第2話:異世界カラトナリア

 あたりを見回すと、王様以外にも複数の人がいるようだった。いかにも高そうな服を身にまとっている、貴族のような人。甲冑をまとっている人たちは騎士団か何かだろうか。ローブを羽織っている集団は魔法使いだろう。

「いきなりこちらに来られて、どうやら事態を把握されていない様子。私の方から、かいつまんでご説明させていただきましょう。」

 そう言って王の左側に立っていた白い外套を着た、男が一歩前に出た。

「この世界の名はカラトナリア。勇者様が元居た世界とは異なる別の世界です。過去の文献を参考にしますに、勇者様の世界では魔法が存在しなったようですがこの世界は魔法で栄えた世界なのです。」

 ライトノベルなんかを多少嗜んでるものとしては、随分と聞きなれた言葉が羅列されたものだ。まぁ、百歩譲って異世界に召喚されたことは納得した。でも、ひとつ王様と言い、この人と言い・・・。

「なぜお二人は僕のことを勇者とお呼びになられるんですか?」

そういうと、みんな下を向いてしまった。申し訳ない。と思っているようだった。しばらく、沈黙が続いたのち、王様が口を開いた。

「今から20年前。魔王と呼ばれる一匹の魔族が現れた。千年以上前にも一度現れたことがあるらしいその存在は、人類と敵対することを宣言し魔族を束ね始めたのだ。

それから15年の月日がたったある日、ハルニベルと言う魔王の住処に一番近かった国が滅ぼされた。今では魔族領と呼ばれている。今までは、宣言だけで実害がなかったから無視して攻めてくる魔族だけを対応していた国々たちも魔王を倒さんと、人を集めて魔王軍と戦闘を始めた。」

「それが、どうして僕を、異世界から勇者を召喚することと関係があるんですか?軍を編成したのであれば、その人たちで倒すこともできるのでは?」

 僕の言葉に王様は首を横に振った。

「魔王は光魔法を使えるものにしか倒すことができん。しかし、この世界の人間には光魔法を使えるものは誰一人として存在しないのだ。だから、異世界から勇者を召喚するしかなかったのだ。」

「なるほど。」

 自分が呼び出されたことには合点がいった。

「それで?魔王を仮に倒したとして、僕は元の世界に帰ることはできるんですか?」

「うむ。それに関してなのだが・・・。」

 帰還できるか。という話になったとたん、王様は歯切れが悪くなった。

「千年前の文献には勇者召喚の儀式については書いておったが、帰還の方法も魔王を倒した後勇者がどうなったのかも、分からないのだ。」

 なんとも無責任な話だ。帰れないけど命を懸けて魔王を倒してくれ。と、そういう話らしい。

「何とでも罵ってくれてかまわない。だが、民衆のために。どうかこの世界を救ってほしい。」

 そう頭を下げる王様に、僕は何も言うことはできなくなったのだった。

 

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