第11話 勝手な憶測でものを語ることは良くない

 今日は待ちに待った土曜日。まつりと紫音のデート日だ。

 ちなみに先日風邪で死にかけていた瑠依はまつりが大学から帰る時にはピンピンだった。



 時刻はP.M.2:00


 まつりは公園にある噴水の前にもう10分近く待っていた。


「ごめんなさーい。せんぱいお待たせしました」


 トコトコと急いで走ってくる紫音にまつりは笑顔で「大丈夫だよ」と返す。


「それじゃあ、行きましょうか」


「それで羽衣はどこ行きたいの?」


「なんだと思います? 推理してみて下さい」


 そう言って紫音はまつりに向けて、くるくると服装を見せるようにまつりの前で体を回す。


「いつもより薄着な気がするし、何か運動系かな。羽衣、最近体型がどうとか言ってたしね」


「はい、デリカシー無さすぎ」


 紫音はまつりの方とは逆方向にぷいっと向きスタスタと早歩きする。


「ちょっとごめん羽衣。僕はずっと綺麗だと思うよ」


「ふふ。焦りすぎですよせんぱい。そういう女たらしみたいなとこ嫌いじゃないですよ」


 まつりは自分の失言に顔を赤くする。


「もー可愛いな」


「おい……やめろよ」


 紫音はつんつんとまつりのほっぺたをつつく。


「それでどこ行くんだよ?」


「映画館です!」


「映画か……それはいいな」


「せんぱいこの前観たい映画があるって言ってましたよね」


「覚えててくれたのか。来週見に行く予定だったんだけど嬉しいよ。行こう。今すぐ行こう」


「あはは。喜んでくれたら嬉しいですー」


「本当に【たこやきまん】は最高だからね」


 2人は映画トークで会話が弾み、あっという間にグランドモールへと着いた。


「結局ここに来るんだったらここ集合で良かったんじゃないか? 今週会ったし」


「雰囲気ですよ。雰囲気。ここだとデートの雰囲気あんま無いでしょ」


「まあ……えっ? デート?」


 まつりのそんな疑問を無視して、紫音は映画館がある4階へと歩く。


「じゃあ、チケット買いましょう」


「そうだな」


「じゃあ、私が買ってきますね」


「本当か? ありがとう」




「はいどうぞ。チケットです」


「ありがとう」


「あ、別にそんなお金なんて大丈夫ですよ。今日付き合ってくれるお礼です」


「いや、そういう訳には……」


「大丈夫ですよ。きっちり元は回収できるので……」


 2人は入口でスタッフさんにチケットを見せ、とうとう中へと入る。


「あれ? どうしてそっちに行くの? 【たこやきまん】はそっちじゃないよ】」


「ああ、せんぱいチケットみてください」


「え?……怨念村……」


 ……


「ホラー映画じゃないか!? ねえ、羽衣。僕はホラー映画観れないって言ったよね?」


「そうでしたっけ?」


「それに僕が観たい映画に連れて行ってくれるんじゃなかったのか?」


「あー。私確かにせんぱいが映画観にいきたいっていうのは知ってたからその話しましたけど、1回もその映画観に行くとは言ってませんよ」


 そして、紫音はまつりの方へと1歩1歩近づいていく。


「一緒に観ましょうね。せーんぱい」


「嫌だーーーー」





「もう暗くなってきたじゃん」


「こら。静かにしてください。手なら握ってあげますから」


 普通ならドキドキの展開。

 しかし、まつりにはそんな余裕はなくただ心臓が恐怖でバクバクしていた。

 それはまつりだけでなく、紫音もずっとドキドキが止まらなかった。



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