第23話 テンプレはちょーお得!
「はい、ここが冒険者ギルドです。冒険者、頑張ってくださいね!」
「はいありがとうございました。」
「それでは…」
親切な人を見送って、冒険者ギルドの前に立つ。よし、行くか!
重い木の扉を開いて中に入ると、いかにも冒険者というガラの悪そうな人や、魔法使いにしか見えない服装の女性に、全身鎧の強そうな人までたくさん居た。
一瞬だけ視線がこちらに向いたが、すぐに興味無さげに目線を変えた。テンプレは無さそうだ。
すごくいかにもなクエストボード的なものまである。と、感動するのはやめて受付らしき場所に行って話しかける。
「すみません、登録に来たのですが…」
「はい、こちらの書類を記入していただけますか?」
「わかりました」
内容は…
『1、名前 2、年齢(任意) 3、出身(任意) 4、ステータス(得意なこと、任意) 5、スキル(もしくは前衛、後衛) 』
結構少ないな。出身だけ隠すかな。
『1、クート 2、17歳 3、無記入 4、土、水、火を出せる 5、後衛』
「以上でお願いします」
「はい、承りました……随分と多才なんですね?」
「いや、そこまで利便性は無いですよ。土は便利ですが、火はマッチ程度、水は飲めませんから」
火は『火生成』、水は『青海』の海水だからなぁ。
「飲めない水?いや今はそれは良くて、土魔法ではどのようなことができますか?」
「土魔法では無いのですが、家くらいなら作れますよ」
「も、もしかして高名な魔法使い様でしたか?」
「いやだから魔法じゃなくてスキルだから」
「ではどのようなスキルなんですか?知りたいです!」
「は?教えるわけないじゃん、なんで書いてないかわかんないの?」
「え、あ、ごめんなさぃ……」
と、頭を下に向け、肩を震わせる。いや泣くほどか?っていや、『正解』がこれは違うと言ってい…「おいお前!」
「はい?何でしょうか?」
「何でしょうかじゃねえよ!俺らのミラちゃんを泣かせといて!」
テンプレだ!テンプレが向こうからやってきた!
20代くらいのチンピラに絡まれた。面倒なんだが、まだ冒険者証を貰って無いから帰れないし……面白そうだし煽るか。
「何のことですか?」
「今目の前で泣かせただろうが!」
「いやいや、彼女は自分のジョークに肩を震わせ笑いを堪えているんですよ」
「そ、そうなのかラミちゃん?」
「い、いえ。私はその方の強い言葉を受けてつい涙が…」
「やっぱりお前が泣かしたんじゃないか!」
「そうでしょうそうでしょう。私の強いジョークで笑いを堪えることは至難の技ですからね。というよりもしかしてあなた達は彼女を笑わせるほどのジョークを言えたことがないのでは?
その慌てようを見る限り、あなた達はここまで笑わせたことがないようだ。」
「いや、笑ってるわけでは…」
「それとも!女性にジョークを言う事も出来ない、恥ずかしがりやさんですか??」
「な、テメェ、俺たちを馬鹿にしてやがんのか!」
「だからどうしたので?」
「お前ぶっ殺す」
鞘から剣を出す。さて、『胃界』で酸でもぶっかけるか……人殺しは嫌だな。股にかけるか。
「『胃界』極小」
「う、ガァ!イテえ、イテえよ!クソが!コロス絶対にコロス!」
「嘘…シルバーのこの人がこんなに簡単に…」
「双方、そこまでにしろ」
「「ギルドマスター!?」」
この筋肉爺さんがギルドマスターか、強そうだな。
「それで、何か申し開きはあるか?」
…………………え?俺?
