第21話 『結界石』
「私が作った、結界を張るための魔導具です。
中に魔石を入れ、それをエネルギーとして発動します。
魔石の色が変わる前に交換するのは、他の魔導具と一緒です」
「拝見します」
この女性が鑑定士でもあったようだ。
もうほとんど見た目はヒト族だが、彼女には魔法族の血が流れているのだろう。
ただその血もあまり濃いものではないようだ。
「見事な魔導具ですね。
結界は完璧に作動しています。
この魔導具を当方に卸していただけるのですか?」
「そうですね……
いくつか卸す事が出来ると思います。
実は今日はこの結界石がいくらで売れば良いか、査定してもらいに来たのです」
この商業ギルドの受付兼鑑定士のジルは、手のひらに収まるほどの石を手に取り片眼鏡を付けてよく観察した。
これは画期的商品だがどれほどの数があるのか少女に聞いてみた。
「そこそこ、と言っておきます。
後ろの冒険者の皆さんと乗り合い馬車の御者さんに販売の約束をしたのです。
でもいくらで売れば良いか分からなくて」
ジルはチラリと冒険者たちを見ると一枚の紙を取り出した。
そこに魔法族独特の文字で文章を書いていく。
『あなたは純血の魔法族ですね?
このような市井に下りてこられて大丈夫なのですか?』
ジルからペンが渡され、今度はオフェーリアが文字を紡いだ。
『はい、もう義務は果たしましたので解放されました』
「わかりました。では商談をいたしましょう」
またジルは今度は数字を書いていった。
「これはすべて結界石1個の値段です」
ジルは親切にギルドや店舗に卸す場合の売値、金貨8枚と冒険者などに直接売る場合の売値、金貨12枚以上と教えてくれた。
「どうもありがとうございます。
……とりあえず20個、こちらでお願いできますか?」
ジルに花が咲いたような笑顔が浮かんだ。とても嬉しそうだ。
「冒険者さんたちもここで取り引きなさいな。
ついでに御者の方も呼んできたらどう?」
ジルはもの慣れないオフェーリアのために販売に立ち会うことにした。
オフェーリアはその見かけから舐められることが多くなるだろうがため、これからも出来るだけギルドを通すか、もしくはギルドで場所を借りて取り引きすることを勧めた。
「と、言うことで結界石は1個、金貨12枚。基本4個で使うから金貨48枚だけど……結構なお値段になるけど大丈夫?」
オフェーリアは少し心配そうだ。
だが中級以上の冒険者パーティーは、大概そのくらいの金額は自由になる。
何しろ、オフェーリアは知らないが、冒険者の持つ武器は金貨数十枚なんてザラなのだ。
「いや、問題ない。
貴重なものをありがとう。
実はもっとふっかけられるかと思っていたんだ」
パーティーの金庫番だろうチコが袋から金貨を取り出し、10枚の山4つとあと8枚の金貨を並べた。
それをジルが数えてオフェーリアに渡す。
結界石はアレックスに渡された。
「この結界石には中級の魔石を使用しています。
魔石の色が変わりかけたら忘れずに交換して下さい。
使用中に魔素が切れても結界の効果は継続しますが、結界を解いた瞬間結界石が割れますので」
アレックスは顔色を青くして何度も頷いていた。
そしてその後、御者が駆けつけてきて結界石を10個買うと同じ説明を受け、ホクホク顔で商業ギルドを後にした。
そしてオフェーリアは、この時点で金貨168枚を手に入れていた。
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