第2話 2年後
近所にカブトムシ売りのおじさんが来ました。
今でこそ、こんな怪しい露天商は法律が変わったのか、祭りの縁日でしか見かけませんが、当時はたまに小学校の校門や、みんなが遊ぶ公園にやって来たものです。
夏休みには入っていたと思います。
僕はおじさんに、カブトムシは何処で捕ってくるのか質問しました。
おじさんが答えてくれた場所は、あの幽霊が出る林でした。
前回の通り、僕は友達とカブトムシやクワガタを捕りに行っていた林なので、そんなものかと思い、翌朝早起きしてカブトムシを捕りに行きました。
今思えば、それこそ果物がたくさん入っていたような大きなカゴにカブトムシが大量に詰まっていたわけですから、その林で捕れる量ではありません。
山に行ったか、養殖か、どちらかだったんでしょう。
子供の質問だから、適当に話を合わせただけだったんでしょう。
けど、こっちはカブトムシが欲しいだけの小学3年生。
そんな事なんか考えもせずに、虫に刺されないように長袖長ズボンで帽子をかぶって行った事を覚えています。
その時も人通りはありませんでした。
まぁ、朝早いから、会社に行く人もまだ家にいるんだろうって思っていました。
因みに時間は朝の6時くらい。
子供が1人で早起き出来る時間なんて、たかが知れてます。
今思えば、朝6時だったら、普通に誰か歩いているよなぁと思いますが。
残念ながら(まぁおじさんもいい加減に言っただけでしょうし)、カブトムシは1匹もいません。
諦めて帰ろうとすると、誰かがコショコショ話している事に気がつきました。
林と言ってもそんなに深いわけでなく、木々の合間から家が見えます。
直線距離ならば100メートルくらいでしょう。
ここからでも、あれは台所の窓だとハッキリわかります。
うちのお母さんは、ラジオを掛けながら家事をする人です(でした)。
多分、あの家のラジオだろうと思いました。
けど、すぐ気がつきました。
その距離で聞こえる音量じゃない。
それだけ離れた外にラジオが聞こえる音量ってなんなの。
まだ朝だよ。
近所迷惑じゃん。
コショコショ。
コショコショ。
わかりました。
このコショコショは、林の中から、僕のすぐそばから聞こえています。
慌てて僕は逃げ帰りました。
大人になってから、色々調べて見ました。
その林では、特に人死にが出た様な事件はありませんでした。
勿論、ふわふわ浮かぶ女の人は死んでいません。
いわゆる因縁話は一切無い所でした。
(明治以降に新規開拓された土地なので、江戸時代に何かあったかは、わかりませんでしたが)
脳医学の見地からも調べて見ました。
「幽霊が出る林」と強烈なイメージ漬けがなされていれば、脳が誤認識する事もあり得ると、ものの本には書いてありました。
ただし、3年生の体験の時は、既に「幽霊が出る」噂は廃れており、僕自身思い出したのは、それから数十年後の事です。
因縁話があるのなら、逆に納得できるんですけどねぇ。
また、この時だけの体験なら子供の頃の妄想で片付けられるんですが。
その後もいくつか、経験してるんですよ。
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