第20話 『ラバナラ』
乗り合い馬車での騒ぎに、魔獣を討伐した冒険者たちはすぐに気づき、まずはセダンとチコが乗り込んでいった。
すぐにアレックスが続いて中の様子に目を瞠る。
「何があった?」
目の前の状況はすぐには信じられない光景が広がっていた。
あの小柄でか弱いフェリアの足の下にあるのは大の男の頭だ。
見た目はそれほど力を入れているようには見えないが、耳の良いアレックスには骨が軋む音が聞こえてくる。
「フェリアちゃんの荷物を狙って、棍棒で殴りかかったらしい」
チコが硬い表情のまま、怒りを抑えた声で説明する。
「なんてことだ!
フェリアちゃん、怪我は?!」
「村を出る前に村長さまに【防御】を付与されているから大丈夫。
安眠妨害はされたけどね……
あんたも痛い目にあってみる?」
手加減する自信はないけど、と続けると愚かな男は目に見えて震え出した。
「ラバナラに着いたら憲兵に突き出してやる!
強盗は罪が重いぞ。覚悟するんだな」
セダンが手慣れた仕草で、男に縄を打っている。
拘束が終わって、ようやくオフェーリアはその場から離れた。
「こんなことはよくあるの?」
「まさか。
まったくないとは言えないが滅多に聞かない事だ。
しかし……魔導具は、やっぱり狙われるよな」
「物騒な……
第一、私の場合アイテムバッグには使用者固定の付与がされていて、他人は使えないようになっているのに」
高価なアイテムバッグや中に入っているだろう結界石などの魔導具を狙ったようだが、すべて無駄だったわけだ。
ラバナラの町に入るための門で事情を話し、元乗客の強盗犯を憲兵に引き渡したあと、オフェーリアは商業ギルドに向かった。
その後をアレックスたち一行が続く。
門兵からの情報によると、ここのギルドには鑑定できる人物がいるそうだ。
「こんにちは〜」
恐る恐る扉を開けて入ってみると、先日登録したギルドと違って閑散としている。
「あれ?お休みですか〜」
「違いますよ。
ラバナラの商業ギルドにようこそ。
今日はどのような御用でしょうか?」
濃紺色の髪に茶色の瞳、そして小麦色の肌をした熟女が現れた。
その女性は値踏みするようにオフェーリアを見つめている。
「こちらで【鑑定】していただけると聞いてお邪魔しました。
魔導具を査定していただきたいのです」
「承りました。
では、こちらにどうぞ」
入り口の扉に鍵をかけて、女性はオフェーリアをカウンターの奥にある個室に招き入れた。
ゾロゾロとアレックスたちも移動する。
「では、どのようなものを持ち込まれたのでしょうか?」
「これを」
もう、目の前の鑑定士に取り繕うことはなく、ウエストポーチから結界石を取り出し、机の上に置いた。
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