「何を黙っておる!」
「誰に話してるかわからないじゃん。もう少し考えなよ」
「む、それはそうだな。黒髪の君、名前は?」
「クートです」
「それで、クート君の言い分を聞こうか」
「そこのミラという女性が嘘泣きをして、それを助けに来た男性が剣を抜いたので反撃しただけですよ。顔にしなかったのは慈悲です。
次はヤりますから」
「う、うむ。それで、リックよ。クート君の言葉は事実か?」
「あぁ、そうだ、です…」
「うむ、それでミラよ、言い訳はあるかの?」
「そいつが生意気な態度を取るから、懲らしめてやろうとしただけよ!私は悪くないでしょ!そいつが悪い、のょ………ごめんなさぃ」
ギルドマスターの圧に負けたようだ。
「うむうむ、それでクート君はこ奴らに賠償を求めることが出来るが、どうするかの?」
「面倒ですから両方とも罰金でいいですよ」
「うむ?それだけで良いのか?身体を求めても良いのだぞ?」
「いやいや、要らない要らない、貰っても困りますよ。罰金は金貨1枚くらいですかね?」
「そんなに少なくて良いのか?」
突然だがこの国の通貨を説明する。
鉄貨10枚→銅貨1枚 百円
銅貨10枚→銅板1枚 千円
銅板10枚→銀貨1枚 一万円
銀貨10枚→銀板1枚 十万円
銀板10枚→金貨1枚 百万円
金貨10枚→金板1枚 千万円
金板10枚→白金貨1枚 一億円
となっている。
これで分かると思うが、金貨1枚は決して安くはない。
「…安い、ですか?」
「うむ、安いな。冒険者ギルドの受付嬢は高給取りじゃからの」
「まぁ、面倒なんで1枚のままで良いですよ」
「それでは、2人に金貨1枚ずつでいいのか?」
あ、チンピラ冒険者が居たな。金でも良いと思うが……シルバーランクってどれくらいなんだ?
「すみません冒険者のランクについて聞かされてなくて…」
「む?それは受付嬢が教えるはずだが…」
「聞かされてないですよ」
「そうか………。では説明しよう。冒険者のランクは9つに別けられておる。
下から
パーティのランクは通常の冒険者ランクと違って、過半数以上が同じランクの場合、そのランクと同じとなる。もちろん他の決め方や、例外もあるがな」
「結構多いな。依頼はどうやったら受けれる?」
「それも説明しておらんのか。クエストはランクごとに分けられておる。
受けれるクエストは1つ上のランクまでじゃ。
クエストの失敗は罰金として依頼料の半分を支払わなければならない。
わかったかの?」
「あぁ、良く分かった。賠償だが、女は金貨1枚と銀貨1枚、男は一時的に俺とパーティを組んでクエストに行ってもらう。これでいい。変更、譲歩は一切しない」
「む、分かった。お前たちもそれでいいな?」
「「は、はい…」」
「ミラは何をやっておる。すぐに金を用意してこんか!」
「は、はいいぃぃぃぃ!」
走って飛び出していった。
「それでは、パーティを組むのならばギルドカードを提出してほしいのだが…もしやギルドカードも」
「まだですね」
「……そうか、分かった。作っておこう。ミラが帰ってくるまでの間に終わらせる。それまで待っていてくれ。そこの、ルンド、ラーガ、そして絡んでいたリックと話しておいてくれ。パーティになるのだろう?では儂はもう行く」
ギルドマスターが帰っていった。
ル「何を話すの?」
ルンドと言われたやつが声を掛けてきた。
ラ「そうだな。そこのバカのせいでこんなことになったが、これからパーティとして活動するのだろう?」
リックと違い、しっかりと話が通じる奴らのようだ。
「それじゃあ、それぞれの役割について教えてくれ」
ラ「あぁ、ルンドは前衛で盾を使い敵を惹きつけるタンクだ。俺、ラーガは後衛で弓を撃つアーチャー、そこで
「俺は基本的に土を操って攻撃する後衛のアタッカーだな。土を使って一時的な家を作れたりもする、火と飲めない水を出せるがそこまで期待しないでくれ」
ラ「色々出来るじゃないか」
リ「おい、まだ行ってないことがあるだろ!」
ラ「なんだリック。一々怒鳴るなよ。これからパーティなんだぞ?」
リ「いや、それは知ってるだけど俺にした攻撃はなんなんだ!」
「あーあれは俺の切り札だ。強いが素材が駄目になるし、MPの消費が激しいから多用は出来ない」
リ「そうか、教えてくれてありがとう…」
「それよりもあれだな。俺のギルドカードとミラが帰ってきたらリックのズボンを買いに行こう。一応俺がしたことだからな。それで聞きたいことがあるんだが…」
リ「ズボンのことはいいよ。俺の自業自得だ。
聞きたいことがある?いいぞどんどん聞いてくれ!不仲のパーティはすぐに解散すると聞いたことがあるからな」
「聞きたいことはスキルのことだよ。スキルって後からでも手に入れられるのか聞きたかったんだ。あとハズレスキルのことも」
俺の生命線であり、可能性だからな。
リ「スキルはこれまでの経験で手に入る可能性はある。それでもある程度の才能が必要だが…ハズレスキル?あぁ、ゴミスキルのことか。一文字の不人気なゴミスキルはスキル屋で安く買えるぞ?」
「いくらかわかるか!?」
リ「おぉう。1番安いので銀貨5枚、高いのだと金板5枚くらいかな?」
これは今日で1番の収穫だ!今すぐに行きたいが、今は一文無しだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます