第4話:魔法国家リヌール

 グランさんとの話が済んだころフルトさんが部屋の準備ができたと言うことで、僕を呼びに来た。

 王宮と言うだけあって面積もかなり広く、二・三分歩いたころ僕が割り当てられた部屋についた。

「しばらく住まれるということでしたので、王室からは少し遠くなりますが来賓用の部屋を割り当てさせていただきました。何かありましたらベット横の鈴を鳴らしてください。すぐに人が駆けつけるようになっておりますので。」

 店員などを呼ぶ時に使うオーダーコールのようなものだろうか。そう思いながら眺めていると、

「そちらの鈴は、鳴らすと微量の風魔法が発生するようになっているんです。そしてその魔力が空間を伝達して、対応する鈴の音を鳴らすようになっています。」

 とフルトさんは説明してくれた。

「攻撃だけかと思っていましたが、こんな風に便利に使うこともできるんですね。」

「生活魔法術・戦闘魔法術というように種類分けされる程度には使い方は分かれますがね。戦闘魔法術は使えても生活魔法術は使えないというものもいますし、また逆もしかりです。この国は魔法国家ともいわれることもあって、どちらも使えるものも少なくはありませんが。」

「魔法国家?」

 そういえばこの国の名前もこの国がどういう立場であるかも聞いていなかったような気がする。

「あら。国王から何もお聞きになっておられなかったんですか。では魔法の説明ついでにお話しさせていただきますね。少し長くなりますので、楽な格好でお聞きになることをお勧めいたします。」

 フルトさんのその言葉を聞き、僕は遠慮なく部屋のベットの縁に腰を下ろした。それを確認し、フルトさんは、

「では、話を続けさせていただきます。先に魔法の方から改めて、それぞれの属性の生活魔法術と戦闘魔法術について説明いたします。

 まず土属性についてですが、生活魔法術として用いられるのは土木、畑などですね。土の形状を変えたり、レンガなどを作ることができたり、簡易的な家のようなものも作ることができます。鍛冶師なども金属の純度を高めるのに使うこともありますね。別の方法で純度を高めることもありますが。戦闘魔法術として用いる場合には、地形の変化に用いたり、鉄、土塊を敵に向かって投擲する。などの方法で使います。

 続いて風属性についてです。生活魔法術としての用い方は先ほどの使い方の他に船を動かすのに使ったりしますね。風がなければ船は動きませんから。後は一人だけ移動するのであれば空中移動などに使うこともできます。戦闘魔法術としては、風の刃を発生させて相手を切り裂いたり、強風を巻き起こして相手の弓などの飛び道具をそらすことができます。

 火属性に関しては、生活魔法術は料理や焚火など。土や風に比べて汎用性はありませんが、人の生活に根深い場所で役に立っていますね。逆に戦闘魔法術では、火の温度を変えることで、鉄すらも溶かす温度を作ることができるので火の玉として投擲するだけでもかなりの武器になります。風や土よりも攻撃的だと思ってもらって構いません。

 最後に水ですが、こちらに関しては生活魔法としては少し特殊で、治療に用いることも可能です。一節として人間の体の六割ほどが水でできていると言われておりますので、そのせいかもしれません。他にも、飲み水として使うこともできますし、薬草と調合するための原材料である魔力水と言われるものも出すことができます。戦闘魔法術としては、圧縮した水で相手を貫いたり、氷塊を相手にぶつけることもできます。魔法についてのざっくりとした解説に関しては以上です。今説明したのはただの一例ですので、適性があった場合はいろいろ試してみるとよいでしょう。ここまでで何か質問はありますか。」

「一先ずはありません。ありがとうございます。」

 とりあえず、この世界の魔法は僕の世界でいうところの科学の代用品として生活魔法術では使っているという認識でいいだろう。

「それは良かったです。後は、この国についてですね。この国は魔法国家リヌールと言われており、その名の通り魔法で発展してきた国です。この世界唯一の魔法学園も存在している国でもあり、歴史上の国同士の領土争いの場合も、魔法の物量で押し切ると言った先方がとられている程度には魔法に依存しております。周辺国は東に武術国家ポルトナント、南に技術国家ヨウドラル、北に海洋国家レジストラスが存在しております。ボルトナントは剣術や武術、ヨウドラルとレジストラスは貿易により発展してきました。そして東にはエグレスト樹海を挟んでかつてポレコルントと呼ばれた国があった場所。現在の魔族領が存在しています。」

 魔王に進行された国は意外と近くにあったらしい。

「そのエグレスト樹海というのは?」

「かつて地の神が住まいを構えていたと言われている地域ですね。その名残なのか強力な魔力が残っているようで、魔力酔いを引き起こしたり、変異種の魔物がいたりして切り抜けるのが困難な道になっています。普通は大回りをしてヨウドラルかレジストラスからこの国に来るのが一般的ですね。ですので、この国が魔王軍に侵略されるとするのなら先にその二国のどちらかから攻めてくることになるかとは思いますが、どちらも輸送経路の関係もありもともと友好国家でしたので我が国から魔法軍を派遣していますね。」

 勇者を呼ばなければいけない程だから切羽詰まっているのかと思えば、そんなこともないらしい。

「さて、この国周辺の基礎知識についてはこの当たりになりますね。ご夕食の頃にまた参りますのでお休みくださいませ。こちらの勝手な行いで振り回してしまいましたし、疲れたでしょう。」

 そう言って一礼してフルトさんは、部屋を出ていった。窓から外を見るともう日が沈みかけている。ベットに横になってみるといつの間にか意識が飛んでしまったのだった。

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