、はい」
「よし。それでは。スゥ…『探求尋問官』!クート様!到着致しました!」
「え?探求尋問官?」
「扉を開けろ!」
俺の困惑に答えてくれる者は居なく、無情に扉が開かれた。
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