第14話 『憧れ?の乗り合い馬車』
リュックの買取が終わったので、次はオフェーリアが買い物する方になった。
「このあたりの地域に出没する魔獣の出現状況や特徴などを纏めた本はないのかしら?」
「ああ、それなら本じゃなくて……
ほら」
そう言って渡されたのはそこそこの厚みのある冊子だ。
「たまに更新があるのでこういう冊子にしてあるんだ」
なるほどと納得してこれを買う事にする。
そしてボブゴブに別れを告げたオフェーリアはギルドを出て市場に向かった。
だがここでオフェーリアを追ってくる集団に気づいたので、予定を変更して宿に戻り、明朝を待つ事にする。
食糧などの物資はそれなりに持っているので、この町で補給しなくても問題ないだろう。
「まあ、話には聞いていたけど、わかりやすい人たちよね。
しつこいのは閉口ものだけど……」
そして翌朝。
まだ夜が明けきらない早朝に、女将から弁当の包みを渡され、ペコリと礼をしたオフェーリアはまずは中央門に向かって歩き出した。
こんな時間だというのに、もうそれなりの人々が通りを歩いている。
その流れに乗ってオフェーリアも門を目指すとちょうど乗り合い馬車が停まっていた。
「すみません。
この馬車は何処行きですか?」
「ん?何だい、お嬢ちゃん。
この馬車は次の町まで3日かけて行く中距離乗り合い馬車だよ」
オフェーリアは頭の中で地図を思い描いてみた。
「隣町とはダンテとラバナラのどちらですか?」
「ラバナラだよ。
運賃は金貨1枚と銀貨5枚だが、お嬢ちゃんなら荷物も少なそうだし、金貨1枚と銀貨3枚でいいよ」
ちょうどそちらの方向に向かうつもりなので、これ幸いと乗車する事にする。
「ではお願いします」
乗り合い馬車も初めてなので楽しみだ。
「お嬢ちゃん、お名前は?
俺は御者のポール、あっちで荷物積みをしてるのが助手のサッカラだ」
「私はフェリアです。
急でしたが、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく。
あと少しで出発なので中で座って待ってて下さい」
席は自由だと言う。
オフェーリアは進行方向左側の一番前に座った。
奥にはもう何人か座っていて、軽く会釈しておく。
中央門から出るときは兵士が2人乗り込んできて身分証を確認していった。
ここに来た時に親切にしてくれた兵士はいなかったが、オフェーリアの事を聞いていたのだろう。
まるで子供にするように頭を撫でて馬車を降りていった。
オフェーリアは20歳。
魔法族としてはほぼ成人に近い年頃だが、人族としては子供にしか見えないのだろう。
こうしてオフェーリアは、初めての町を後にした。
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