第3話 『宿題』
老婆と別れたオフェーリアは、遠方からこの都を訪れたものが泊まる宿泊施設に案内された。
本来彼女の故郷はこの都なのだが、サクラメント家に嫁ぐことによってそれまでの家は引き払っていた。
なので今回は気楽なホテル暮らしを満喫しようとしていたのだが……甘かった。
早々に押し掛けてきたのは幼い頃から教えを受けていた教官たちである。
彼らはオフェーリアの身に起きたことに憤慨して憤ってくれた。
オフェーリアは自身が感じていた以上に堪えていたようだ。
思わず涙ぐむこともあったのだが、目の前にあるものを見て、涙は引っ込んだ。
「なんでしょうか、これは?」
ソファーに座るオフェーリアの前にあるローテーブルの上に、目線の高さまで本や冊子が積まれている。
「あちらに向かうまでここで学んでいたものの続きですよ。
まずは今までの復習と課題をいくつか出します。
期限は決めませんが、忘れずに行って下さいね」
笑顔でそう言う彼女はオフェーリアのむつきを替えたこともある、頭の上がらない人物だ。
「それから出発前に必ず学問所に寄りなさい。
渡すものがあります」
「儂のところもな!」
彼もオフェーリアの教官で、おもに魔導具の作成を担当している。
「わかりました……」
と、言うやり取りのあと半年ぶりの魔法族の都を楽しんで、学問所を訪ねたオフェーリアはびっくりするような贈り物の数々を手に入れた。
そしてそれらをストレージに収納すると、最後に家を受け取りに行った。
「家に置く家具はどうするんじゃ?」
「あー、そうですね。
侯爵家から持ってきた家具もあるんですが……ウッドハウスには合わないかもしれないです」
「ではこれらも持って行け。
……故郷の職人が作った家具じゃ。
小妖精の木を使ったベッドとチェスト、ソファーとダイニングテーブル、椅子が2脚。
あとは自分で揃えるんじゃな」
そうなると布のファブリックも故郷のもので揃えたくなる。
オフェーリアは予定していた出発を1日ずらし、明後日の朝一に改めた。
オフェーリアが老婆に依頼した魔導具であるウッドハウスは、25平米(六畳間×2とプラスアルファ)ほどの大きさの平屋建て。
これは本当に見た目だけで、地下室だけでなく作業部屋の奥にあるドアはこの後、別の場所に繋げることができるものだ。
あとの機能は後々付与できるようになっている。
ホテルのレストランで食事を摂ったオフェーリアは人気のない平原に転移した。
そう、ここでウッドハウスを出して生活用品を設置していくつもりだ。
まずは寝室から……。
明日の夜にはこの家で眠ることになるのだろうから。
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