第13話 『アイテムバッグの真実』

 昨夜、ナタリアが喰いついてきたアイテムバッグを卸す為にギルドに向かうオフェーリアを、建物の影から窺う存在があった。

 自身に対しての周りの視線に敏感なオフェーリアは、もちろん気づいていて、内心ほくそ笑んでいる。

 実はオフェーリア、見かけによらず性格は苛烈で容赦ない。

 今彼女を窺っている連中も何もなければ良いが、そうでなければ……どうなることか。


 とりあえずギルドに行って金子を得てから諸々の買い物を済ませて、明朝の出立に向けて早々に休むつもりでいる。

 昨夜は……あの後ナタリアが飲み物をエールに切り替えて、酷い目にあった。

 オフェーリアはアルコール類を嗜まないので、もう酔っ払いの相手はごめんである。



 ギルドのホールを、昨日と同じようにボブゴブのところに行こうと階段に向かっていたら、カウンターの中のナタリアに大声で名を呼ばれた。


「フェリア!」


「何ですか?酔っ払いさん」


 ナタリアを見る、オフェーリアの目は冷たい光を宿していた。


「うっ、私またやっちゃったのね?

 迷惑かけた?ごめんなさい」


 謝ってこられてもオフェーリアにとってはもう、どうでもよい。

 所詮、人生がたまたま交差しただけだ。


「約束のアイテムバッグを売りにきただけですから。

 これも階上のボブゴブさんのところに持ち込めばいいのですね?」


「ちょっと待って!それはこちらで」


「買取品の見極めは俺の仕事だ。

 ナタリア、おまえが何を考えているのか知らないが、規則は守らんとな。

 お嬢ちゃん、行こう」


 何か色々、部外者が顔を突っ込まない方がよいことがありそうだ。

 オフェーリアは素直に頷いてボブゴブを追って階段を上がっていった。


「あいつはちょっとな。

 たまにああして中抜きしようとする。

 ……罰則があるわけじゃないが、決して褒められたことじゃあ、ない」


 ボブゴブに勧められるまま、昨日と同じように店内に入ったオフェーリアは、作業台の上に容量拡張の付与魔法がかけられたリュックを出した。


「容量は多分この作業台の3倍くらい?

 村長を務めるエンシェント・エルフ(魔法族)の方から餞別としていただいたんです。

 私たちは人族の金子を持ってませんから」


 ただのヒトであるボブゴブには詳しく鑑定する能力はない。

 なのでオフェーリアにことわってからリュックに色々なものを入れ始めた。

 まずは長槍。これは全長3m近くあって高さを測ることが出来る。

 あとは水瓶をいくつか入れて重さ軽減がどうか確かめて、オフェーリアに笑顔を向けた。


「これはいいアイテムバッグだ。

 重量に関してはまったく感じられない。

 これは凄いぞ」


 オフェーリアは知らなかったが、アイテムバッグの何割かは“重量軽減”はしても“重量消失”は滅多にない。


「でも“時間停止”ではないの」


「そんなものは高価すぎてオークション行きだ。

 これでも相当貴重だぜ?」


 オフェーリアの知らないことは多い。

 結局リュックは金貨80枚で引き取られたが、最終的な売値がいくらになるのか少し怖かった。

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