第18話 王女様はちょー心配!(sideクリスディナ・ワイルアーク)

はぁ~

と心の中でため息を吐く。

自分が手に持つ資料を確認する。大広間で『ステータスオープン』させた時と、自ら開示させた時との差は『せいかい』が『正解』になっただけだが…その『正解』がダメだ。


さっきのクートと言う召喚者…あれはだ。あの者を味方に付けると国の為になる。

それはもう、確実に。


だが、あの能力は余りに応用が効きすぎる。そして本人もかなりデキる。私に近しいナニカを感じる。常日頃の振る舞いは信用出来ない。


勇者様…最初からスキルを8つも持ち、そのうちの1つは勇者のスキル『ブレイブ』という才能に溢れたお方…テンセイ様の親友ならば良い人間かと無条件に思ってしまっていた。テンセイ様と話していて心地よく感じるのは、常日頃からあの男と話しているからか。

いや、今それはいい。


あの男は余りに劇薬、飲み込んでしまえば最後、この国を獲られるかもしれない。

問題の答えが分かる。シンプルでわかりやすい能力だ。国に仇なす者を、不正をする者を見つけられる。国を浄化出来るが……。


スキル所持者にしか正解が分からないことが問題だ。あのスキルを裁判や尋問、情報収集に使えるが、真実を言っているかが分からない。


王政の治法国家たる王国の、司法が乗っ取られる可能性を捨てきれない……。だが使わざるを得ない。国を良くする為に。


これからもそのつもりだ。あの者の情報は今のところは私で止まっている。だがいずれは上に伝えなければならない。伝える途中に、何人かを経由する。その者等は自分の主人に伝えるだろう。


文官共は基本、推薦をした貴族の寄親がいる。

その貴族共は自分の送った文官から情報を集める、いつの間にか暗黙の了解としてみな何も言わなくなった。


良くはない、良くはないが手を出せない。侯爵以上の貴族は更に狡猾だ。自分よりも下の位の貴族の弱みを握って、命令をしている。この国の中枢を担う者達はすぐにこのスキルの力を見抜き、取り込もうとしてくるだろう。


危険と感じた者は、刺客を送り付けて来るかもしれない。その前に私がスキルの検証として、何度も使うことで私の部下として認知させるか…?


いや…その程度で諦めるような生優しい人間じゃない。それにあの男…クートは3回まではタダで使えるが、その後から何の報酬を求められるか…。


私の身体を求めてくれたら楽なんだが、あれは自分に最も有用な、それか自分の立場を確立させる為のものを要求してくるはずだ。


なんとも厄介な情報を落としてくれたものだ…。

ただでさえ召喚者からの不平不満に、城に住むものから、召喚者同士の喧嘩や、何もしようとしない者達、訓練をサボる者たちへの陳述書が大勢から送られているというのに…。


「何なのだ、女性騎士に対してくっころをしてほしいなどという意味の分からんセクハラは!?」


たったの3日でここまで問題が起こるとは。

やはり、人数が多すぎるからだな…。


「それにしても、という者たちのステータスや行動には目を配らねばな」


現在の召喚者達のリーダーたる、完全完璧の勇者『テンセイ』様

召喚者達の聞くに堪えない不平不満に、メンタルケアまで引き受ける、召喚者が言っていた、女王『リイネ』

を纏め、城の騎士よりも先に召喚者達の喧嘩や、揉め事を止めに入る、鬼の風紀イイン長『セイア』

この世界に呼ばれた全ての生徒に教師の人数を数分で完璧に数え、城の生活具合からこの国の経済状況を予測してみせる計算力。会計たる『メグミ』


この4人がユニークスキルをもつ者達、そしてテンセイ様に聞く限りでは、全ての言葉や文章、絵の細部に渡るまでの、見て聞いたこと全ての情報を纏め、予測する。の中でただ1人、ユニークスキルを持たない人物『クート』。


まだまだ情報が足りなく、人物像が見えない。

クートはどこまでの情報を掴んでいるのだ?

分からない、いや分かる。情報が足りない訳ではない。むしろ足りすぎている。だが、召喚者達から聞いた人物像の全てが違う。


情報がある。なのに分からない。分からないとは、余りに不気味だな……。


「はぁ…それでは、あの者に関する書類を作らねば…明後日に、軽犯罪を行った者や、犯罪を行った者ということにした者たちとの面談で、スキルの価値が決まるだろう。


それに情報収集が得意とテンセイ様は言っていたな。その情報も、伝えることが出来なければ意味が無いはず。極力セイトカイのメンバー達と出会わないように行動させねば。


次は召喚者に会いたいとどこからか嗅ぎつけてきた貴族共の対応も考えなければ……」


そして、夜になっても休まる時間は無い………。



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天河あまかわ 天聖てんせい old 17 

Human  Level 1

job『学生』

HP 12/12  MP 6/6

STM 5 STR 16 SPE 6 PRO 4

MSTR 10 MPRO 3 LAC 3

STP 0


SKILL

『剣技』A 『柔技』P 『統率』P 

『威厳』P 『光魔術』A 『い』AP


USKILL

『ブレイブ』PA 『限界突破』A


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『ブレイブ』PA…job『勇者』への転職条件スキル。魔族に対してのダメージ増大。

STR10獲得。


『限界突破』A…10分間、全ステータスが10倍に跳ね上がる。使用後、1時間全ステータス半減。

HP5獲得。


『勇者』…スキル『魔族特攻』、『魔族嫌悪』獲得。光属性魔術スキルの熟練度大幅増加。

獲得STP5増加。

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