第4話 知らぬ間に数々の業を背負って生きる羽目になっている
ピンポーン。
昼の14:00に鳴り響くチャイムの音を露骨にまつりは無視していた。
どこかに出ていこうとも考えたが、流石にそれは良心の呵責に苛まれそうであったのでトンズラをこくことにした。
実際あまり変わらない。
ガチャ。
まつりの静かな抵抗も虚しく普通に鍵があいた。
「なんだ普通にいるじゃないの。ほら行くわよ。まつりくん」
「どうして。鍵を持ってるんですか?」
「大家さんに合鍵作らせて貰ったの」
「どうなってんだよ。ここのセキュリティ」
連れ出されたまつりは仕方なく、どこかへと向かう。
「それでどこへ行くんですか?」
「ショッピングモールに行くわ」
「どうやって行くつもりですか?」
「もちろんタクシーよ。それ以外あるの?」
「逆にタクシーをそんな用途で使ったことがないんですけど。お金はどうするんですか?」
「私のカードをまつりくんに渡すわ」
「いやいや、そんなの責任負えませんよ。しかも金ピカのやつじゃないですか」
「別にそんな大した額も入ってないもの。これからの同居分のお小遣いだと思えばいいわ」
「それで何円入ってるんですかここに?」
「前何に使ったか覚えてないけど別に100万しか入ってないわ」
まつりはいろいろな意味でこの人のことを知る度に怖く思えてきた。
「あのタクシーに乗りましょ」
「すいません。あそこのグランドモールまでお願いします」
ブカブカ制服中学生(容姿)が男子大学生を連れて、タクシーの運転手に行き先を伝えるというのはなかなかにシュールであった。
「げ?」
「どうしたのまつりお兄ちゃん」
瑠依の役に入りこむスピードはプロ並の速さであった。
「いや、大学の近くだから知ってるやつにあったら嫌だなって」
「そんな偶然ある訳ないでしょ。まつりお兄ちゃん」
「そんなにまつりお兄ちゃん連呼しなくていいんだぞー。わかってるから」
「お2人はごきょうだいですか?」
「そんなきょうだいだなんて」
さっきの意味不明爆弾発言をした前科が瑠依にはあるため、すぐにまつりが「いとこです」という言葉を発す。
「仲がよろしいんですね」
「そう見えると嬉しいんですけど……」
20分後……
「着きましたよ。ではお支払いをお願いします」
「カードでお願いします」
「わかりました」
運転手が番号を見ないよう、顔を背けたがまつりは普通にカードの番号を知らないことに気づいた。
そのため小声で瑠依から番号を聞き出すことにする。
「カードの番号分からないんですけど」
「あなたがいつもしていることよ」
最低な人から繰り出される最低なヒント。
その言葉の意味を瞬時に理解したまつりは思うがままに数字を押す。
……正解。
「ありがとうございました」
まつりたちはタクシーを降り、ショッピングモールの中へと向かう。
「よくわかったわね。流石だわ」
「……僕がどんどん人としての尊厳を失っていっているような気がして嫌ですよ」
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